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6.王宮にて
レオンからの求婚を受け入れた後、うれしい気持ちでいっぱいだったけれど、
妃になるためには乗り越えなくてはいけない問題がいくつがある。
それはレオンもわかっているらしい。
そんな不安そうな顔をするなと髪をなでられる。
「とりあえず、ペルラン公爵家にはルシールは治療中だと伝えてある。
死にかけるほどの傷だったのだから、十日は動かせないと」
「まぁ、それはそうよね。実際にはどのくらいで動けるようになるの?」
「俺の血で治療したから、もう少し早いと思う。
五日もあれば多少動けるようになるんじゃないかな」
「五日……わかったわ」
龍人の血を使ってもそれだけ回復に時間がかかるなんて。
ルシールが薬のせいで力が弱まっていなかったら即死だったかもしれない。
おそらく火の属性の影響で衝動的な行動をしていたのだと思うけれど、
あのまま死んでしまわなくてよかった。
「ルシールを妃にするのは決定だが、ペルラン公爵家の次女というのが問題だな」
「私もそう思うわ。あの家の娘として妃になるなんて嫌よ」
「それなんだが、ペルラン公爵家に次女なんていなかったはずだ。
なのに急に婚約者候補になんて言い出すから怪しんでいたんだ」
さっきまでの私はほとんど何も知らされていない状態で王宮に連れて来られていた。
だが、筆頭公爵家の娘として育てられたリアーヌの記憶を思い出した今なら、
何が起きていたのか理解できる。
「私の母は隣国アンペールの元第三王女よ」
「はぁ?……第三王女って、公爵家に降嫁したんじゃ」
「そう。ジョアン公爵夫人との不貞行為によって生まれたのが私、
ルシール・ジョアンよ」
「不貞行為?よりにもよって、元王女とだと?
……あの男は戦争でも起こしたいのか?」
レオンが怒るのも仕方ない。
アンペール国との関係は良くも悪くもない。
アンペール国は魔石の原料となる鉱石が採れる。
そして、この国レヴェルは魔石や魔道具を作り出している。
お互いにいなくなっては困る国だが、その分利益をめぐっての争いも多い。
もしペルラン公爵がジョアン公爵夫人を寝取ったなどと知られてしまったら。
向こうの王家が何を言ってくるかわからない。
「つい最近まで隠されて育ったから、ジョアン公爵は私のことを知らなかったの。
でも、ジョアン公爵はお母様とは白い結婚で、別に恋人がいたのよ。
そちらが産んだ子を公爵家の子どもとして育てているって」
「降嫁した王女にそんな真似して大丈夫なのか?」
「赤髪の女は不吉という迷信のせいで嫌われていたみたい。
いつからお母様がペルラン公爵と通じていたのかはわからないけれど、
その結果、生まれた私は隠されて育てられていたの」
「よく十年も隠せていたな」
「先日、お母様が亡くなって、乳母も隠し切れなくなったみたい。
ジョアン公爵に連絡がいき、ペルラン公爵にも連絡がされたみたい。
それで、私はペルラン公爵に引き取られることになったの」
私の戸籍がどうなっているのかはわからない。
ペルラン公爵が愛人の子を引き取ったことにでもしたのだろうか。
庶子を養子にすることはめずらしくない。
「……ペルラン公爵はルシールのことを知っていたのか?」
「わからない。でも、レオンの正妃にするために引き取ったって言われたわ」
引き取られるとき、無理やりだったことから義父との関係は最悪だったが、
記憶を思い出した結果、もっと嫌いになっている。
「実は、アンペール国との同盟の条件で、
俺の正妃はアンペール国の王家の血をひくものを選ぶと決められている」
「ええ?何、その条件」
「父上がそういう条件にしたんだ。わざと」
「わざと?」
「……俺がリアーヌ以外と結婚したくないと言ったから、時間稼ぎのために。
同盟を結んだのは十年前。アンペールに俺の年齢にあう王族はいなかった。
元王族の娘でも五歳以下だったから、正妃を選ぶまで猶予ができるはずだと」
「ノヴェル国の貴族は文句言わなかったの?」
「父上が黙らせた。その条件のおかげで鉱石の関税がなくなったから」
「それはすごいことね」
アンペールは他に産業がないから鉱石に高い関税をかけていた。
それがなくなればかなり安価に手に入れられることになる。
それほどの好条件なら貴族も文句が言いにくいかもしれない。
「だから、ちょうどいいと思ってルシールを引き取ったんだろう。
ルシールならアンペール国の王家の血を引いている」
「あ……本当ね」
「俺としてはその同盟を撤廃してでもルシールを正妃にするつもりだったが、
撤廃することなく正妃にすることができそうだ」
「……それをペルラン公爵の功績にするのは嫌なんだけど」
「俺も嫌だ。それはどうするかこれから考えよう」
まだ話をしたいのに、目が開かなくなる。
「回復していないんだ。無理に起きようとしなくていい」
「でも……離れたくない」
「大丈夫、俺はここにいる」
「……うん」
つないでくれた手から温かさを感じる。
