あなたにはもう何も奪わせない

gacchi(がっち)

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42.問題令嬢の行動

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この話をした三日後、もう一度分厚い報告書がジョルダリ国から届いた。
計画通りに全員の婚約が発表されたことと、
やはり問題令嬢の三人は大変な騒ぎようだったと。

とても素直に受け入れるような状態ではなかったと書かれていて、
ジョルダリに行ったときに何を言われるのかと気が重くなる。

「マリリアナはさっそく父上を探しに行ったようだ」

「離宮で休養中なのでしょう?」

「ああ。王命で議会の法案をなかったことにさせたいのだろう」

「そんなことできるの?」

「できないよ。父上の力よりも議会の方が強い。
 だからこそ、俺たちは時間をかけて味方を増やしていったんだ。
 王妃や王妃の取り巻きの貴族家が騒いでも可決できるように。
 議会の三分の二以上が俺たちの味方だ。
 今さらどうやってもなかったことにはできない」

「じゃあ、あきらめてくれるかな」

「あきらめないと思うよ」

あっさりと言うライオネル様に、驚くしかない。
本当に妹にたいしての愛情はないみたい。

「マリリアナが嫁げるような高位貴族の令息がいなくなったから」

「え?」

「ビオシュ公爵家とペリシエ侯爵家はマリリアナから逃げる気だろうって、
 賢い貴族家はずっと前から気がついていたからね。
 マリリアナの関心が二人に行っている間に他の令嬢と婚約しておこうって、
 マリリアナが降嫁できるような家は婚約してしまってるんだ」

「それは……簡単にはあきらめられないかも?」

「だろうね」

だろうねってライオネル様は言うけれど、
さすがに王女の嫁ぎ先がないっていうのは困らないのかな。
他国に嫁がせる先とかあるのかもしれないけど。

「残りの公爵令嬢と侯爵令嬢も同じ。
 高位貴族の令息がもうすでに婚約しているから。
 嫁ごうと思ったら爵位を下げて探さないといけない。
 俺たち四人だけが残ってる状況だったんだ」

「そうだったんだ。じゃあ、三人ともあきらめないのよね?」

「うん、ジョルダリに行ったらうるさいと思う。
 結婚するまでは騒ぎ続けるだろうから。
 でも、ジュリアのことは俺が守るから安心していい。
 それに兄上たちの婚約者を紹介するから社交するのにも問題はないよ」

「ええ、ありがとう」

第一王子と公爵家と侯爵家の婚約者。
その令嬢たちと仲良くできるのであれば心強い。

しかも、四人で問題令嬢たちに立ち向かうことになるのだから、
みんなで戦う仲間といった感じだろうか。
きっとお互いに手を取り合って戦えると思う。

「今はとりあえず、残りの学園生活を楽しもう」

「そうね。卒業まであと二か月だもの。
 最後まで楽しんでほしいわ」

「ジュリアも。一緒に楽しむんだよ」

「ふふ。そうね」



めんどうなことは卒業してから、ジョルダリに行ってから。
そんな風に考えていたのだが、事態はそれほど甘くなかったようだ。

二週間後、急ぎの知らせが王宮から届いた。
ジョルダリの王宮から、この国の王宮へと、
通信が入ったとの知らせだった。

これはよほどのことでなければ使わない方法だ。
いつもなら早馬で数日かかる報告が、
通信を使えば半日ほどでライオネル様に届くことになる。

便利ではあるが、他国の王宮を経由するために、
その内容はクラルティ王家にも知られてしまう。

それをわかっていて、それでも急いで知らせなくてはいけないこととは。
王宮に呼び出されていたライオネル様が戻ってきたとき、
あきらかに焦った顔をしていた。

「何があったの?」

「あいつら……我慢できなかったらしい」

「え?」

「公爵家のルミリアと侯爵家のブランカ。
 あいつら、別々にこの国に来ようとしている」

「……え?」

この国に来ようとしている?
公爵令嬢と侯爵令嬢が?しかも別々に?

「あの……国を出るのに許可はいらないの?」

「いるに決まってる」

「その許可は誰が出したの?」

「調べさせているが、おそらくマリリアナだろう」

マリリアナ王女が許可を?十一歳って言ってなかった?

「念のために聞くけど、王族なら許可出せるもの?」

「出せない。国王の許可がいる。今なら、国王代理の許可が二人分いる」

ジョルダリ国王は休養中で、側妃様が二人で国王代理をしているはず。
国王代理二人分の許可がいるのなら、かなり厳しく管理されている。
ライオネル様たち四人の婚約を知って騒いでいるような令嬢を、
他国に出すようなことはさすがに許可しないはず。

「そうよね……じゃあ、無許可で?」

「マリリアナが許可を偽造したんだろう」

「それはまずいわね」

「まずい。だけど、とりあえずの問題は、
 その二人がここに来る可能性が高いってことだ」

「ここって、ライオネル様に会いに来るってこと?」

「兄上たちに婚約解消しろと言って相手にされなかったらしい。
 まともに社交していない俺なら説得できるとでも思ったのかもしれん」

「そんな」

問題令嬢たちと対峙するのはまだ先の話だと思っていた。
急にここに来ると言われて、動揺してしまう。

「大丈夫……ジュリアには手を出させない。
 俺がちゃんと守るから安心していい」

「ライオネル様……」

「きちんと断って、追い返すから心配しないで」

優しく頭をなでてなぐさめようとしてくれるライオネル様に、
これじゃいけないと思いなおした。

「ううん、私も!私も一緒に頑張るから!」

「え?」

「ライオネル様に守られて、隠れて終わるような婚約者だったら、
 簡単に言うこと聞かせられそうだって思いそうでしょう?
 だから、私も一緒に追い返す!ライオネル様と一緒に!」

両手を握りしめて宣言したら、ライオネル様とジニーに笑われる。
え?おかしなこと言った?

「笑ってごめん。あまりにも可愛い顔して勇ましいこと言うから」

「もう!からかわないで!」

「ごめん。そうだね。一緒に戦ってもらわないとね。
 俺の妻としてジュリアは隣にいてくれないと」

「そうでしょう?」

理解してくれたみたいでほっとする。
守ってくれるのはうれしいけれど、それで弱くなってしまうのは怖い。

私はライオネル様に守られなくても、一人で立てるようでありたい。
そうでなくては、お互いに支えあうことはできないと思うから。




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