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12.学園にて
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ガコンと大きな音がして馬車の動きが止まった。
どうやら学園内の馬車置き場に着いたようだ。
「さぁ、降りよう。」
「はい。」
先に降りたゼル様の手を借りて馬車から降りると、すぐに人の視線に気が付く。
馬車置き場付近にいた学生たちの目が一斉にこちらを向いたのがわかった。
私がゼル様の手を借りていることに驚きの声があがる。
「あれ…本当だったのか。」
「うそだろ。手にふれているぞ…。」
「運命の相手は第二王子じゃなかったのか??」
その声に気が付かないふりをして校舎へと歩き始める。
もう少しで校舎に着くと言う時に後ろから声をかけられた。
「おい、ジョーゼル!」
ふりむくと三学年の令息がこちらに向かってくるのが見えた。
黒髪に緑目でしっかりと鍛えられた身体…
たしかジョーゼル様と仲のいい侯爵家のリュリエル様?
「リュリエル、どうした?」
「どうしたじゃないよ…アンジェ様といるなんて…本当だったのか。」
リュリエル様は私とゼル様を交互に見て、確認するようにつぶやいた。
「本当かっていうのは、俺とアンジェのことか?」
「あぁ、そうだよ!
急に王家から連絡が来たと思えばアンジェ様の相手が見つかった、
それがジョーゼルだって。しかも第三王子??
驚くに決まってるだろう?本当だったんだな。
なんで俺に教えてくれなかったんだよー。ひどいな。」
少しすねたように言うリュリエル様に仕方ないだろうとゼル様が答える。
「俺だって、運命の相手になって初めて自分が王子だって知ったんだ。
教えられるわけないだろう。知らないんだから。」
「なんだ、そうだったのか。
じゃあ、仕方ないな。許してやろう。」
「ああ、仕方ないからな、許してやってくれよ。」
「ふふっ。」
あ、こらえきれずに笑ってしまった。
「アンジェ、何かおかしかったか?」
「ええ。ゼル様とリュリエル様って、とても仲がいいのですね。
お二人の会話が楽しくて、思わず笑ってしまいました。
リュリエル様、はじめまして。アンジェ・ルードヴィルです。」
「ああ、はじめまして。
シャルマン侯爵家のリュリエルです。
…ジョーゼルとの婚約おめでとうございます。」
「ありがとうございます。
ゼル様の仲の良いお友達なのでしょう?
わたくしともよろしくお願いしますね?」
「もちろんです。
こいつに何か不満があったら言ってください。
いつでもぶっ飛ばしますから!」
「いや、必要ないから。」
「お前に必要なくても、アンジェ様には必要かもしれないだろ?」
「っふふふ。」
またこらえきれなくて笑ってしまったらゼル様に頭をなでられる。
何かしらと思って見上げたら、優しく微笑まれた。
「そんなに俺たちの会話が楽しい?」
「はい。ずっと聞いていたいくらいです。」
「まぁ、これからいつでも聞けるよ。」
「楽しみです。」
にこにこと笑いあっていたら、リュリエル様にくつくつと笑われた。
「うん、俺が心配することなんてなかったな。
じゃあ、俺は先に教室に行ってるよ。
アンジェ様、また!」
「はい。」
軽く手を振って先に行ってしまったリュリエル様を見送ると、
ゼル様に背中を軽く押される。
そのまま手を回されている形で私の教室へと向かうことになる。
当然周りから見られているがゼル様は気にしないようだ。
私は気になるけれど、それ以上にこんな風に誰かに大事にされるのが夢だった。
恋人同士の軽いふれあい、そんなことをずっとしてみたいと思っていたのだから。
どうやら学園内の馬車置き場に着いたようだ。
「さぁ、降りよう。」
「はい。」
先に降りたゼル様の手を借りて馬車から降りると、すぐに人の視線に気が付く。
馬車置き場付近にいた学生たちの目が一斉にこちらを向いたのがわかった。
私がゼル様の手を借りていることに驚きの声があがる。
「あれ…本当だったのか。」
「うそだろ。手にふれているぞ…。」
「運命の相手は第二王子じゃなかったのか??」
その声に気が付かないふりをして校舎へと歩き始める。
もう少しで校舎に着くと言う時に後ろから声をかけられた。
「おい、ジョーゼル!」
ふりむくと三学年の令息がこちらに向かってくるのが見えた。
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たしかジョーゼル様と仲のいい侯爵家のリュリエル様?
「リュリエル、どうした?」
「どうしたじゃないよ…アンジェ様といるなんて…本当だったのか。」
リュリエル様は私とゼル様を交互に見て、確認するようにつぶやいた。
「本当かっていうのは、俺とアンジェのことか?」
「あぁ、そうだよ!
急に王家から連絡が来たと思えばアンジェ様の相手が見つかった、
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驚くに決まってるだろう?本当だったんだな。
なんで俺に教えてくれなかったんだよー。ひどいな。」
少しすねたように言うリュリエル様に仕方ないだろうとゼル様が答える。
「俺だって、運命の相手になって初めて自分が王子だって知ったんだ。
教えられるわけないだろう。知らないんだから。」
「なんだ、そうだったのか。
じゃあ、仕方ないな。許してやろう。」
「ああ、仕方ないからな、許してやってくれよ。」
「ふふっ。」
あ、こらえきれずに笑ってしまった。
「アンジェ、何かおかしかったか?」
「ええ。ゼル様とリュリエル様って、とても仲がいいのですね。
お二人の会話が楽しくて、思わず笑ってしまいました。
リュリエル様、はじめまして。アンジェ・ルードヴィルです。」
「ああ、はじめまして。
シャルマン侯爵家のリュリエルです。
…ジョーゼルとの婚約おめでとうございます。」
「ありがとうございます。
ゼル様の仲の良いお友達なのでしょう?
わたくしともよろしくお願いしますね?」
「もちろんです。
こいつに何か不満があったら言ってください。
いつでもぶっ飛ばしますから!」
「いや、必要ないから。」
「お前に必要なくても、アンジェ様には必要かもしれないだろ?」
「っふふふ。」
またこらえきれなくて笑ってしまったらゼル様に頭をなでられる。
何かしらと思って見上げたら、優しく微笑まれた。
「そんなに俺たちの会話が楽しい?」
「はい。ずっと聞いていたいくらいです。」
「まぁ、これからいつでも聞けるよ。」
「楽しみです。」
にこにこと笑いあっていたら、リュリエル様にくつくつと笑われた。
「うん、俺が心配することなんてなかったな。
じゃあ、俺は先に教室に行ってるよ。
アンジェ様、また!」
「はい。」
軽く手を振って先に行ってしまったリュリエル様を見送ると、
ゼル様に背中を軽く押される。
そのまま手を回されている形で私の教室へと向かうことになる。
当然周りから見られているがゼル様は気にしないようだ。
私は気になるけれど、それ以上にこんな風に誰かに大事にされるのが夢だった。
恋人同士の軽いふれあい、そんなことをずっとしてみたいと思っていたのだから。
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