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22.不安な日々
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ブローチを持ち歩くようになってから三週間が過ぎた。
今のところアンディに見つけられてはいないが、
アンディは毎日何度も私の部屋に来て、あちこちをひっくり返して探している。
私が大事なものを隠しているのを確信しているようだ。
部屋に鍵をかけていても、お父様とお母様に開けるように命令される。
開けた後は、アンディがしまってあるドレスから小物まで全部出してしまう。
「ねぇ、どうして出しちゃうの?」
「わかんない!」
「もうやめてくれない?片付けるリーナが大変なのよ」
「やだぁ!」
止めれば止めるほどはしゃいで笑うアンディに、
もう何を言えばいいのかわからない。
連れてこられたお母様はそれをニコニコと笑ってみている。
「お母様、もうやめさせてください。
毎日私の部屋をこんなにぐちゃぐちゃにして、何がしたいんですか」
「さぁ?でもアンディが楽しそうならいいじゃない。
嫡子のいうことは聞かなきゃだめよ?」
「は?お母様、アンディは嫡子じゃありませんよ?」
「あら、ジュリア。お兄様でしょう。
呼び捨てにするなんて生意気なんだから!」
「……え?」
冗談を言っているわけではないようだ。
アンディを嫡子にしたいのかと聞こうとしたのに、
お兄様でしょう?
……まさか。お母様の心は病んだままなの?
アンディだと言って抱きしめたのは、あの子がお兄様だと思い込んでいる?
もう元気になったのだと思っていたお母様の目が、
私を映していないことに気がつく。
見ているのはお兄様だけ。
私よりもずっと小さいアンディを比べられないくらい、
お母様には何も見えていないんだ。
こんな状態でお母様に何か言っても無駄だと思い、
アンディがあきるまで放っておくことにする。
途中で片付けても意味がない。
夜更けになってからリーナと二人で片付ける。
もうこの屋敷の使用人はリーナとヨゼフをのぞいては、
アンディの味方になってしまっている。
これまで嫡子だと思って私に丁寧に接していた使用人が、
日に日に雑な扱いに変わっていく。
屋敷にいる間、少しも心が休まらない。
眠っていても突然アンディが部屋に入ってくることもある。
夜が明けないうちから部屋を荒らされることも。
どうやら私が学園にいる間にたっぷり昼寝をしているらしい。
そのせいで、夜中や早朝まで部屋に押しかけてきてしまう。
お父様が何を言っても私が嫡子だからと、
我慢しようと思っていたのに、少しずつ気力が削がれていく。
寝不足なこともあって、気が弱くなっているのかもしれない。
それよりも、ずっとブローチを隠し続けているから、
心から安心できる時間が少しもなかった。
屋敷に帰ればアンディに狙われ、
学園ではアマンダ様に奪われるような気がして、
ほっとできるのは馬車の中だけだった。
「朝食は食べてきたのか?」
「一応は」
「何を食べたのか、言ってごらん」
「……苺よ」
「それは食事とは言わないよな」
「ごめんなさい」
「いや、いい。あいかわらず屋敷は大変なんだろう。
授業が自習だったらカフェテリアに行こうか。
少しでも何か食べたほうがいいよ」
「でも、食欲がなくて」
「スープだけでも」
「わかったわ」
ライオネル様が心配してくれているのがわかるから、
カフェテリアに行って食事をすることにした。
ブローチはさきほどお手洗いに行った際に鞄にいれてある。
服の下につけて歩くのは、金具がゆるんで落としそうな気がするからだ。
それに、つけていることが知られたら、アマンダ様に狙われそうな気がする。
あれ以来、アマンダ様はおとなしくしている。
だけど、ブリュノ様のことで私の噂が流れているのを知っている。
私がアマンダ様を脅し仮婚約を解消させたが、
そのことを知ったブリュノ様は私との仮婚約を拒否した、というものだ。
事実とは違うとB教室の者はわかってくれているが、
他の教室の者たちはブリュノ様の方が親しい。
明るくて友人が多いブリュノ様の言葉を信じてしまっている。
アマンダ様は私への嫌がらせを止める気がないんだと思う。
図書館で課題についての調べ物をした後、
昼食をとってからB教室へと戻る。
「今日は発表の日だよな?」
「うん、早めに教室に戻らないと」
教室には半分ほど人が戻っていた。
机の横に鞄をかけて、研究発表の準備を始める。
今日は私とライオネル様が発表をする日だった。
資料など配るものを用意し、あとは授業の開始を待つだけになった時、
その声は廊下から聞こえた。
「火事だ!実験室から火事だ!東側の階段から避難するんだ!」
火事?言われてみれば、煙の臭いがする。
すぐにジニーが教室に駆け込んでくる。
「ライオネル様!ジュリア様!すぐに避難を!」
「ジニー!ジュリアを頼む!」
「わかりました!」
「えっ!?」
ジニーに抱き上げられ、そのまま廊下へと連れ出される。
前をライオネル様が走り、その後をジニーが追いかける。
あっという間に校舎の外に出ていた。
実験室のあたりからは黒い煙が出ている。
昼休みに実験するようなことがあるんだろうか?
