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6章 つながる世界
2.執着
「わかったら、問題が大きくなる前に去れ。」
見かねたのだろう。
ケニーの友人と思われる令息たちが二人、ケニーを抱えるように連れて行った。
ケニーはもう意識を失いかけ、一人で歩けるような状況じゃなかった。
ばたばたと教室から出ていくのを見届け、ふうっとため息をついた。
「最近静かになったと思ったのにね~。」
「ああ、久しぶりだったな。エリザ教のお誘い。」
「あいかわらずリオルに執着してんだな~。こわっ。」
「まぁ、大きな問題おこさないうちは、
こうやって一人ずつ切り離していくしかないか。
あーめんどくさいな。父上も丸投げするのやめてほしい。」
「仕方ないだろう、リオルはまだ王族なんだし。」
「俺は早く15になって放棄したくて仕方ない。」
「あー、はいはい。お疲れ。帰ろうぜ。」
そうだなと三人で帰り支度をして、そのまま転移してマジックハウスへと帰る。
マジックハウスでは妹のレミリアがシオンと本を読んでいるところだった。
レミリアも13歳で学園に通っているはずなのに、もうすでに部屋着に着替えシオンのひざの上に乗っている。
レミリアがシオンのひざの上に乗っているのはいつものことなので、それには誰も何も言わない。
「なんだ、レミリアは先に帰ってたのか。」
「おかえりなさい、お兄様、ジーン、ブラン。」
「「「ただいま。」」」
「お兄様たちの教室に行こうかと思ったけど、からまれてそうだったからやめたの。
またエリザ教の人?」
「今日はおとなしいほうだったよ。ジーンとブランに言われて黙ってたから。」
「あら、そうなんだ。つまらないの~。」
「俺はその方がいいよ。めんどくさいから。」
「早くあきらめればいいのにね。」
エリザからの誘いは学園に入学した当初からあった。
何が目的なのかはわからないが、エリザは学生はいろんな立場のものと交流するべきという理論を掲げて、サロンに人を呼んでいる。それだけなら困らないのだが、なぜか度々俺を誘いに来る。
見た目は深窓の令嬢を装っているが、その本性がわかる俺は一度も相手にしていない。
エリザに毒されていない普通の令息令嬢たちは、俺がエリザと交流するわけにはいかないことをよくわかっている。
そのため、どれだけ断ろうと、どれだけ冷たくしようと、俺の評判に変わりはなかった。
俺としては別に評判が落ちても良いと思ってやっていたこともあるのだが。
父上がジョセフィーヌ王女が話を聞かない人だったって言ってたけど、エリザもそのタイプなのかもしれない。
俺にはそれ以外にも避けたい理由があるのだが、公表することは出来ず、ただエリザを見ると殺意がわくのでそばに行きたいとはどうしても思えなかった。
「母さん、今日のご飯は何~?」
「今日は姫様が作るって言ってたから、美味しいと思うわ~。」
「「うわ、やった。」」
俺とレミリアが話しているうちにシーナが戻って来ていた。ジーンとブランはシーナの双子の息子で、本当は一つ年下なのだが、俺の従者兼側近でもあるので、俺と同じ学年で通っている。
俺とジーンとブラン、妹のレミリアも、このマジックハウスで生まれ、魔女の森で育っている。4人が魔術師になるのは自然なことだった。この森から出るだけでも転移しなければいけないのだから。
父上と母上は公爵家と王族の仕事があるため、日中は王宮か公爵領にいる。
仕事が終わってこのマジックハウスに帰ってきて、母上が時間があれば母上が食事を作る。母上がいなければ、マジックハウスにいる全員で食事を作るのがルールだった。
俺が生まれてすぐ王族にはなったが、15歳になったら放棄することが決まっている。
父上と母上も貴族というよりも魔術師として生きている方があっていると思うらしく、俺たちも学園から卒業すれば自由に生きていいことになっている。
レミリアは学園を卒業したらシオンと結婚すると言っている。一応王族なのにとは思うのだが、生まれてからずっとレミリアはシオンから離れない。魂の番というものらしい。魔女が言うには出会ってしまったら、もう離れてはいけない存在なんだそうだ。
そのため、レミリアはその立場を公にされていない。王位継承権を持たせてしまうと、政略結婚の申込みが後を絶たないことが予想されたためだ。
同じ学園に通っている間は、レミリアは俺の妹ではなく、ジーンとブランの妹ということになっている。
まぁ、ジーンとブランから見ても妹のようにしか思っていないだろうから、どちらでもいいのだが。
「とりあえず、今日のことも報告しておいてよ。今日の担当はどっち?」
「今日は俺~。」
「じゃあ、ブランよろしくね。」
「はいよ~。タイハール伯爵家のケニーね。連絡しとくよ。」
「あら、リオル様、またですか?」
「うん、久しぶりだったよ。まぁ、すぐあきらめたから問題ないけどね。
そろそろ15歳になるから、あっちも焦ってるのかもしれないけど。」
「結婚できる歳になりますしね。何もなく放棄できるといいんですけどね~。」
「誕生日の翌日には顔出すって、宰相に言っておいて?
