浮気された聖女は幼馴染との切れない縁をなんとかしたい!

gacchi(がっち)

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聖女の世界

1.聖女の目覚め

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目を開けたら知らない天井だった。
ここはどこ?と慌てたら、ベッドの横から男性が心配そうな顔で見ていた。

このイケメン誰だっけ。見覚えはある…。
そうだ、キリルさんだ。

「…起きた?」

「ん…キリルさん?」

あぁ、そうか…異世界転移しちゃったんだ…。
でも、どうして寝てたんだろう。


「うん、神の住処に行って、眠っちゃったのは覚えてる?」

神の住処…あぁ、そうか。
異世界転移で聖女…で、神の住処だったっけ…。
なんだかもう、どっちが夢の世界なのかわからなくなりそう。
あのまま気を失うように眠ってしまってたんだ。

「…はい。夢じゃなかったんですね。」

なんて言いながら、この世界が夢だとはもう思っていない。
ここに来たことを困っているかというと、そういうわけではない。
あの世界にはほとんど未練がない…美里に会えないのは残念だけど、そのくらいだ。

この世界の魂だったから、あの世界には馴染めなかったのだろうか。
両親との関係も希薄だったし、友人もいなかった。
好きなことも特にないし、将来の夢もなかった。

…あぁ、そうか。
あの世界は私が産まれるべき場所じゃなかったからなのか。
ずっと感じていた違和感はそういうことかと納得していた。


「…実は、あの日から五日たってる。」

「えぇ?」

「身体を作り変えるって言われただろう?
 この世界に馴染むように身体を作り変えるのに、時間がかかるんだ。
 多分、苦しまないように眠らされていたんだと思うけど。
 どう?まだ苦しいとか、おかしいとこある?」

身体を作り変える…あぁ、そう言われてた。
じゃあ、今はもう違う身体になっているんだ。

言われてみたら、身体がものすごく軽く感じる。
五日も寝ていたのに、あちこちが痛むとかそういうことがない。

寝台から起き上がると、さらぁっと髪が流れてきた。
肩までだった髪が腰まで伸びて、
色も薄い栗色だったのがプラチナブロンドになってる。
手の大きさは変わらない?
そこまで変化はないって言ってたから身体の変化はなさそう。

「大丈夫そうです。」

「そう、起き上がれるなら食事にしようと思うけど、着替えようか。」

「え?」

自分の服をよく見たら、さわり心地のいい高級そうなパジャマを着ていた。
…誰が着替えさせてくれたの?まさかキリルさんが?

「…心配しなくても大丈夫だよ。見てて?」

水色のワンピースを手に戻ってきたキリルさんが、笑って私の手を取る。
その次の瞬間、キリルさんの手にはパジャマがあって、
私は水色のワンピースを身につけていた。

「えええ??」

「ここに寝かせた時もこうやって着替えさせたんだ。
 だから、俺が脱がせたとかじゃないから安心して?」

「…これも魔術…ですか?」

なんて便利なんだろうとしみじみ思っていると、
キリルさんの続いた言葉にまた慌てることになる。

「そう。五日間寝たままだけど、お世話も魔術でしてたから、
 身体も綺麗に浄化してあるよ。
 お風呂に入りたかったら、食事の後でゆっくりはいってかまわないけど。」

「あぁぁ…何から何まで…。
 すみません…お世話になりました…。」

気が付かずに五日間も寝ていて、その間はずっとお世話になっていたんだ。
誰かほかの女性に頼んだりはしなかったんだと思いながら、
知り合いでもない女性に面倒を見てもらうくらいなら、
キリルさんでよかったと思う。

友人が少なかったからか、他人とふれあうのは苦手だ。
律と一花とすら、身体を接触するのは避けていた気がする。
手をつなぐことすらなんとなく嫌で…。

キリルさんは会ったばかりだけど、ふれられても嫌じゃない。
今もずっと手を握られているけれど、その手を離そうとは思わなかった。

「ユウリは転移してくるときに力を使い果たしちゃっているんだ。
 五日間でかなり回復したとは思うけど、まだ完全じゃない。

 …俺から魔力を供給しているんだ。
 こうやって手にふれて魔力を流しているんだけどわかる?
 近くにいるだけでも供給できるけど、効率悪くて。
 あまり離れているとユウリの回復が遅れちゃうから。

 だから他の者に任せることもできなくて、俺がそばにいたわけだけど…。
 女性に任せられなくてごめん。」

「え?キリルさんが魔力を供給?
 それって、お世話されているだけじゃなく迷惑かけているんですよね?
 こちらこそ…ごめんなさい。」

ここにいるのがキリルさんだけだったのはそれが理由のようだ。
力を使い果たしたっていうのは、なんとなくわかる。
眠ってしまう寸前、まったく力が入らなかった。
あれが力を使い果たした状態だったんだろう。

何から何までキリルさんにしてもらっていることに申し訳なさしかない。
ぺこりと頭を下げて謝ったら、にっこり笑って頭を撫でられた。

「俺はユウリのためにここにいるんだ。
 気にしないで?
 さぁ、食事にしようか。」

「はい。」

気が付いてみればものすごくお腹が空いてる。
今すぐ何か食べないと気持ち悪くなってしまいそうなくらい。
五日間も何も食べていないのなら、それも当然か。

用意された食事も、軽めのポタージュスープからで、
胃にやさしいものを少しずつゆっくりと出してくれるようだ。


「食事が終えたらちゃんと話をしたいけど、
 先にお風呂入りたい?一応身体は綺麗な状態を保ってたけど。」

「んー。お風呂はあとででいいです。
 まずはこの状況をしっかり把握したいです。」

「うん、じゃあ、話そうか。」




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