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53.謁見

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陛下との謁見は謁見室ではなかった。
学校長とユリアスと王宮へ向かうと、案内されたのは後宮の応接室だった。
普通の貴族では入れない場所だったために、緊張感は高まっていた。


「あぁ、礼の姿勢をとらなくていい。
 顔を上げて。」

陛下が部屋に入ってきたと思い、頭を下げて待っていたら、
すぐに上げるように言われる。
初めて陛下とお会いするのに、
そんな礼儀をかくような真似をしていいのか迷っていると、
学校長からも上げるように言われた。

「ロージー、大丈夫だよ。顔を上げて。」

「…はい。」

「ロージー・ベルファイン。今はロージー・エバーリングだったな。
 …まず、王子たちと婚約させようとは思って無いので安心しなさい。」

「はい。」

良かった。陛下がそう断言するというのなら、本当に無いのだろう。

「フレッドの王位継承権のはく奪は王命を騙ったということもあるが、
 実際にはマリージュがルーニアの王妃になるからだ。
 マリージュにあのように婚約破棄を言い渡した王子が国王になるなら、
 同盟を破棄すると言われてな。」


あぁ、なるほど。
だから王妃様や側近候補たちから私への嫌がらせが無かったんだ。
実際には私の証言は関係なかったのだから。
マリージュ様を大事にされるルーニア国王なら、
フレッド様が国王になったら間違いなく同盟を破棄するだろう。
その時に困るのはルーニア国ではなく、アステカニア王国のほうだ。
ルーニア国からの麦の輸入が止まってしまったら、国民の暴動が起きるだろう。

「…それと、マイケルの王位継承権もはく奪することになった。」

「え?」

「あれはロージーを妃にする気で、ルーニア国に行ったのが分かったら、
 ルーニア国に書簡を送っていた。わしに内緒でな。
 勝手に書簡を送りつけただけでなく、
 ルーニアからロージーをすぐに帰す気は無いと返事が来たら、
 騎士団を動かそうとしおった。」

え?つまり…私を帰国させるために軍を動かしたってことですよね?
それってルーニア国に実際に軍を送っていたら、戦争になってたかもしれない?
そこまで考えたら血の気が引いて、ふらっと倒れそうになった。
後ろからユリアスに腕を支えられ、なんとか倒れずにすんだ。

「あぁ、倒れそうになる気持ちはわかる。
 無理しないでユリアスに支えてもらっておけ。

 …ユリアスもいろいろと苦労かけたな。
 認識阻害をかけなくなったようだが、
 ルーニア国に行って心境の変化でもあったのか?」

「…そうですね。
 かけていたのに気が付いていなかったのですが、
 もうかける必要が無いと思ってかけていません。」

「…気が付いていなかったのか。
 そうか…わしのせいかもしれんな。
 騎士団に入った時点で認識阻害をかけているのがわかったんだが、
 光属性では目立ち過ぎてまずいだろうと思って、許可を出していたんだ。
 ユリアスだけは王宮内でも魔術の使用を許可すると。
 あの時に話しておけばよかったな。」

「いえ、特に問題ありません。」

「そうか…それで、今日呼び出したのは、二人に頼みがあるからだ。
 入ってきなさい。リリア。」

「はい。」
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