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24.疑問
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「ヴァネッサ、お前は貴族の血筋ではない。本当に平民なんだ。
貴族相手に対等に口を利くなんて、処分されてもおかしくないことだ。
死にたいのか?」
「……そんな。だって、知らなかったから……」
「知らなかった、そんな言い訳で許されると思うのか?
平民の命が軽いことくらい、わかっているだろう」
「……」
大声で話しているわけではないのに、
静かに事実を突きつけるようなケルトにヴァネッサは動揺し始めた。
カトリーヌ様や私たちにどれだけ無礼なことをしてきたか、
ようやく理解できたのかもしれない。
「今までは自分はただの平民ではない、
貴族である私の孫だから特別に許されるとでも思っていたんだろう。
今後は俺の孫ではないと公表する。
これまでのように特別扱いされることはないと思え」
「……急にそんなことを言うなんてひどい。
私のことを可愛がってくれていたじゃない。
今までずっと孫だと思って育ててきたんでしょう?」
「お前が少しも反省していないからだろう。
どれだけシルヴァン様に迷惑をかけたと思っているんだ」
「……もういい!おじいちゃんなんて嫌い!」
「「あ!」」
ヴァネッサはレンとキールの手を振りほどいて部屋から出て行った。
「シルヴァン様、追いかけますか?」
「いやいい。話はしたし、放っておけ。
だが、ケルト、あれは反省していないだろうな」
「本当に申し訳ございません」
「お前の孫ではないと公表してしまえば、
周りも甘いことは言わなくなる。
今度何かあれば本当に処分しなければいけなくなるぞ」
「ええ、わかっております。
急いで遠縁の家に引き取らせます」
「養女に出すのか」
「はい。もともとそういう話が出ていたんです。
これ以上は私ではまともに育てられません。
ちょうどいい機会でした」
あの事件の時に三歳だったのなら、今は十三歳。
私よりも少し背が高いから同じくらいの年かと思ったけれど、
話をしてみるとまだ幼い感じがした。
もう十三歳なら平民と貴族の差くらいは理解しているはず。
自分が貴族の血を引いていると思っていたからか、
平民だと言われても納得できないのかもしれない。
引き取られる先は平民の家だと思うが、
そこで馴染んでやっていけるのかどうか心配になる。
それにしても……いろいろと疑問が残った。
ヴァネッサは私が金属を糸にしているのを見て驚いていた。
パジェス侯爵家の者しかできないのに、と。
もしかして家族の証である魔力の糸があるから、できるということ?
それに十年前の事件の罪悪感で婚約したという話。
シル兄様が言ったわけではないようだけど、
周りの人間はそれが私と婚約した理由だと思っている?
カトリーヌ様の見合いを断るまでの仮の婚約だと思っていたけれど、
ずっと部屋は同じままだし、シル兄様は私を甘やかそうとしてくる。
この婚約はいつまで続くのか聞いてもはぐらされていた。
そろそろシル兄様ときちんと話さなければいけない。
婚約者でなくなるのなら、パジェス侯爵領で働く場所を見つけるか、
他の領地に移動しなければならなくなる。
「アンリ?大丈夫か?」
「え?ええ、大丈夫よ」
「疲れただろう。屋敷に戻ろうか」
ヴァネッサと話していたせいで、もう夕方近くになっていた。
見学を終了し、屋敷へと戻る。
私が黙っていたせいか、馬車の中の雰囲気は良くなかった。
それでも、屋敷に戻ったらシル兄様と話をしようと思い、
ずっとどうやって話を切り出そうかと悩んでいた。
このままうやむやにすることはできそうになかった。
馬車が屋敷に着くと、またシル兄様に抱き上げて降ろされる。
そのまま地面に降ろしてくれればいいのに、
なぜか抱き上げたまま部屋まで連れて行かれる。
「もう一人で歩けるのに」
「うん……わかってる」
なんとなく気まずいのか、シル兄様も言葉少なめだ。
ランを呼んで服を着替えようかと思ったのに、
シル兄様はそのまま寝台の上に私を座らせる。
「聞きたいことがあるんだろう?」
「……うん」
「いいよ。なんでも答える。
どっちにしてもアンリが落ち着いたら全部話すつもりだったんだ」
シル兄様は私に話すつもりだった?
それは大事なことを隠していると自覚していたってことかな。
「じゃあ、私が金属を糸にできるのはどうして?
あれは特別なことなんじゃないの?」
「十年前、王都で別れる前に魔力の糸を結んだだろう。
家族の証として。
アンリにその後で教えた魔力を糸にする魔術は、
誰でも使えるものではないんだ。
魔力の糸が魔術を開く鍵の役目をしている」
「鍵?魔力の糸がないとあの魔術は使えないってこと?」
「そうだよ。あれはパジェス家の要ともいえる魔術だから。
本当はパジェス家の血を引いている者しか使えない。
あの魔術は妻になる者のために作られたものなんだ」
「……え?」
この左手の魔力の糸が家族の証で、
シル兄様がケルトに婚約者だと紹介した理由がわかった。
魔術を使う私を見てヴァネッサが怒り出したのも。
自分が婚約者になると思っていたのに、
魔術が使える令嬢が現れたのを知って怒っていたんだ。
だけど、それはおかしい。
これが婚約者や妻にしか与えられないものなのだとしたら……
「どうして十年前に魔力の糸を結んだの?」
貴族相手に対等に口を利くなんて、処分されてもおかしくないことだ。
死にたいのか?」
「……そんな。だって、知らなかったから……」
「知らなかった、そんな言い訳で許されると思うのか?