放棄の手続きよろしくって。」
「わかりました~言っておきます。」
シーナが入れてくれたお茶を飲みながら、その辺の本棚から魔術書を取り出す。いくら読んでもこの本棚の本は読み終わらない。どれだけ世界中から魔術書を集めたんだろうと思う。いくら母上が喜ぶからって、父上はやりすぎだと思う。
だけど、そんな風に思ってしまう気持ちも最近はわからなくもなかった。
見かねたのだろう。
ケニーの友人と思われる令息たちが二人、ケニーを抱えるように連れて行った。
ケニーはもう意識を失いかけ、一人で歩けるような状況じゃなかった。
ばたばたと教室から出ていくのを見届け、ふうっとため息をついた。
「最近静かになったと思ったのにね~。」
「ああ、久しぶりだったな。エリザ教のお誘い。」
「あいかわらずリオルに執着してんだな~。こわっ。」
「まぁ、大きな問題おこさないうちは、
こうやって一人ずつ切り離していくしかないか。
あーめんどくさいな。父上も丸投げするのやめてほしい。」
「仕方ないだろう、リオルはまだ王族なんだし。」
「俺は早く15になって放棄したくて仕方ない。」
「あー、はいはい。お疲れ。帰ろうぜ。」
そうだなと三人で帰り支度をして、そのまま転移してマジックハウスへと帰る。
マジックハウスでは妹のレミリアがシオンと本を読んでいるところだった。
レミリアも13歳で学園に通っているはずなのに、もうすでに部屋着に着替えシオンのひざの上に乗っている。
レミリアがシオンのひざの上に乗っているのはいつものことなので、それには誰も何も言わない。
「なんだ、レミリアは先に帰ってたのか。」
「おかえりなさい、お兄様、ジーン、ブラン。」
「「「ただいま。」」」
「お兄様たちの教室に行こうかと思ったけど、からまれてそうだったからやめたの。
またエリザ教の人?」
「今日はおとなしいほうだったよ。ジーンとブランに言われて黙ってたから。」
「あら、そうなんだ。つまらないの~。」
「俺はその方がいいよ。めんどくさいから。」
「早くあきらめればいいのにね。」
エリザからの誘いは学園に入学した当初からあった。
何が目的なのかはわからないが、エリザは学生はいろんな立場のものと交流するべきという理論を掲げて、サロンに人を呼んでいる。それだけなら困らないのだが、なぜか度々俺を誘いに来る。
見た目は深窓の令嬢を装っているが、その本性がわかる俺は一度も相手にしていない。
エリザに毒されていない普通の令息令嬢たちは、俺がエリザと交流するわけにはいかないことをよくわかっている。
そのため、どれだけ断ろうと、どれだけ冷たくしようと、俺の評判に変わりはなかった。
俺としては別に評判が落ちても良いと思ってやっていたこともあるのだが。
父上がジョセフィーヌ王女が話を聞かない人だったって言ってたけど、エリザもそのタイプなのかもしれない。
俺にはそれ以外にも避けたい理由があるのだが、公表することは出来ず、ただエリザを見ると殺意がわくのでそばに行きたいとはどうしても思えなかった。
「母さん、今日のご飯は何~?」
「今日は姫様が作るって言ってたから、美味しいと思うわ~。」
「「うわ、やった。」」
俺とレミリアが話しているうちにシーナが戻って来ていた。ジーンとブランはシーナの双子の息子で、本当は一つ年下なのだが、俺の従者兼側近でもあるので、俺と同じ学年で通っている。
俺とジーンとブラン、妹のレミリアも、このマジックハウスで生まれ、魔女の森で育っている。4人が魔術師になるのは自然なことだった。この森から出るだけでも転移しなければいけないのだから。
父上と母上は公爵家と王族の仕事があるため、日中は王宮か公爵領にいる。
仕事が終わってこのマジックハウスに帰ってきて、母上が時間があれば母上が食事を作る。母上がいなければ、マジックハウスにいる全員で食事を作るのがルールだった。
俺が生まれてすぐ王族にはなったが、15歳になったら放棄することが決まっている。
父上と母上も貴族というよりも魔術師として生きている方があっていると思うらしく、俺たちも学園から卒業すれば自由に生きていいことになっている。
レミリアは学園を卒業したらシオンと結婚すると言っている。一応王族なのにとは思うのだが、生まれてからずっとレミリアはシオンから離れない。魂の番というものらしい。魔女が言うには出会ってしまったら、もう離れてはいけない存在なんだそうだ。
そのため、レミリアはその立場を公にされていない。王位継承権を持たせてしまうと、政略結婚の申込みが後を絶たないことが予想されたためだ。
同じ学園に通っている間は、レミリアは俺の妹ではなく、ジーンとブランの妹ということになっている。
まぁ、ジーンとブランから見ても妹のようにしか思っていないだろうから、どちらでもいいのだが。
「とりあえず、今日のことも報告しておいてよ。今日の担当はどっち?」
「今日は俺~。」
「じゃあ、ブランよろしくね。」
「はいよ~。タイハール伯爵家のケニーね。連絡しとくよ。」
「あら、リオル様、またですか?」
「うん、久しぶりだったよ。まぁ、すぐあきらめたから問題ないけどね。
そろそろ15歳になるから、あっちも焦ってるのかもしれないけど。」
「結婚できる歳になりますしね。何もなく放棄できるといいんですけどね~。」
「誕生日の翌日には顔出すって、宰相に言っておいて?
放棄の手続きよろしくって。」
「わかりました~言っておきます。」
シーナが入れてくれたお茶を飲みながら、その辺の本棚から魔術書を取り出す。いくら読んでもこの本棚の本は読み終わらない。どれだけ世界中から魔術書を集めたんだろうと思う。いくら母上が喜ぶからって、父上はやりすぎだと思う。
だけど、そんな風に思ってしまう気持ちも最近はわからなくもなかった。
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