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62.それから
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「またずいぶんと長い手紙だな。マリージュ様からだろう?」
「うん、そう。ジュリアン様のことで相談がしたいって。」
3年前に王妃となったマリージュ様は、
去年第二王子となるジュリアン様を出産した。
光り輝く髪に、茶色の瞳。
光属性と土属性を持つ王子にルーニア国民は大いに喜んだらしい。
光属性を持つ弟にミルフェ様が荒れるのではと心配したが、そんなことは無く。
可愛い弟の面倒を見るのを楽しんでいる。
第一王子のベージェ王子はあれからおとなしい性格に変わったらしく、
第二王子が生まれたことを機に王位継承権を放棄したそうだ。
陛下も健康で、王妃であるマリージュ様はまだ若い。
ジュリアン王子が成人するまで待つことに問題はない。
誰もが新しい王子の誕生に喜んではいたのだが、
問題は…ルーニア国に光属性の指導ができる者が誰もいなかった。
今はまだいいけれど、将来的に困ってしまうかもしれないと手紙に書いてあった。
どうやらユリアスのように魔力量が多いタイプだったようだ。
魔力をため過ぎないように魔術を使わせた方が良いのだが、
土属性だけを育ててしまうのも、後々困るかもしれないと悩んでいた。
「そうか…それは困るだろうな。
俺みたいに無意識に発散することも難しいだろうし…。」
「そのうち、リリア様の家庭教師が終わったら来てくれないかって。
数か月滞在して指導してくれれば、あとは自分たちで何とかするって。」
「…リリア様が離さないと思うけどね~。」
「そうなのよね…。」
お母様を亡くされているリリア様は、
6歳から家庭教師となってそばにいる私に懐いてくれていた。
まるで本当の母親のように慕ってくれているため、
他国に数か月行くなんて言ったら泣かれてしまうかもしれない。
もうすぐ10歳のお誕生日を迎え、正式に次期国王としてのお披露目となる。
淑女教育も素晴らしく、光属性も水属性もしっかりと使いこなせている。
どこに出しても誇れるような女王候補となったと思っている。
…人見知りと私への依存さえなければ、だけど。
幸いユリアスと婚約者のリカルド様には心を許しているし、
そんな風に親しい友人ができればと思うのだが、
同性の同じ年頃の友人となると難しいようだった。
そういえばマリージュ様も私が初めてのお友達って言ってた。
高位貴族の令嬢はそういうものなのかもしれない。
「義父上に相談してみたらどうだろう。」
「お義父様に?」
「ほら。
そのうちマリージュ様のとこに遊びに行ってみようかなって言ってたし。
義父上なら、ジュリアン王子に指導もできるんじゃないか?」
「それは…確かに。」
「マリージュの所に?ジュリアン王子の指導?
ああ、なるほどね。ルーニアに光属性の指導者なんているわけないな~。
そうだね…短期間ならいいかな。
一度じゃ無理だろうから、
大きくなるまで何度か指導に行かなきゃいけなくなるだろう。
今回は俺が行こうか。」
「いいんですか?お義父様。
ありがとうございます。」
「うんうん、いいよ。
…その身体じゃ旅させるわけにはいかないからね。」
「え?」「ええ?」
「なんだ…気が付いてなかったのか。
ロージー、お腹に子が宿っているよ。
まだ初期だから、無理しないように気を付けるんだよ。」
私のお腹に?子がいるってこと?
