聞こえません、見えません、だから私をほっといてください。

gacchi(がっち)

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ジョージアという魔術師

8.陛下とのお茶

「なんだ浮かない顔して。何かあったか?」

いつものように謁見室の奥で陛下のお茶につきあっていると、
顔に出ていたのか心配事があるのか聞かれてしまった。
まいったな。まだ言うつもりは無かったんだけど…。仕方ないか。

「いや、実は昨日レイフィアのところに刺繍を取りに行ったら、
 身ごもっていることに気が付いて。」

「本当か!」

「まだ初期なので、公表するのはずっと後だと思います。
 なので、陛下も聞かなかったことにしてくださいよ。
 問題は、その…お腹の中にいる子が双子なんです。」

「なんだと…。」

レオンハルトとレイフィアの子ができたと聞いて、
見たことも無い笑顔だった陛下が、みるみるうちに顔色を悪くしていく。
それもそうだ。ただでさえ魔力量の多い二人の子だ。
間違いなくお腹の中にいる子も魔力量が多いだろう。
一人でも魔力不足で倒れることになるかもしれないと心配していた。
それが、双子ともなれば、魔力量は倍持って行かれることになる。
出産時の危険性も高いし、心配なことばかりだ。
子どもができたのは嬉しかったが、今はレイフィアの身体が心配でならない。

昨日二人にそれを告げた時、即座にレオンハルトは医術士を探すために動き出した。
早いうちに優秀な医術士を確保しなければならない。
一応ガルハッタ公爵家についている医術士もいるのだが、出産は診れないらしい。


「それで、レオンハルト殿が医術士を探そうとしているんで、
 俺も探してみたんですが…なかなか。
 できれば女性の医術士がいいんですけど、それは難しくて。」

「あー女性な。何度か王宮医術士に女性を入れてみたんだが、
 色々と事情があってすぐにやめてしまうんだよ。
 医術院で優秀なものを推薦してもらって王宮医術士にするんだが、
 今の医術院の上から10番目くらいまでは女性なんだ。
 だけど、ここ数年王妃の意向もあって女性医術士を増やそうと登用しても、
 ほんの数か月でやめてしまう。
 無理に王宮医術士にしてやめられても困ると思って、迷っているんだよな…。
 女性医術士がすぐやめてしまう原因はわかってるんだ…。
 問題があればあげてもらって対応することになってるのに、
 王宮医術士長からは問題があがってこない。
 王宮医術士は王宮魔術士長が管理することになってるんだが、もう高齢で。
 ほとんど管理の意味をなしていないだろう。

 そうだ。ジョージア、仕事として頼もう。
 王宮魔術士長の代わりに、王宮医術士の管理担当になってくれ。
 そのかわり優秀な医術士を公爵家優先で派遣する。
 一人ずば抜けて優秀な医術士が医術院にいる。もちろん女性だ。
 王宮医術士として入れるから、やめさせないように医術士の指導を頼む。
 ついでにその女性医術士の護衛も頼んで良いか?」

「女性医術士の護衛ですか?それはかまわないですけど、
 管理担当って俺の下に医術士たちがつくってことですよね。
 それを引き受ければ公爵家優先で女性医術士を派遣してくれると?」

「ああ。レオンハルトたちの子は俺も待ち望んでいるからな。
 できる限りの優遇を約束する。
 医術士の管理担当が代わるのは王宮魔術師長の負担軽減のためということで、
 女性医術士を増やしていくのは次期王太子妃のためということにしよう。
 その女性医術士が王宮医術士として定着してくれれば、
 他にも女性医術士を増やしていけるはずだ。」

「わかりました。引き受けます。」

王宮医術士の管理担当になるのは正直言ってめんどくさい。
頭の固い王宮医術士が多いのは王弟殿下の時でよく知っている。
あの時は患者が王弟殿下だったから、
王宮医術士たちも大人しくしていたんだと思うが…。
数人それでも態度が悪い医術士がいて、
最終的には王弟殿下の治療から外れてもらった。
あの時も揉めたが最終的には俺の意見が通った。
俺が陛下からある程度の裁量を任されていることは知っているだろう。

医術院では問題なかった女性医術士が、
王宮医術士になった途端にやる気をなくして辞めてしまう。
原因は予想できるが、根は深そうだな…。
レオンハルト殿にも話して、ジョセフの手を貸してもらうか。
レイフィアのためなら喜んで働いてくれそうだし。




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