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11.私のお姉様(ブランカ)
新しいおうちに行くわよって言われて、お父様とお母様と一緒に馬車に乗った。
着いたところはとても大きい屋敷で、敷地の中に入る手前で馬車が止まった。
「……?どうして中に入らないんだ?」
「すみません!どうしても中に入れません。
あ、使用人が出てきました!聞いてみます!」
「……忌々しい。精霊の力ってやつか」
いつもニコニコしている優しいお父様の顔が怖い。
何か良くないことでもあったのかな。
馬車の窓から屋敷をながめていたら、なんとなく見覚えがあるような気がした。
「お母様、ここはどこ?私、なんだか見たことある気がする」
「あら、覚えているの?あの時はまだ二歳半くらいだったと思うのに」
「ここに来たことあるの?」
「ええ、一度ね。大事なものを返してもらおうと思って、ここに来たの。
やっと、やっとだわ。これで全部が私のものになるのね」
最後のほうはお母様が自分に言い聞かせているみたいで、何を言っているのかわからなかった。
でも、私がもっと小さい時にこの屋敷に来たことがあるのはわかった。
「今日からここに住むんでしょう?」
「そうよ。……ここにはね、あなたのお姉様がいるのよ」
「え?お姉様?」
「そう。一人で住んでいるの。さみしいわよね」
「どうして一人で住んでいるの?私たちと一緒に住めばいいのに。
一人ぼっちでいるのはかわいそうだわ!」
「ええ。そうよね。だから、仲良くしてあげるのよ?」
「うん!わかった!」
今まで私にお姉様がいるなんて知らなかった!
ずっとお友達にお姉様という素敵な存在がいるって自慢されてて面白くなかった。
商会のミラちゃんには優しいお姉様がいるからうらやましいでしょう?って。
ミラちゃんだけズルいって思ってたんだ。これで私もみんなに自慢できる!
しばらくしてようやく馬車は動き出した。
敷地内に入るとすぐに止まり、馬車から降ろされる。
ん?こんなにすぐに降りるならさっき降りちゃっても良かったんじゃないの?
そう思ってたら、遠くから人が歩いてくるのがわかった。
使用人たちと一緒にこっちに向かってくる姿を見て、最初はお人形さんかと思った。
さらさらな銀の髪に綺麗な紫の目。
化粧しているわけでもないのに真っ白な肌に赤いくちびる。
この人がお姉様?こんな素敵な人がお姉様なら、みんながうらやましがるはず!
そう思ったのに、お姉様はお父様と少し話すとどこかに行ってしまった。
機嫌の悪いお父様とお母様。話しかけられない雰囲気にだまって後ろをついていく。
大きな屋敷の中に入っても二人とも機嫌は悪いままで、
案内された部屋で一人にされてどうしていいかわからなくなる。
「ねぇ、お姉様はどこにいったの?」
「……お姉様、ですか?」
「さっきいたでしょう?」
「あぁ、エルヴィラ様ですか。お部屋にお戻りになったと思います」
「じゃあ、案内して!」
「……無理です」
「どうしてよ!使えないわね!使用人のくせに!」
今まで住んでいたところにも使用人がいっぱいいた。
私とお母様が言うことは絶対で、こんな風に断られたことはない。
こんな使えない使用人はお父様に言って追いだしてもらおう。
そう思ったのに、それから一か月が過ぎても使用人の顔触れは変わらなかった。
腹が立ってお母様に何とかしてもらおうと部屋に行ったら、
ちょうどお母様が執事に文句を言っているところだった。
部屋に入る前に怒鳴り声が聞こえてくる。
「ねぇ、どうして仕立て屋を呼んでくれないの?」
「公爵家の敷地内には、エルヴィラ様が許可しない限り人を入れることはできません」
「じゃあ、許可するように伝えて」
「お断りいたします。あなた方はあくまで客人であって公爵家の人間ではありません。
公爵家の名前を使って人を呼ぶことも、公爵家で支払いすることもありません。
何か買い物があるのであれば、エミール様の個人資産で支払ってもらってください」
「どうしてエミールが公爵家のお金を使えないのよ!」
「エミール様も公爵家の人間ではありませんので。では、失礼いたします」
……お母様も断られている?
どうしてこの屋敷の使用人は私とお母様の言うことを聞かないんだろう。
「……お母様、どうしたの?」
「あら、ブランカ。なんでもないわ」
「そう?……ねぇ、お母様。この屋敷つまんないわ。
前の屋敷のほうが良かった」
「そうねぇ……これほどまで意地悪されるなんて思わなかったわね」
「え?意地悪?これは誰のせいなの?」
この屋敷の使用人が冷たかったのは誰かの意地悪のせいだった?
それならわかる。私とお母様は何も悪くないもの。
絵本でも主人公の女の子は虐められるの。性格の悪い人に嫌われただけで。
この屋敷にもきっとそんな性格の悪い人がいるんだ。
「全部、あなたのお姉様のせいよ。
……そうねぇ。ブランカが仲良くなれば意地悪しなくなるかもしれないわ」
「え?お姉様が意地悪なの?」
びっくりした。あんなに綺麗なのに、性格は悪いの?
