王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)

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22.回想 学園時代 ジョエル

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「隣国の王太子が来るって?」

「そうなんだ。明日から来るから、リリーたちにも手伝ってもらうよ?
 なんだか兄さんと相性悪いらしくてさ。
 4学年じゃなくて、俺らがいる3学年のほうがいいって。」

隣国の王太子が留学してくることになり、
本来なら同じ王太子の第一王子の学年に入るはずが、
いろいろ事情があって変更になったらしい。
レオや私たちと一緒の学年に通うことになったそうだ。
次の日に挨拶させてもらった王太子はとても変わっていた。

「やぁ、君が噂のリリーアンヌ嬢だね。初めまして。
 ジョエル・ロードンナだ。
 ロードンナ国の第一王子だけど、気にしないで?
 ジョエルって呼んでよ!」

年齢は一つ上だが、レオよりも少し身長が低く、ほっそりとした身体だった。
青みががった銀髪を一つに結び、少し丸い黒目が幼なさを感じさせた。
にっこり笑って自己紹介すると、シオンに向かっていく。

「おおおお!おっきいね!何食べたらこんなに大きくなるの!?
 教えてよ。僕、もっと大きくなりたいんだよね。
 レオルド王子くらいになりたいんだよ~。」

「え?いや、特に変わったものは食べてないぞ?
 同じもの食べてるシーナはこんなだし。」

「ひどい!こんな、って何よ~。」

レオは頭抱えてたけど、私は笑ってしまって、思わず答えてしまった。

「この子たちが食べてるものは普通よ。私が作ってるんだもの。」

「ええ!?何それ!リリーアンヌ嬢は料理もできるのか?
 すごいな。魔術師でもあるんだろう?」

「あーリリー。隠さなくて良かったのか?こいつうるさいぞ?」

「ごめんなさい。隠すつもりだったんだけど、つい言ってしまって…。」

「うん、気持ちはわかる。なんでかこいつだと言っちゃうんだよな…。」

きょとんとしたジョエルの顔を見てると、悪気が無いのはわかる。
王太子としてどうなのかな~と思ってると、急に真面目な顔になった。

「こんなのが王太子で大丈夫なのかと思っているんだろう?
 その辺は大丈夫だよ。自分で言うのもなんだけど、僕は優秀なんだ。
 だけど優秀過ぎて、本国では友人と呼べる人を作れなくなってしまった。」

凛とした態度、理性的な話し方、急に大人びたジョエルに驚いてしまう。
さすが王太子というべきなのだろうか。
だが、あまりの急な変化についていけない。

「だから、留学をお願いしたんだ。
 王太子じゃなくて僕を見てくれる友人が欲しくて。
 だけど、第一王子は将来国王同士として付き合うことになるだろう?
 それに性格もあまり合わないと感じてね…。
 僕は素のままで友人になってくれる人が欲しかった。

 レオルド王子たちならと思ったんだが…ダメだろうか?」

最後の一言で急に弱気になったジョエルに、また笑ってしまった。

「こら、リリー。笑っちゃダメでしょ。シーナも。」

「だって…なんだかレオを思い出しちゃって。」

「私もですぅ~。」

「あぁ、もう。思い出さなくていいよ、それは!
 ジョエル、でいいな?呼び方は。
 俺はレオでいいよ。」

「え?いいの?」

「私もリリーで良いわ。」

「俺はシオンだ。よろしくな。」「シーナです。よろしくお願いします~。」

こんなにあっさり受け入れてもらえると思わなかったのだろう。
涙目になってレオの手を握り締め、振り回した。

「ありがとう!ありがとう!」

こうしてジョエルは留学中の間を一緒に過ごすようになった。
もう一人のかけがえのない友人として。




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