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8.真相
「何をしているんだ!この馬鹿!早く謝れ!」
飛んできたのはバファル国王だった。
もう倒れそうなほど真っ青な顔で、
フォレッド王子とレミアの頭を掴んで下げさせようとしている。
「父上、何するんですか!」「痛い!もう、やだ!」
それでも二人の発言は止められず、国王が怒鳴りつけても納得できないようだ。
「何か面白いことでもあったのか?ミルティア。」
国王が来た後ろをゆっくりと歩いて近づいてきたのは帝国の皇太子だった。
特徴的な銀髪を後ろで一つに結び、青貴石の髪紐をつけている。
長身な上に鍛えている肉体は威圧感を与えるほどだ。
帝国の皇太子としての血だけでなく、その才能でも人を惹きつける、
まさに生まれながらの王だった。
「面白いというか、話しかけられたから答えていただけですわ。」
「ん?この国は身分の下の者から話しかけてもいいのか?」
「いいえ、そんなわけありませんわ。
ですが、どこの国にも礼儀知らずの者はいるでしょう?」
「ああ、なるほどな。」
「なんだと!ミルティア!俺とレミアに向かって、その態度は何だ!
公爵令嬢ごときが俺に礼儀知らずとはどういうことだ!」
「っ!フォレッド!黙れ!」
「父上、なぜ止めるんですか!あいつを不敬で捕まえてください!」
「いいから黙れ!」
もう倒れそうな国王が必死でフォレッド王子を黙らせようとしている。
しかし、どれだけ怒鳴っても口を閉じるつもりがなさそうだった。
帝国の皇太子はそれにたいして顔色一つ変えずに見ている。
「なぁ、バファル国王。本当に何一つ話していないのだな。
ミルティアは帝国の第一皇女だというのに、小国の王子ごときがこの態度とは。」
「は?」
「え?お義姉様が第一皇女?何の話?」
「ミルティアは皇帝妹のレベッカ皇女から産まれている。
レベッカ皇女は帝位継承者だった。
当然レベッカ皇女から産まれたミルティアも帝位継承者だ。
産まれた時点で第一皇女として帝国に籍がある。
どうして婚約者だったフォレッド王子が知らないんだ?
結婚したらミルティアはバファル国の女王になる予定だっただろう?」
「へ?」
「フォレッド王子よりも身分がはるかに高いのだ。当然だろう?
フォレッド王子が王配になるからと言って、
バファル国の王族の存続を許可したというのに。
国王、呆れたよ。ミルティアの立場すら公表していなかったとは。」
「いえ、あの、違うのです。王子が馬鹿なだけで、他は理解しております…。」
「理解していたら、夜会で押さえつけて媚薬を飲ませされているのを、
貴族たちが何もせずにただ見ているだけは無いだろう。
ミルティアの身分がわかっていたら、命がけで助けるはずだ。違うか?」
「…いや、あの、いや…」
まさか全て知られているとは思っていなかったのだろう。
さすがにフォレッド王子もまずい雰囲気を感じ取ったのか黙り始めた。
「ここに集まっている貴族たちよ。
ミルティアが帝国の皇女だと知っていた者はいるか?いたら応えよ!」
静まり返ったまま誰一人答えることは無かった。それはそうだろう。
公爵家の令嬢としてすら扱われていなかったのだ。
今更皇女だって知っていましたと嘘をついても無駄だとわかっているだろう。
下手なことを言えば、この場で切り殺されてもおかしくない。
この国の貴族たちはそれほど不敬なことをし続けてきている。
「この国は終わりだな。」
当たり前のことを告げるような口調でお義兄様がそう言うと、
バファル国王がお義兄様と私の前にひざまづいて騒ぎ始めた。
「待ってください!不敬なのはフォレッドだけです!
あやつは好きなように処刑してかまいませんから、
他の王族は助けてください!
ミルティア嬢、頼む!ミルティア嬢からもお願いしてくれ!」
「…バファル国王、私が王宮にいつ行っても会いませんでしたね。
なんでも後宮に30人も愛妾がいるとか…忙しそうでしたものね。
で、あなたが必要な理由が何かありますの?」
「えっ。」
呆然とする国王を押しのけるように、今度は公爵が私に縋りつこうとする。
それをカインと騎士に剣を突き付けられ、後ろに飛びのいた。
「ミルティア、私は父親だろう!?