どうして妹なのに会ってくれないのかと思ってたけど、性格が悪いからだったんだ。
……自慢できるお姉様だと思ったのに、がっかりだわ。
「あのね……あのお姉様はいつもひとりぼっちなの。
だから拗ねてひがんで幸せなブランカが憎いのね。
でも、あなたが心を開いて仲良くなれば、きっと意地悪をやめてくれると思うわ」
「……ひとりぼっち。かわいそう、お姉様。
わかったわ!私、お姉様に会ってくる!」
着いたところはとても大きい屋敷で、敷地の中に入る手前で馬車が止まった。
「……?どうして中に入らないんだ?」
「すみません!どうしても中に入れません。
あ、使用人が出てきました!聞いてみます!」
「……忌々しい。精霊の力ってやつか」
いつもニコニコしている優しいお父様の顔が怖い。
何か良くないことでもあったのかな。
馬車の窓から屋敷をながめていたら、なんとなく見覚えがあるような気がした。
「お母様、ここはどこ?私、なんだか見たことある気がする」
「あら、覚えているの?あの時はまだ二歳半くらいだったと思うのに」
「ここに来たことあるの?」
「ええ、一度ね。大事なものを返してもらおうと思って、ここに来たの。
やっと、やっとだわ。これで全部が私のものになるのね」
最後のほうはお母様が自分に言い聞かせているみたいで、何を言っているのかわからなかった。
でも、私がもっと小さい時にこの屋敷に来たことがあるのはわかった。
「今日からここに住むんでしょう?」
「そうよ。……ここにはね、あなたのお姉様がいるのよ」
「え?お姉様?」
「そう。一人で住んでいるの。さみしいわよね」
「どうして一人で住んでいるの?私たちと一緒に住めばいいのに。
一人ぼっちでいるのはかわいそうだわ!」
「ええ。そうよね。だから、仲良くしてあげるのよ?」
「うん!わかった!」
今まで私にお姉様がいるなんて知らなかった!
ずっとお友達にお姉様という素敵な存在がいるって自慢されてて面白くなかった。
商会のミラちゃんには優しいお姉様がいるからうらやましいでしょう?って。
ミラちゃんだけズルいって思ってたんだ。これで私もみんなに自慢できる!
しばらくしてようやく馬車は動き出した。
敷地内に入るとすぐに止まり、馬車から降ろされる。
ん?こんなにすぐに降りるならさっき降りちゃっても良かったんじゃないの?
そう思ってたら、遠くから人が歩いてくるのがわかった。
使用人たちと一緒にこっちに向かってくる姿を見て、最初はお人形さんかと思った。
さらさらな銀の髪に綺麗な紫の目。
化粧しているわけでもないのに真っ白な肌に赤いくちびる。
この人がお姉様?こんな素敵な人がお姉様なら、みんながうらやましがるはず!
そう思ったのに、お姉様はお父様と少し話すとどこかに行ってしまった。
機嫌の悪いお父様とお母様。話しかけられない雰囲気にだまって後ろをついていく。
大きな屋敷の中に入っても二人とも機嫌は悪いままで、
案内された部屋で一人にされてどうしていいかわからなくなる。
「ねぇ、お姉様はどこにいったの?」
「……お姉様、ですか?」
「さっきいたでしょう?」
「あぁ、エルヴィラ様ですか。お部屋にお戻りになったと思います」
「じゃあ、案内して!」
「……無理です」
「どうしてよ!使えないわね!使用人のくせに!」
今まで住んでいたところにも使用人がいっぱいいた。
私とお母様が言うことは絶対で、こんな風に断られたことはない。
こんな使えない使用人はお父様に言って追いだしてもらおう。
そう思ったのに、それから一か月が過ぎても使用人の顔触れは変わらなかった。
腹が立ってお母様に何とかしてもらおうと部屋に行ったら、
ちょうどお母様が執事に文句を言っているところだった。
部屋に入る前に怒鳴り声が聞こえてくる。
「ねぇ、どうして仕立て屋を呼んでくれないの?」
「公爵家の敷地内には、エルヴィラ様が許可しない限り人を入れることはできません」
「じゃあ、許可するように伝えて」
「お断りいたします。あなた方はあくまで客人であって公爵家の人間ではありません。
公爵家の名前を使って人を呼ぶことも、公爵家で支払いすることもありません。
何か買い物があるのであれば、エミール様の個人資産で支払ってもらってください」
「どうしてエミールが公爵家のお金を使えないのよ!」
「エミール様も公爵家の人間ではありませんので。では、失礼いたします」
……お母様も断られている?
どうしてこの屋敷の使用人は私とお母様の言うことを聞かないんだろう。
「……お母様、どうしたの?」
「あら、ブランカ。なんでもないわ」
「そう?……ねぇ、お母様。この屋敷つまんないわ。
前の屋敷のほうが良かった」
「そうねぇ……これほどまで意地悪されるなんて思わなかったわね」
「え?意地悪?これは誰のせいなの?」
この屋敷の使用人が冷たかったのは誰かの意地悪のせいだった?
それならわかる。私とお母様は何も悪くないもの。
絵本でも主人公の女の子は虐められるの。性格の悪い人に嫌われただけで。
この屋敷にもきっとそんな性格の悪い人がいるんだ。
「全部、あなたのお姉様のせいよ。
……そうねぇ。ブランカが仲良くなれば意地悪しなくなるかもしれないわ」
「え?お姉様が意地悪なの?」
びっくりした。あんなに綺麗なのに、性格は悪いの?
どうして妹なのに会ってくれないのかと思ってたけど、性格が悪いからだったんだ。
……自慢できるお姉様だと思ったのに、がっかりだわ。
「あのね……あのお姉様はいつもひとりぼっちなの。
だから拗ねてひがんで幸せなブランカが憎いのね。
でも、あなたが心を開いて仲良くなれば、きっと意地悪をやめてくれると思うわ」
「……ひとりぼっち。かわいそう、お姉様。
わかったわ!私、お姉様に会ってくる!」
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