あぁ、もう!婚約破棄された騎士がそばにいるからって、聖女にしないでください!

gacchi(がっち)

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54.リリア

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「そうか…それで、今日呼び出したのは、二人に頼みがあるからだ。
 入ってきなさい。リリア。」

「はい。」

陛下から呼ばれて部屋に入ってきた少女を見て驚いた。
金色の髪、水色の瞳の5、6歳くらいの可愛らしい子だった。
大きな目が少し落ち着かない感じでこちらを見てくる。

「この子はリリア。第一王女だ。」

「「え?」」

「ロージー、ユリアス、驚くのは当然だ。
 第一王女は公表されていない。
 フレッドが国王になるのがわかっていたし、何かあってもマイケルがいた。
 無理に王女として公表しなくてもいいだろうと判断していたんだ。

 リリアは…王妃でも側妃でもなく、女官の子だ。
 子爵家出身の女官で、側妃にするのは難しかった。
 その上、リリアを産んですぐに亡くなってしまった。

 陛下はリリアが王女だと知っている公爵家に嫁がせるつもりだった。
 マリージュの弟に。光属性だから身分は関係ない、ということにしてな。」

「だが、フレッドもマイケルも国王にするわけにはいかなくなった。
 母親の身分が…などと言ってる場合ではない。
 もうリリアしかいないのだ。
 婚約者のケンバウム公爵家のリカルドを王配にすれば、マリージュとの仲もいい。
 ルーニア国ともめるようなこともないだろう。

 …それで、頼みというのは、リリアの家庭教師を頼めないだろうか。
 光属性と水属性の指導と、できれば淑女教育も頼みたい。」

「私がですか?」

「ああ。本来なら王子と王女の教育は母親の生家が手配するんだが、
 リリアを今までどおりに育てるわけにはいかない。
 女王にするのだからな。

 ジョセフからの話だと、ロージーは魔術も令嬢としての所作も完璧だと。
 それにリリアをまかせるからには、信頼できるものじゃないと困る。
 公表してなかった王女だからな…下手な貴族だと侮られかねない。
 王弟の養女となったからには、身分としても相応しいだろう。
 どうだ?頼めるだろうか?」

「わたくしで出来ることでしたら。」

「ああ、頼んだ。
 その代わりと言ったらなんだが、政略結婚の話は全部こちらで潰してやろう。
 結婚したくないならそのままジョセフの後を継いで学校長になればいいし、
 結婚したい男ができたなら、後押ししてやろう。」

「ありがとうございます!」

良かった!これで変な貴族から求婚されることがない!
安心して生活できる。

「ユリアスは、騎士団で魔術を教えてくれないだろうか。
 ルーニア国での活躍は聞いた。
 アステカニア王国でも治癒を使える者は必要だし、
 何よりも身体強化や風を使っての速度強化は騎士として学ぶべきだろう。」

「…アステカニア王国騎士団での魔術使用は禁じられているのでは?」

「頭の固い連中がいるからな。上の方に。
 それも安心していい。
 マイケルが勝手に騎士団を動かした時に、
 わしの命令なしに動こうとした騎士団長や隊長たちは責任取って引退させた。
 …ハンドウイル家の当主もな。
 もう魔術禁止なんてことは言わせない。」


「…俺はロージーの護衛です。
 離れるようなことはできません。」

「それも大丈夫だ。ロージーが王宮へ来てリリアに指導している時間、
 ユリアスには騎士団で指導してもらいたい。
 リリアに淑女教育している時間は、いくらユリアスでも部屋の中には入れない。
 その間は近衛騎士たちが部屋の外で守っているし、危険はないはずだ。
 それなら、どうだ?」

「わかりました。その条件でならお引き受けします。」

「うんうん、頼んだ。」

こうして私とユリアスは週に何度か王宮へと来ることになった。
魔術師学校での授業の無い時間を選んで、リリア様の淑女教育を始めることになる。
まだ幼いリリア様が魔術を使うのは難しい。
魔術の指導は淑女教育を終えた後になるだろう。




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