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5.謁見室を出て

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もともと国王の異母弟でもあるジルバードと、
現国王の一人娘であるシルヴィア王女の結婚。
国を強くするという意味では、これ以上ない相手であった。

だが、結婚相手がジルバードだと知ったシルヴィアは、もう何も考えられなかった。
政略結婚で、どんな相手であっても大丈夫と覚悟を決めたはずだが、
思いもしなかった相手に混乱してしまっていた。
王女としての矜持があるからか、顔には出していなかったが、
陛下とジルバードにはよくわかっていた。シルヴィアが限界だと。
そのため、詳しい話は後日発表とし、謁見を早急に終わらせた。

陛下、ジルバード、シルヴィアの順で退出し、廊下に出たところで、
シルヴィアが崩れ落ちそうになった。
それに気が付いたジルバードが受け止めたが、シルヴィアは気を失っていた。

「やっぱりこうなったか…。」

渋い顔をした国王がつぶやいたが、ジルバードは動じずに、

「レーベント、シルヴィアを部屋まで連れて行く。侍女に連絡してくれ。」

そのままシルヴィアを抱き上げてしまった。
部屋まで自分が抱いて連れて行くつもりのようだ。

「ジルバード、少し落ち着いてから話せよ?」

「わかってます、兄上。焦りませんよ。」



シルヴィアが気が付いたのは夕暮れに近い時間だった。
灯りを消しているのだろう。薄暗い部屋の中、誰かが付き添ってくれている。
その顔を見て、もう一度気を失いかけた。

「シルヴィア、大丈夫か?」

「叔父様…帰って来たんですね。戦争は終わったのですか?」

「ああ。あれだけ被害が出たら、しばらくはおとなしくしているだろう。
 騎士団長も他の者に引き継いできたし、俺が辺境に行くことはもうないよ。」

「そうですか…ご無事でよかったです。」

「急な話で驚いただろう。
 一年後に結婚式となる。
 …それまで、いろいろ話をしないか?」

「…話ですか?」

「ああ、不満をぶつけてくれていい。何か聞きたいことがあれば聞いてほしい。
 わがままがあれば全部言ってくれてかまわない。
 お前とたくさん話がしたいんだ。」

「…わかりました。」

「今日は疲れただろう?また明日顔を出す。ゆっくり休んでくれ。」

そういうと私室から出て行った。
王女の私室に男性が入るなんて、あってはならないことだ。
そのあってはならないことがおきて、
先ほど謁見室であった事は本当なのだと実感した。

私の結婚相手は叔父様…?本当に?
想像もしなかったことに、気持ちの整理ができなかった。

「シルヴィア様、起きられますか?食事はどうしますか?」

侍女から声をかけられ、起き上がったが、
何かを食べるような気持ちになれなかった。
謁見時に着ていたドレスのままだということに気が付いて、返事をする。

「お腹はすいてないの。でも、着替えたいわ。
 湯あみの準備をお願い。」

「かしこまりました。」

もう今日は何も考えられ無さそうだった。
明日になったら、何か変わるかもしれない。これは夢なのかもしれない。
そう思って、湯あみの後、そのまま眠ることにした。






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