国王が仕事しなかったのは事実だが、私は関係ない!
助けてくれるだろう?」
「あら、父親でした?忘れてませんよ?
自分の娘はレミアだけだって私の前でも言ってたじゃないですか。
お母様は宰相の愛人にすぎない…って罵ってましたよね。
あなた方が仕事しないからお母様と宰相が命がけで仕事していたというのに。」
あれだけ国のために生きたお母様たちを悪く言うのだけは耐えられませんでした。
言い返したせいで殴られて閉じ込められたのも忘れてませんよ?
「…ミルティア、悪かったよ。俺が謝ればいいんだろう!
お前と予定通り結婚するから、それでいいだろう!」
…やだ。何言ってるんですか?この人。
後ろの方で叫んでますけど、周りからものすごく冷たい目で見られてます。
どうして王子っていう人種は人の目が気にならないのかしら…不思議。
「嫌です。どうしてフォレッド王子なんかと結婚しなきゃいけないの?
絶対にお断りです。ホントこの国の王族はどうしようもない…。」
なんでだ!とか俺が謝ってやってるのに、と言い出して暴れはじめたので、
騎士団が数人がかりで取り押さえた。
一部始終を黙って聞いていたお義兄様もそろそろ飽きて来たようだし、
騎士団も早く仕事を終えて帰りたいでしょうね。
「もういいか、ミルティア?」
「はい。これ以上話しても無駄だと思います。」
「よし。騎士団長、後は予定通り捕縛しろ。」
「はっ。」
後ろで控えていた熊男のような騎士団長が素早く動いた。
バファル国王とフォレッド王子、逃げようとしていたお父様を捕縛し、
猿轡したうえで引きずるように連れて行く。
「騎士団の大隊を連れて来たからな。
腐った貴族どももすぐに一掃できるだろう。」
「無理じゃないですか?お義兄様。
夜会の時だって、フォレッド王子に追随せずに帰った令息と令嬢は3割。
その話を聞いて私を助けようと動いた家は1割ですよ。
ほとんど腐った貴族なんですから、かなり時間はかかるでしょう。」
「まぁ、それもそうか。騎士団長を置いていくから、そのうち綺麗になるだろう。
それで、どうする?ミルティア、この国の女王になるか?」
飛んできたのはバファル国王だった。
もう倒れそうなほど真っ青な顔で、
フォレッド王子とレミアの頭を掴んで下げさせようとしている。
「父上、何するんですか!」「痛い!もう、やだ!」
それでも二人の発言は止められず、国王が怒鳴りつけても納得できないようだ。
「何か面白いことでもあったのか?ミルティア。」
国王が来た後ろをゆっくりと歩いて近づいてきたのは帝国の皇太子だった。
特徴的な銀髪を後ろで一つに結び、青貴石の髪紐をつけている。
長身な上に鍛えている肉体は威圧感を与えるほどだ。
帝国の皇太子としての血だけでなく、その才能でも人を惹きつける、
まさに生まれながらの王だった。
「面白いというか、話しかけられたから答えていただけですわ。」
「ん?この国は身分の下の者から話しかけてもいいのか?」
「いいえ、そんなわけありませんわ。
ですが、どこの国にも礼儀知らずの者はいるでしょう?」
「ああ、なるほどな。」
「なんだと!ミルティア!俺とレミアに向かって、その態度は何だ!
公爵令嬢ごときが俺に礼儀知らずとはどういうことだ!」
「っ!フォレッド!黙れ!」
「父上、なぜ止めるんですか!あいつを不敬で捕まえてください!」
「いいから黙れ!」
もう倒れそうな国王が必死でフォレッド王子を黙らせようとしている。
しかし、どれだけ怒鳴っても口を閉じるつもりがなさそうだった。
帝国の皇太子はそれにたいして顔色一つ変えずに見ている。
「なぁ、バファル国王。本当に何一つ話していないのだな。
ミルティアは帝国の第一皇女だというのに、小国の王子ごときがこの態度とは。」
「は?」
「え?お義姉様が第一皇女?何の話?」
「ミルティアは皇帝妹のレベッカ皇女から産まれている。
レベッカ皇女は帝位継承者だった。
当然レベッカ皇女から産まれたミルティアも帝位継承者だ。
産まれた時点で第一皇女として帝国に籍がある。
どうして婚約者だったフォレッド王子が知らないんだ?
