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聖女の世界
2.お互いに
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五日間も眠っていた私のために用意された消化のいい食事を食べ終わった後、
お茶を用意してくれたキリルさんは、私の隣に座った。
そのまま私の頬に手を当て、目を覗き込んでくる。
「体調は良さそうだけど、本当に平気?
何か異変があれば、遠慮しないで言って?」
「体調はむしろ良いです。身体が軽く感じます。
異変は…なんとなく身体が違うという実感があるというか。
でも嫌な感じじゃありません。」
この部屋には鏡が無いから全体の姿はわからないけれど、
自分の目で見た感じだと特に変化はわからなかった。
「うん、それならいい。」
心配そうにのぞき込んでくるキリルさんの顔が近くて、
きっとこれは体調を確認するために必要なことだと思うのに、
キリルさんの目を見ていてると吸い込まれそうな気持ちになる。
ふれられた頬も、少しも嫌じゃなくて驚く。
「ごめんね、また手を握っててもいい?」
「はい。」
頬から手が離れた後、左手を包み込むように握られる。
手をつないでいるだけならともかく、キリルさんの身体との距離が近い。
このままの状態で話をしたら心臓がおかしくなりそうだけれど、
魔力を供給されているのだから仕方ない。
「手をつないでいるの、気になる?
こうしているほうが早く回復するんだ。
でも、嫌だったら離すよ?
近くにいるだけでも少しずつだけど魔力は供給できるから。」
「いえ!そういう理由があるなら大丈夫です。
ただ、こんなふうに魔力って他人に供給するものなんですか?」
キリルさんが動じていないのは、こんな風に魔力を供給するのに慣れているから?
だとしたら、私が舞い上がって恥ずかしくなっているのは痛すぎる。
「普通は他人に魔力を渡すようなことはしないよ?
でも、神の住処で言われたことは覚えている?
俺のことを聖女の導き手って。」
「あぁ、はい。」
「聖女はこの世界のことを何も知らないで来る。
向こうは魔力も瘴気も存在していない世界なんだろう?
俺は聖女のためにある存在。
聖女の身体を回復させて、一緒に魔力を高めて瘴気を消すんだ。
なんて言えばいいかな…聖女のパートナー?
聖女に必要な知識を与え、その身を守るための騎士って感じ?」
「知識はわかりますが、身を守る?」
「うん、聖女の力は瘴気や魔獣には強いけど、戦いが強いわけじゃない。
例えば、人間相手には弱いだろう?
ユウリは戦ったことなんか無いよね?
この世界の人間だって、誰もが平和を願っているものばかりじゃない。
聖女を害して世界を滅ぼしたいと思うものもいるかもしれない。
それに聖女を奪いたいと思うものたちもいる。
結婚相手にするだけじゃなくて、自国に聖女を連れて帰りたいとか。」
「自国に連れて帰る?」
「この国をぐるっと囲むように五国とつながっているんだけど、
他の国には聖女はいないんだ。」
「どうしてこの国にしかいないんですか?」
「それはわかっていないんだよね…。
他の国にも瘴気は発生するのに、聖女はこの国にしか来ない。
おそらく弾かれる魂がこの国のものだからこの国に戻ってくるんだと思うけど、
どうしてこの国の魂だけ弾かれるのかもわからないし…。」
わかっていないことも多いんだ…。
全部キリルさんに聞けばわかるわけじゃないんだ。
「どのくらい聖女って戻ってきたんですか?」
「最初から記録があるわけじゃないから正確なところはわからない。
でも、少なくとも三十人はいた。」
「…三十人。どのくらいの頻度で戻ってくるんですか?」
「一番早くて二十年だった時があるけど、
前回聖女が戻ってきたのは四十年前。
名前はアイ様。聖女として働いた後は結婚して平和に暮らしているよ。」
「そうなんですね…終わったら普通に暮らせるんだ…。」
前の聖女が平和に暮らせていることにほっとする。
最後は生贄になるとか、そういうことは無いみたい。
キリルさんと話していてそんな感じはしなかったけれど、万が一ということもある。
頑張って終わらせたら普通の暮らしが待っている。
そう思ったら頑張れそうな気がしてきた。
「そうだよ、安心した?
ユウリが聖女として生きるのに問題が無いように、
いろんなものからユウリを守るのが俺の役目。わかる?」
「…嫌じゃないんですか?」
どう考えても私はお荷物なんじゃないだろうか。
面倒なことをキリルさんにさせているような気がする。
申し訳なさでいっぱいになるけれど、キリルさんはうれしそうに笑う。
「嫌じゃないよ。ゆっくりわかってもらえればいいと思うけど、
俺はユウリを守りたくて守っているんだ。
だから、これは俺がしたくてしていることだから。
そう思ってくれたらうれしい。」
「…わかりました。これからお願いします。」
「うん、よろしく。」
お茶を用意してくれたキリルさんは、私の隣に座った。
そのまま私の頬に手を当て、目を覗き込んでくる。
「体調は良さそうだけど、本当に平気?