学校の警備員たちが消火を始めようとした時、
教室に鞄を置いてきてしまったことに気がついた。
「……どうしよう」
「どうかしたか?」
「……教室に鞄を置いてきてしまったの」
「ああ、すぐに消火すると思うし、大丈夫だろう。
……何か、大事な物でもいれてあったのか?」
「……ここでは言いたくない」
すぐ近くにアマンダ様がいた。
聞かれたらまた何か嫌がらせをされるかもしれない。
だから、小声で伝えるだけにする。
「……わかった。ジニーが大丈夫だと判断したらすぐに戻ろう」
「うん、わかった」
ジニーが安全だと判断しなければ、ライオネル様は動けない。
おそらく、私一人が教室に戻ることも許可してくれないだろう。
早く消火できないかとじっと待つ。たった十数分がものすごく長く感じた。
後ろでアマンダ様がブリュノ様とのんびり話しているのが聞こえた。
「火事だなんて怖いわね」
「ああ、早く消えるといいな」
二人は仮婚約解消したのが嘘のように一緒にいる。
解消したら戻せないのがルールだけど、本当に婚約するという手もある。
その場合はC教室に移動になるそうだけど、
私としてはその方がありがたいと思う。
「……もういいでしょう。戻りましょうか」
「よし、行こうか」
「ええ」
煙が見えなくなって、ようやくジニーの許可が出た。
三人で教室に戻ると、まだ誰も戻っていない。
机の横に鞄がかかったままなのを見て、ほっとした。
「……さっきは聞けなかったけど、大事なものが入っているのか?」
「うん、とっても大事なもの」
念のため、鞄を開けて中を確認する。
アマンダ様が戻ってくる前にブローチの無事を確認したい。
……どこにいった?
小さな巾着に入れて鞄に入れておいたのに、無い?
「どうした?顔色が悪いぞ」
「大事なものが……無いの。どうして?」
「無い?まさか、今の時間で盗まれたのか?」
盗まれた?誰に?
心当たりは一人しかいなかった。
「あ、どこに行くんだ!?待って!」
ライオネル様に止められたのも聞かず、廊下へと出る。
アマンダ様を見つけて、聞かなきゃ。
あれは、あれだけはどうしても奪われるわけにはいかないのに。
走って戻ると、アマンダ様はまだ校舎の外にいた。
ブリュノ様と楽しそうに話している、その胸にブローチが光っていた。
今のところアンディに見つけられてはいないが、
アンディは毎日何度も私の部屋に来て、あちこちをひっくり返して探している。
私が大事なものを隠しているのを確信しているようだ。
部屋に鍵をかけていても、お父様とお母様に開けるように命令される。
開けた後は、アンディがしまってあるドレスから小物まで全部出してしまう。
「ねぇ、どうして出しちゃうの?」
「わかんない!」
「もうやめてくれない?片付けるリーナが大変なのよ」
「やだぁ!」
止めれば止めるほどはしゃいで笑うアンディに、
もう何を言えばいいのかわからない。
連れてこられたお母様はそれをニコニコと笑ってみている。
「お母様、もうやめさせてください。
毎日私の部屋をこんなにぐちゃぐちゃにして、何がしたいんですか」
「さぁ?でもアンディが楽しそうならいいじゃない。
嫡子のいうことは聞かなきゃだめよ?」
「は?お母様、アンディは嫡子じゃありませんよ?」
「あら、ジュリア。お兄様でしょう。
呼び捨てにするなんて生意気なんだから!」
「……え?」
冗談を言っているわけではないようだ。
アンディを嫡子にしたいのかと聞こうとしたのに、
お兄様でしょう?
……まさか。お母様の心は病んだままなの?
アンディだと言って抱きしめたのは、あの子がお兄様だと思い込んでいる?