結婚したらミルティアはバファル国の女王になる予定だっただろう?」
「へ?」
「フォレッド王子よりも身分がはるかに高いのだ。当然だろう?
フォレッド王子が王配になるからと言って、
バファル国の王族の存続を許可したというのに。
国王、呆れたよ。ミルティアの立場すら公表していなかったとは。」
「いえ、あの、違うのです。王子が馬鹿なだけで、他は理解しております…。」
「理解していたら、夜会で押さえつけて媚薬を飲ませされているのを、
貴族たちが何もせずにただ見ているだけは無いだろう。
ミルティアの身分がわかっていたら、命がけで助けるはずだ。違うか?」
「…いや、あの、いや…」
まさか全て知られているとは思っていなかったのだろう。
さすがにフォレッド王子もまずい雰囲気を感じ取ったのか黙り始めた。
「ここに集まっている貴族たちよ。
ミルティアが帝国の皇女だと知っていた者はいるか?いたら応えよ!」
静まり返ったまま誰一人答えることは無かった。それはそうだろう。
公爵家の令嬢としてすら扱われていなかったのだ。
今更皇女だって知っていましたと嘘をついても無駄だとわかっているだろう。
下手なことを言えば、この場で切り殺されてもおかしくない。
この国の貴族たちはそれほど不敬なことをし続けてきている。
「この国は終わりだな。」
当たり前のことを告げるような口調でお義兄様がそう言うと、
バファル国王がお義兄様と私の前にひざまづいて騒ぎ始めた。
「待ってください!不敬なのはフォレッドだけです!
あやつは好きなように処刑してかまいませんから、
他の王族は助けてください!
ミルティア嬢、頼む!ミルティア嬢からもお願いしてくれ!」
「…バファル国王、私が王宮にいつ行っても会いませんでしたね。
なんでも後宮に30人も愛妾がいるとか…忙しそうでしたものね。
で、あなたが必要な理由が何かありますの?」
「えっ。」
呆然とする国王を押しのけるように、今度は公爵が私に縋りつこうとする。
それをカインと騎士に剣を突き付けられ、後ろに飛びのいた。
「ミルティア、私は父親だろう!?
国王が仕事しなかったのは事実だが、私は関係ない!
助けてくれるだろう?」
「あら、父親でした?忘れてませんよ?
自分の娘はレミアだけだって私の前でも言ってたじゃないですか。
お母様は宰相の愛人にすぎない…って罵ってましたよね。
あなた方が仕事しないからお母様と宰相が命がけで仕事していたというのに。」
あれだけ国のために生きたお母様たちを悪く言うのだけは耐えられませんでした。
言い返したせいで殴られて閉じ込められたのも忘れてませんよ?
「…ミルティア、悪かったよ。俺が謝ればいいんだろう!
お前と予定通り結婚するから、それでいいだろう!」
…やだ。何言ってるんですか?この人。
後ろの方で叫んでますけど、周りからものすごく冷たい目で見られてます。
どうして王子っていう人種は人の目が気にならないのかしら…不思議。
「嫌です。どうしてフォレッド王子なんかと結婚しなきゃいけないの?
絶対にお断りです。ホントこの国の王族はどうしようもない…。」
なんでだ!とか俺が謝ってやってるのに、と言い出して暴れはじめたので、
騎士団が数人がかりで取り押さえた。
一部始終を黙って聞いていたお義兄様もそろそろ飽きて来たようだし、
騎士団も早く仕事を終えて帰りたいでしょうね。
「もういいか、ミルティア?」
「はい。これ以上話しても無駄だと思います。」
「よし。騎士団長、後は予定通り捕縛しろ。」
「はっ。」
後ろで控えていた熊男のような騎士団長が素早く動いた。
バファル国王とフォレッド王子、逃げようとしていたお父様を捕縛し、
猿轡したうえで引きずるように連れて行く。
「騎士団の大隊を連れて来たからな。
腐った貴族どももすぐに一掃できるだろう。」
「無理じゃないですか?お義兄様。
夜会の時だって、フォレッド王子に追随せずに帰った令息と令嬢は3割。
その話を聞いて私を助けようと動いた家は1割ですよ。
ほとんど腐った貴族なんですから、かなり時間はかかるでしょう。」
「まぁ、それもそうか。騎士団長を置いていくから、そのうち綺麗になるだろう。
それで、どうする?ミルティア、この国の女王になるか?」
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