レオンがここにいてくれる、そう思ったら安心して眠りに落ちた。
妃になるためには乗り越えなくてはいけない問題がいくつがある。
それはレオンもわかっているらしい。
そんな不安そうな顔をするなと髪をなでられる。
「とりあえず、ペルラン公爵家にはルシールは治療中だと伝えてある。
死にかけるほどの傷だったのだから、十日は動かせないと」
「まぁ、それはそうよね。実際にはどのくらいで動けるようになるの?」
「俺の血で治療したから、もう少し早いと思う。
五日もあれば多少動けるようになるんじゃないかな」
「五日……わかったわ」
龍人の血を使ってもそれだけ回復に時間がかかるなんて。
ルシールが薬のせいで力が弱まっていなかったら即死だったかもしれない。
おそらく火の属性の影響で衝動的な行動をしていたのだと思うけれど、
あのまま死んでしまわなくてよかった。
「ルシールを妃にするのは決定だが、ペルラン公爵家の次女というのが問題だな」
「私もそう思うわ。あの家の娘として妃になるなんて嫌よ」
「それなんだが、ペルラン公爵家に次女なんていなかったはずだ。
なのに急に婚約者候補になんて言い出すから怪しんでいたんだ」
さっきまでの私はほとんど何も知らされていない状態で王宮に連れて来られていた。
だが、筆頭公爵家の娘として育てられたリアーヌの記憶を思い出した今なら、
何が起きていたのか理解できる。
「私の母は隣国アンペールの元第三王女よ」
「はぁ?……第三王女って、公爵家に降嫁したんじゃ」
「そう。ジョアン公爵夫人との不貞行為によって生まれたのが私、
ルシール・ジョアンよ」
「不貞行為?よりにもよって、元王女とだと?
……あの男は戦争でも起こしたいのか?」
レオンが怒るのも仕方ない。
アンペール国との関係は良くも悪くもない。
アンペール国は魔石の原料となる鉱石が採れる。
そして、この国レヴェルは魔石や魔道具を作り出している。
お互いにいなくなっては困る国だが、その分利益をめぐっての争いも多い。
もしペルラン公爵がジョアン公爵夫人を寝取ったなどと知られてしまったら。
向こうの王家が何を言ってくるかわからない。
「つい最近まで隠されて育ったから、ジョアン公爵は私のことを知らなかったの。
でも、ジョアン公爵はお母様とは白い結婚で、別に恋人がいたのよ。
そちらが産んだ子を公爵家の子どもとして育てているって」
「降嫁した王女にそんな真似して大丈夫なのか?」
「赤髪の女は不吉という迷信のせいで嫌われていたみたい。
いつからお母様がペルラン公爵と通じていたのかはわからないけれど、
その結果、生まれた私は隠されて育てられていたの」
「よく十年も隠せていたな」
「先日、お母様が亡くなって、乳母も隠し切れなくなったみたい。
ジョアン公爵に連絡がいき、ペルラン公爵にも連絡がされたみたい。
それで、私はペルラン公爵に引き取られることになったの」
私の戸籍がどうなっているのかはわからない。
ペルラン公爵が愛人の子を引き取ったことにでもしたのだろうか。
庶子を養子にすることはめずらしくない。
「……ペルラン公爵はルシールのことを知っていたのか?」
「わからない。でも、レオンの正妃にするために引き取ったって言われたわ」
引き取られるとき、無理やりだったことから義父との関係は最悪だったが、
記憶を思い出した結果、もっと嫌いになっている。
「実は、アンペール国との同盟の条件で、
俺の正妃はアンペール国の王家の血をひくものを選ぶと決められている」
「ええ?何、その条件」
「父上がそういう条件にしたんだ。わざと」
「わざと?」
「……俺がリアーヌ以外と結婚したくないと言ったから、時間稼ぎのために。
同盟を結んだのは十年前。アンペールに俺の年齢にあう王族はいなかった。
元王族の娘でも五歳以下だったから、正妃を選ぶまで猶予ができるはずだと」
「ノヴェル国の貴族は文句言わなかったの?」
「父上が黙らせた。その条件のおかげで鉱石の関税がなくなったから」
「それはすごいことね」
アンペールは他に産業がないから鉱石に高い関税をかけていた。
それがなくなればかなり安価に手に入れられることになる。
それほどの好条件なら貴族も文句が言いにくいかもしれない。
「だから、ちょうどいいと思ってルシールを引き取ったんだろう。
ルシールならアンペール国の王家の血を引いている」
「あ……本当ね」
「俺としてはその同盟を撤廃してでもルシールを正妃にするつもりだったが、
撤廃することなく正妃にすることができそうだ」
「……それをペルラン公爵の功績にするのは嫌なんだけど」
「俺も嫌だ。それはどうするかこれから考えよう」
まだ話をしたいのに、目が開かなくなる。
「回復していないんだ。無理に起きようとしなくていい」
「でも……離れたくない」
「大丈夫、俺はここにいる」
「……うん」
つないでくれた手から温かさを感じる。
レオンがここにいてくれる、そう思ったら安心して眠りに落ちた。
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