気が付いたらユリアスに抱き上げられていて、慌ててお義父様に止められていた。
「まったく!妊婦に無茶するんじゃない!」
「…すみません。うれしくて…つい。」
「びっくりしたわ。…そうね、ユリアス。しばらくは抱き上げるの禁止ね?」
「…わかった。」
この数か月後、金色の髪と琥珀色の瞳を持つ可愛い女の子が産まれ、
フローラと名付けられた。
ルーニア国のジュリアン王子の婚約者に望まれたり、
フローラは妹だと言い張ったリリア様がジュリアン王子を目の敵にしたりして、
二国を巻き込んだ騒動になるのだが、
光属性の子を守ると決めているロージーとユリアス、
祖父となって爺馬鹿になったジョセフによって、
無理な婚約をさせられることなくすくすくと育ち、
学園で出会った侯爵家令息と恋仲になるのは、
もう少し後のこと。
おしまい
「うん、そう。ジュリアン様のことで相談がしたいって。」
3年前に王妃となったマリージュ様は、
去年第二王子となるジュリアン様を出産した。
光り輝く髪に、茶色の瞳。
光属性と土属性を持つ王子にルーニア国民は大いに喜んだらしい。
光属性を持つ弟にミルフェ様が荒れるのではと心配したが、そんなことは無く。
可愛い弟の面倒を見るのを楽しんでいる。
第一王子のベージェ王子はあれからおとなしい性格に変わったらしく、
第二王子が生まれたことを機に王位継承権を放棄したそうだ。
陛下も健康で、王妃であるマリージュ様はまだ若い。
ジュリアン王子が成人するまで待つことに問題はない。
誰もが新しい王子の誕生に喜んではいたのだが、
問題は…ルーニア国に光属性の指導ができる者が誰もいなかった。
今はまだいいけれど、将来的に困ってしまうかもしれないと手紙に書いてあった。
どうやらユリアスのように魔力量が多いタイプだったようだ。
魔力をため過ぎないように魔術を使わせた方が良いのだが、
土属性だけを育ててしまうのも、後々困るかもしれないと悩んでいた。
「そうか…それは困るだろうな。
俺みたいに無意識に発散することも難しいだろうし…。」
「そのうち、リリア様の家庭教師が終わったら来てくれないかって。
数か月滞在して指導してくれれば、あとは自分たちで何とかするって。」
「…リリア様が離さないと思うけどね~。」
「そうなのよね…。」
お母様を亡くされているリリア様は、
6歳から家庭教師となってそばにいる私に懐いてくれていた。
まるで本当の母親のように慕ってくれているため、
他国に数か月行くなんて言ったら泣かれてしまうかもしれない。
もうすぐ10歳のお誕生日を迎え、正式に次期国王としてのお披露目となる。
淑女教育も素晴らしく、光属性も水属性もしっかりと使いこなせている。
どこに出しても誇れるような女王候補となったと思っている。
…人見知りと私への依存さえなければ、だけど。
幸いユリアスと婚約者のリカルド様には心を許しているし、
そんな風に親しい友人ができればと思うのだが、
同性の同じ年頃の友人となると難しいようだった。
そういえばマリージュ様も私が初めてのお友達って言ってた。
高位貴族の令嬢はそういうものなのかもしれない。
「義父上に相談してみたらどうだろう。」
「お義父様に?」
「ほら。
そのうちマリージュ様のとこに遊びに行ってみようかなって言ってたし。
義父上なら、ジュリアン王子に指導もできるんじゃないか?」
「それは…確かに。」
「マリージュの所に?ジュリアン王子の指導?
ああ、なるほどね。ルーニアに光属性の指導者なんているわけないな~。
そうだね…短期間ならいいかな。
一度じゃ無理だろうから、
大きくなるまで何度か指導に行かなきゃいけなくなるだろう。
今回は俺が行こうか。」
「いいんですか?お義父様。
ありがとうございます。」
「うんうん、いいよ。
…その身体じゃ旅させるわけにはいかないからね。」
「え?」「ええ?」
「なんだ…気が付いてなかったのか。
ロージー、お腹に子が宿っているよ。
まだ初期だから、無理しないように気を付けるんだよ。」
私のお腹に?子がいるってこと?
気が付いたらユリアスに抱き上げられていて、慌ててお義父様に止められていた。
「まったく!妊婦に無茶するんじゃない!」
「…すみません。うれしくて…つい。」
「びっくりしたわ。…そうね、ユリアス。しばらくは抱き上げるの禁止ね?」
「…わかった。」
この数か月後、金色の髪と琥珀色の瞳を持つ可愛い女の子が産まれ、
フローラと名付けられた。
ルーニア国のジュリアン王子の婚約者に望まれたり、
フローラは妹だと言い張ったリリア様がジュリアン王子を目の敵にしたりして、
二国を巻き込んだ騒動になるのだが、
光属性の子を守ると決めているロージーとユリアス、
祖父となって爺馬鹿になったジョセフによって、
無理な婚約をさせられることなくすくすくと育ち、
学園で出会った侯爵家令息と恋仲になるのは、
もう少し後のこと。
おしまい
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