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21.遠い気持ち

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ジル、何か悩んでいる?眉間にしわが寄ってる…。

謁見室で王女に会ってから、少し態度がおかしかった。
もしかして、あの女官に似ているから?
王弟の宮に一緒に戻って来たのに、
お父様と話があるからとまた謁見室に戻ってしまった。

やっぱり、ああいう女性が好きなのかな。
16歳になったとはいえ、私はまだ子どもだわ。
しかも、これから大きくなるかわからない。
王女の突き出るような大きな胸や、細くくびれた腰、妖艶な微笑みを思い出す。
何一つ勝てる気がしなかった。
ついこの前まで戦争をしていた相手国に王女だけで来る。
私は、同じ立場になったら、あんな風に堂々とできるだろうか。
とても無理だ。敵国に行くことすら怖くて出来ない。

まだ寝る時間では無かったけど、何もする気になれず、
湯あみをして寝台にもぐりこんだ。
いつもならジルを待つけど、いつ帰ってくるのかもわからないし、
今はジルの顔を見たくなかった。





「兄上、あれは王女ではありませんね。」

「そうだろうな。」

謁見室に戻り人払いして、兄上と今後の話をする。
思ったよりも深刻な状況になりそうだった。
ルヴィに気が付かれないうちに、解決できればいいのだが。

「刺客だと思った方が良さそうです。
 ねらいは兄上と俺とルヴィですね。
 影を増やしておきましょう。特にルヴィに。」

「ああ、王子が留学してきたときからつけていたが、
 もう少し増やした方が良いな。」

「あと、念のため、王子にも影をつけておいてください。」

「王子に?今つけている以上か?」

怪訝そうな顔で聞き返される。

「ええ。一応こちらで預かっている身。
 あの王女に殺されるようなことがあれば、三国での戦争になりかねません。

 それに、あと少しで留学が終わります。
 このままあきらめて帰るような王子ではない気がします。
 ルヴィの安全を強固なものにしたい。」

「そうだな…しかし、そうすると警備が手薄になるところも出てくるな。
 どこかでほころびがでなければいいのだが。」

影にできる人員には限りがある。
無尽に増えていくわけではない。それは知っている。
それでも、今回はこうするしかないように思えた。

「外宮を閉鎖して人員をまわしましょう。
 貴族の出入りを一時的に止めます。
 理由は他国の王族が多数滞在しているため、ということで。」

「あぁ、わかった。配置はお前に任す。」

「わかりました。」

謁見室を出て、執務室に入る。
待っていたらしい文官に指示を出し、外宮に向かう。
外宮で文官室に行き、外宮を止める指示を出した。
急に貴族の動きを止めることになって明日は揉めるかもしれないが、
それは無理やりでもやってもらうしかないな。
全ての指示を出し終えて王弟の宮に戻った時には、すでにルヴィは夢の中で。
ルヴィの態度の変化に気が付けなかった俺は、
何も考えずにルヴィの隣で眠りについた。
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