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神の力

3.停滞する

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初めての神力へと変化させようとした結果、
神の使いともいえる蛇を生み出してしまったわけだけど、
魔力から神力への変化はつかみかけていた。

だから、すぐに神力を使いこなせると思い込んでいた。

次の日からの修行は思わぬ事態が起きていた。

何度神力に変化させても、腕に絡みついている蛇が吸い込んでしまうのだ。

蛇は絡みついたまま離れないし、無に返すこともできない。
蛇に吸い込まれないように神力を身体の中で循環させればいいのだが、
強い掃除機でもついているのかと思うくらい蛇に吸い込まれてしまう。

「あぁぁ!もう!何度やってもダメ。なんでなの!」

「…困ったなぁ。
 ヘビの扱いなんて説明書には書いてないし、
 今までと全く違う方法で神力に変化させるのも難しいだろうし…。」

思わず弱音を叫んでしまった私に、頭をなでながらキリルがつぶやく。
この蛇の対処はキリルでもわからないらしい。

もう5日も過ぎているのに、何の進展もない。
この先のことも計画できず、完全にストップしてしまっていた。

「…無理に頑張っても仕方ないから、明日は休もう。」

「休んじゃってもいいの?」

「うん。このまま頑張っても無理そうだし、
 明日の午後あたりになればミサトが会えるようになると思うから。
 少しゆっくり話して…それからまた考えよう?」

「美里、会えるようになるんだ。…けっこう時間かかったよね?
 あれから二週間だよ。十日くらいで会えるって最初は言ってたのに。」

「あぁ、うん。どうやら…その辺も相談したいみたいだよ。
 ジェシカから詳しくは聞いてないから、直接ミサトから聞くといい。」

「相談?なんだろう。」



次の日はゆっくり起きて、キリルと一緒にパンケーキを焼いた。
一枚一枚焦がしたバターで薄めに焼いたパンケーキを重ねて、
バニラと苺のアイスを乗せて、その上からメイプルシロップをたっぷりとかけた。

「うわぁ。あまぁ。でも、美味しい!」

「うん、うまい。兄さんたちは嫌がりそうなほど甘いな。」

ふふふと笑いあいながらこれでもかと甘いパンケーキを頬張る。
疲れている気持ちは甘いもので癒すのが一番。
美里に会う時間を告げに来てくれたジェシカさんにもおすすめしたのに、
ものすごく嫌そうな顔で「遠慮するわ」と逃げられてしまった。

「一か月分くらいの甘さを摂取した気分。」

「本当に?じゃあ、甘いお茶はいらない?」

「え!欲しい!」

「ふふ。わかった、待ってて。」

パンケーキよりもお茶よりもキリルの態度のほうが甘いかもしれない。
これでいいのかなって思う時はあるけれど、何も考えたくなかった。

今はキリルに甘えていたい。
聖女としての仕事がちゃんと終わるまで。
離れる時のことを考えたら怖くなるから、今は何も考えずに甘えていたい。

差し出されたお茶を受け取ったら、隣に座るキリルにもたれかかる。
自然に腕の中に抱きかかえられるようにして、甘いお茶を飲んだ。


「さ、これを飲んだら行こうか。」

「うん。」


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