平民の命が軽いことくらい、わかっているだろう」
「……」
大声で話しているわけではないのに、
静かに事実を突きつけるようなケルトにヴァネッサは動揺し始めた。
カトリーヌ様や私たちにどれだけ無礼なことをしてきたか、
ようやく理解できたのかもしれない。
「今までは自分はただの平民ではない、
貴族である私の孫だから特別に許されるとでも思っていたんだろう。
今後は俺の孫ではないと公表する。
これまでのように特別扱いされることはないと思え」
「……急にそんなことを言うなんてひどい。
私のことを可愛がってくれていたじゃない。
今までずっと孫だと思って育ててきたんでしょう?」
「お前が少しも反省していないからだろう。
どれだけシルヴァン様に迷惑をかけたと思っているんだ」
「……もういい!おじいちゃんなんて嫌い!」
「「あ!」」
ヴァネッサはレンとキールの手を振りほどいて部屋から出て行った。
「シルヴァン様、追いかけますか?」
「いやいい。話はしたし、放っておけ。
だが、ケルト、あれは反省していないだろうな」
「本当に申し訳ございません」
「お前の孫ではないと公表してしまえば、
周りも甘いことは言わなくなる。
今度何かあれば本当に処分しなければいけなくなるぞ」
「ええ、わかっております。
急いで遠縁の家に引き取らせます」
「養女に出すのか」
「はい。もともとそういう話が出ていたんです。
これ以上は私ではまともに育てられません。
ちょうどいい機会でした」
あの事件の時に三歳だったのなら、今は十三歳。
私よりも少し背が高いから同じくらいの年かと思ったけれど、
話をしてみるとまだ幼い感じがした。
もう十三歳なら平民と貴族の差くらいは理解しているはず。
自分が貴族の血を引いていると思っていたからか、
平民だと言われても納得できないのかもしれない。
引き取られる先は平民の家だと思うが、
そこで馴染んでやっていけるのかどうか心配になる。
それにしても……いろいろと疑問が残った。
ヴァネッサは私が金属を糸にしているのを見て驚いていた。
パジェス侯爵家の者しかできないのに、と。
もしかして家族の証である魔力の糸があるから、できるということ?
それに十年前の事件の罪悪感で婚約したという話。
シル兄様が言ったわけではないようだけど、
周りの人間はそれが私と婚約した理由だと思っている?
カトリーヌ様の見合いを断るまでの仮の婚約だと思っていたけれど、
ずっと部屋は同じままだし、シル兄様は私を甘やかそうとしてくる。
この婚約はいつまで続くのか聞いてもはぐらされていた。
そろそろシル兄様ときちんと話さなければいけない。
婚約者でなくなるのなら、パジェス侯爵領で働く場所を見つけるか、
他の領地に移動しなければならなくなる。
「アンリ?大丈夫か?」
「え?ええ、大丈夫よ」
「疲れただろう。屋敷に戻ろうか」
ヴァネッサと話していたせいで、もう夕方近くになっていた。
見学を終了し、屋敷へと戻る。
私が黙っていたせいか、馬車の中の雰囲気は良くなかった。
それでも、屋敷に戻ったらシル兄様と話をしようと思い、
ずっとどうやって話を切り出そうかと悩んでいた。
このままうやむやにすることはできそうになかった。
馬車が屋敷に着くと、またシル兄様に抱き上げて降ろされる。
そのまま地面に降ろしてくれればいいのに、
なぜか抱き上げたまま部屋まで連れて行かれる。
「もう一人で歩けるのに」
「うん……わかってる」
なんとなく気まずいのか、シル兄様も言葉少なめだ。
ランを呼んで服を着替えようかと思ったのに、
シル兄様はそのまま寝台の上に私を座らせる。
「聞きたいことがあるんだろう?」
「……うん」
「いいよ。なんでも答える。
どっちにしてもアンリが落ち着いたら全部話すつもりだったんだ」
シル兄様は私に話すつもりだった?
それは大事なことを隠していると自覚していたってことかな。
「じゃあ、私が金属を糸にできるのはどうして?
あれは特別なことなんじゃないの?」
「十年前、王都で別れる前に魔力の糸を結んだだろう。
家族の証として。
アンリにその後で教えた魔力を糸にする魔術は、
誰でも使えるものではないんだ。
魔力の糸が魔術を開く鍵の役目をしている」
「鍵?魔力の糸がないとあの魔術は使えないってこと?」
「そうだよ。あれはパジェス家の要ともいえる魔術だから。
本当はパジェス家の血を引いている者しか使えない。
あの魔術は妻になる者のために作られたものなんだ」
「……え?」
この左手の魔力の糸が家族の証で、
シル兄様がケルトに婚約者だと紹介した理由がわかった。
魔術を使う私を見てヴァネッサが怒り出したのも。
自分が婚約者になると思っていたのに、
魔術が使える令嬢が現れたのを知って怒っていたんだ。
だけど、それはおかしい。
これが婚約者や妻にしか与えられないものなのだとしたら……
「どうして十年前に魔力の糸を結んだの?」
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