もう元気になったのだと思っていたお母様の目が、
私を映していないことに気がつく。
見ているのはお兄様だけ。
私よりもずっと小さいアンディを比べられないくらい、
お母様には何も見えていないんだ。
こんな状態でお母様に何か言っても無駄だと思い、
アンディがあきるまで放っておくことにする。
途中で片付けても意味がない。
夜更けになってからリーナと二人で片付ける。
もうこの屋敷の使用人はリーナとヨゼフをのぞいては、
アンディの味方になってしまっている。
これまで嫡子だと思って私に丁寧に接していた使用人が、
日に日に雑な扱いに変わっていく。
屋敷にいる間、少しも心が休まらない。
眠っていても突然アンディが部屋に入ってくることもある。
夜が明けないうちから部屋を荒らされることも。
どうやら私が学園にいる間にたっぷり昼寝をしているらしい。
そのせいで、夜中や早朝まで部屋に押しかけてきてしまう。
お父様が何を言っても私が嫡子だからと、
我慢しようと思っていたのに、少しずつ気力が削がれていく。
寝不足なこともあって、気が弱くなっているのかもしれない。
それよりも、ずっとブローチを隠し続けているから、
心から安心できる時間が少しもなかった。
屋敷に帰ればアンディに狙われ、
学園ではアマンダ様に奪われるような気がして、
ほっとできるのは馬車の中だけだった。
「朝食は食べてきたのか?」
「一応は」
「何を食べたのか、言ってごらん」
「……苺よ」
「それは食事とは言わないよな」
「ごめんなさい」
「いや、いい。あいかわらず屋敷は大変なんだろう。
授業が自習だったらカフェテリアに行こうか。
少しでも何か食べたほうがいいよ」
「でも、食欲がなくて」
「スープだけでも」
「わかったわ」
ライオネル様が心配してくれているのがわかるから、
カフェテリアに行って食事をすることにした。
ブローチはさきほどお手洗いに行った際に鞄にいれてある。
服の下につけて歩くのは、金具がゆるんで落としそうな気がするからだ。
それに、つけていることが知られたら、アマンダ様に狙われそうな気がする。
あれ以来、アマンダ様はおとなしくしている。
だけど、ブリュノ様のことで私の噂が流れているのを知っている。
私がアマンダ様を脅し仮婚約を解消させたが、
そのことを知ったブリュノ様は私との仮婚約を拒否した、というものだ。
事実とは違うとB教室の者はわかってくれているが、
他の教室の者たちはブリュノ様の方が親しい。
明るくて友人が多いブリュノ様の言葉を信じてしまっている。
アマンダ様は私への嫌がらせを止める気がないんだと思う。
図書館で課題についての調べ物をした後、
昼食をとってからB教室へと戻る。
「今日は発表の日だよな?」
「うん、早めに教室に戻らないと」
教室には半分ほど人が戻っていた。
机の横に鞄をかけて、研究発表の準備を始める。
今日は私とライオネル様が発表をする日だった。
資料など配るものを用意し、あとは授業の開始を待つだけになった時、
その声は廊下から聞こえた。
「火事だ!実験室から火事だ!東側の階段から避難するんだ!」
火事?言われてみれば、煙の臭いがする。
すぐにジニーが教室に駆け込んでくる。
「ライオネル様!ジュリア様!すぐに避難を!」
「ジニー!ジュリアを頼む!」
「わかりました!」
「えっ!?」
ジニーに抱き上げられ、そのまま廊下へと連れ出される。
前をライオネル様が走り、その後をジニーが追いかける。
あっという間に校舎の外に出ていた。
実験室のあたりからは黒い煙が出ている。
昼休みに実験するようなことがあるんだろうか?
学校の警備員たちが消火を始めようとした時、
教室に鞄を置いてきてしまったことに気がついた。
「……どうしよう」
「どうかしたか?」
「……教室に鞄を置いてきてしまったの」
「ああ、すぐに消火すると思うし、大丈夫だろう。
……何か、大事な物でもいれてあったのか?」
「……ここでは言いたくない」
すぐ近くにアマンダ様がいた。
聞かれたらまた何か嫌がらせをされるかもしれない。
だから、小声で伝えるだけにする。
「……わかった。ジニーが大丈夫だと判断したらすぐに戻ろう」
「うん、わかった」
ジニーが安全だと判断しなければ、ライオネル様は動けない。
おそらく、私一人が教室に戻ることも許可してくれないだろう。
早く消火できないかとじっと待つ。たった十数分がものすごく長く感じた。
後ろでアマンダ様がブリュノ様とのんびり話しているのが聞こえた。
「火事だなんて怖いわね」
「ああ、早く消えるといいな」
二人は仮婚約解消したのが嘘のように一緒にいる。
解消したら戻せないのがルールだけど、本当に婚約するという手もある。
その場合はC教室に移動になるそうだけど、
私としてはその方がありがたいと思う。
「……もういいでしょう。戻りましょうか」
「よし、行こうか」
「ええ」
煙が見えなくなって、ようやくジニーの許可が出た。
三人で教室に戻ると、まだ誰も戻っていない。
机の横に鞄がかかったままなのを見て、ほっとした。
「……さっきは聞けなかったけど、大事なものが入っているのか?」
「うん、とっても大事なもの」
念のため、鞄を開けて中を確認する。
アマンダ様が戻ってくる前にブローチの無事を確認したい。
……どこにいった?
小さな巾着に入れて鞄に入れておいたのに、無い?
「どうした?顔色が悪いぞ」
「大事なものが……無いの。どうして?」
「無い?まさか、今の時間で盗まれたのか?」
盗まれた?誰に?
心当たりは一人しかいなかった。
「あ、どこに行くんだ!?待って!」
ライオネル様に止められたのも聞かず、廊下へと出る。
アマンダ様を見つけて、聞かなきゃ。
あれは、あれだけはどうしても奪われるわけにはいかないのに。
走って戻ると、アマンダ様はまだ校舎の外にいた。
ブリュノ様と楽しそうに話している、その胸にブローチが光っていた。
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