王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)

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5章 失われた記憶

7.バルの仕事

どこからかわからないが、バルが魔術師だということがバレたらしい。
特にギルトに届けなければいけない規定はないし、
この国に来てから魔術師として働いたことも無い。
罰せられるわけではないので、特に困らないだろうと思っていたのだが、
バル指名でギルドに仕事の依頼が届くようになってしまっていた。
もちろん登録していないので、仕事を受けなければいけない理由は無い。
だけど、指名してきたのが貴族となると話は別だった。
断ってしまって機嫌をそこねてしまうと、薬店が潰されてしまう可能性が高かった。
この薬屋は、私を拾ってくれた魔女の師匠が作った店らしい。
二人とも旅に出ているだけで、いつか戻ってくると言っていた。
私が勝手にお店を潰してしまうわけにはいかなかった。


「…一度だけ仕事を受けるのを条件に、今後は受けないと説明してくる。」

どうしても嫌なら、お店を潰される前に閉めてしまって、どこかに行くことも考えた。
だけどバルは身重の私が旅に出ることに反対した。
産んで落ち着くまではこの街にいたほうがいいだろうと。

こうして、最初で最後の依頼を受けに行ったバルが引き受けたのは、
この街の領主を王都まで護衛する任務だった。
水を出せて攻撃魔術も使える魔術師は貴重なんだそうだ。
だから以前も護衛任務が多かったと聞いて、そういうものなんだと思った。
王都へ馬車を何台も引き連れての移動になるため、行き帰りだけでも10日かかる。
王都で婿探しをするために王都での夜会に出席するそうなので、
戻ってくるまでに二週間はかかると言われた。

お腹の子は安定しているし、産まれるまではまだ二か月以上ある。
大人しく待っているからと約束してバルを見送った。

「帰ってきたらギルドには一切仕事を受けないって約束させたから。
 レン、ララ、エミリとお腹の子を頼んだよ。
 なるべく急いで帰ってくるから。」

バルは出かけるぎりぎりの時間まで抱きしめていてくれた。
その腕から離れて見送るのはやっぱりさみしかった。







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