何か異変があれば、遠慮しないで言って?」
「体調はむしろ良いです。身体が軽く感じます。
異変は…なんとなく身体が違うという実感があるというか。
でも嫌な感じじゃありません。」
この部屋には鏡が無いから全体の姿はわからないけれど、
自分の目で見た感じだと特に変化はわからなかった。
「うん、それならいい。」
心配そうにのぞき込んでくるキリルさんの顔が近くて、
きっとこれは体調を確認するために必要なことだと思うのに、
キリルさんの目を見ていてると吸い込まれそうな気持ちになる。
ふれられた頬も、少しも嫌じゃなくて驚く。
「ごめんね、また手を握っててもいい?」
「はい。」
頬から手が離れた後、左手を包み込むように握られる。
手をつないでいるだけならともかく、キリルさんの身体との距離が近い。
このままの状態で話をしたら心臓がおかしくなりそうだけれど、
魔力を供給されているのだから仕方ない。
「手をつないでいるの、気になる?
こうしているほうが早く回復するんだ。
でも、嫌だったら離すよ?
近くにいるだけでも少しずつだけど魔力は供給できるから。」
「いえ!そういう理由があるなら大丈夫です。
ただ、こんなふうに魔力って他人に供給するものなんですか?」
キリルさんが動じていないのは、こんな風に魔力を供給するのに慣れているから?
だとしたら、私が舞い上がって恥ずかしくなっているのは痛すぎる。
「普通は他人に魔力を渡すようなことはしないよ?
でも、神の住処で言われたことは覚えている?
俺のことを聖女の導き手って。」
「あぁ、はい。」
「聖女はこの世界のことを何も知らないで来る。
向こうは魔力も瘴気も存在していない世界なんだろう?
俺は聖女のためにある存在。
聖女の身体を回復させて、一緒に魔力を高めて瘴気を消すんだ。
なんて言えばいいかな…聖女のパートナー?
聖女に必要な知識を与え、その身を守るための騎士って感じ?」
「知識はわかりますが、身を守る?」
「うん、聖女の力は瘴気や魔獣には強いけど、戦いが強いわけじゃない。
例えば、人間相手には弱いだろう?
ユウリは戦ったことなんか無いよね?
この世界の人間だって、誰もが平和を願っているものばかりじゃない。
聖女を害して世界を滅ぼしたいと思うものもいるかもしれない。
それに聖女を奪いたいと思うものたちもいる。
結婚相手にするだけじゃなくて、自国に聖女を連れて帰りたいとか。」
「自国に連れて帰る?」
「この国をぐるっと囲むように五国とつながっているんだけど、
他の国には聖女はいないんだ。」
「どうしてこの国にしかいないんですか?」
「それはわかっていないんだよね…。
他の国にも瘴気は発生するのに、聖女はこの国にしか来ない。
おそらく弾かれる魂がこの国のものだからこの国に戻ってくるんだと思うけど、
どうしてこの国の魂だけ弾かれるのかもわからないし…。」
わかっていないことも多いんだ…。
全部キリルさんに聞けばわかるわけじゃないんだ。
「どのくらい聖女って戻ってきたんですか?」
「最初から記録があるわけじゃないから正確なところはわからない。
でも、少なくとも三十人はいた。」
「…三十人。どのくらいの頻度で戻ってくるんですか?」
「一番早くて二十年だった時があるけど、
前回聖女が戻ってきたのは四十年前。
名前はアイ様。聖女として働いた後は結婚して平和に暮らしているよ。」
「そうなんですね…終わったら普通に暮らせるんだ…。」
前の聖女が平和に暮らせていることにほっとする。
最後は生贄になるとか、そういうことは無いみたい。
キリルさんと話していてそんな感じはしなかったけれど、万が一ということもある。
頑張って終わらせたら普通の暮らしが待っている。
そう思ったら頑張れそうな気がしてきた。
「そうだよ、安心した?
ユウリが聖女として生きるのに問題が無いように、
いろんなものからユウリを守るのが俺の役目。わかる?」
「…嫌じゃないんですか?」
どう考えても私はお荷物なんじゃないだろうか。
面倒なことをキリルさんにさせているような気がする。
申し訳なさでいっぱいになるけれど、キリルさんはうれしそうに笑う。
「嫌じゃないよ。ゆっくりわかってもらえればいいと思うけど、
俺はユウリを守りたくて守っているんだ。
だから、これは俺がしたくてしていることだから。
そう思ってくれたらうれしい。」
「…わかりました。これからお願いします。」
「うん、よろしく。」
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