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聖女としての働き
4.神剣
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「おはよう、美里。」
「おはよう!今日から悠里もここなんだね!」
「うん。まだうまく制御できないんだけど、試しにって。
美里は神剣にできた?」
「それがね~うまくいかないんだよね。
神力はわかった気がするんだけど、剣に流れても定着してくれないっていうか。
やっぱり簡単にはいかないみたい。
ちょっと飽き始めてたから、悠里が来てくれてうれしい。
久しぶりにやる気出た。」
「そうなんだ。じゃあ、私もやる気だして頑張ろうかな。」
笑いながら頑張ろうと言っていると、本当にやる気が出てくる。
少し落ち込んでいた気持ちが浮上したのは、美里の力に引き上げられたのかもしれない。
聖女の力が相互に働くというのが、こういう時によくわかる。
美里がいつも作業している場所に一緒に行くと、
少し広い場所にテーブルが置かれていて、上には白い剣が山積みになっていた。
数えきれないほどの剣を見て、美里がうんざりするよね~とつぶやいた。
「え?これ全部に付加するの?」
「……いや、これ一部かな。」
「え?」
「この国でも各領地ごとに送るわけだし、
それだけじゃなく六か国で使うわけだから。
まぁ、作るのは急がないから、量は気にしないで。」
「わかった…見なかったことにする。」
美里とカインさんが剣を一本持って離れていくのを見て、
キリルが剣を持って違う方向へと行く。
手を引かれるままについていくと、
そこは訓練場の端のほうで周りに誰もいなかった。
ここなら静かで集中しやすそうだ。
「ここでいいかな。
剣に神力を付加する手順を説明するよ?
俺とユウリで柄と剣先を掲げるように持つ。
手のひらの上に乗せる感じ。」
「こう?」
キリルが手のひらを上に向けて、その上に剣を乗せているのを見て、
キリルの手のひらのすぐ隣に同じように手を添える。
ひやりとした剣にふれると、キーンと張りつめたような高音が聞こえた気がした。
「剣が反応している。
俺たちの神力に反応しているんだ。いけるかもしれない。
いつものように神力を身体に流して…。
そのまま身体と同じように剣にも流れるようにしてみて。」
「わかった。」
キリルから流れてくる魔力を神力へと変え、剣を中心に8の字に神力を流す。
いつもなら蛇に神力を吸われてしまうタイミングだと感じたその時、
左腕の蛇がしゅるりと動いた。
「え?」
「うわ?」
見たらキリルの腕の蛇も同じように動いている。
左右から交差するように白と青の蛇が剣にまとわりつく。
二重らせんを描いて端まで行き、また戻り、私の腕に蛇が戻った。
「どういうこと?」
「………神剣になっている。」
「え?本当!?」
見たら、真っ白い剣だったはずなのに、青白く光っている。
剣から私たちと同じ神力を感じた。これが付加したということ?
「…成功した。成功したよ!ユウリ、成功しているよ!」
「……ほんとう、に?」
まさかあれほど悩んでいたのに、蛇が神力を付加するとは思わなかった。
できあがった神剣に気が付いたのか、美里とカインさんが近くまで来ていた。
「キリル、できたのか!?」
「あぁ、兄さん、ちょっとこれ持ってて!」
放り投げるように神剣をカインさんに渡すキリルに、私と美里が悲鳴をあげそうになる。
カインさんは特に驚くことなく、剣を受け取ると上に掲げた。
「…これが神剣。」
キリルはそんなカインさんは見もせず、私を抱き上げ、くるくると回り出した。
「ちょ…ちょっと!」
「ユウリ、よかった。
…これでもう、悲しくない。」
その言葉に、キリルが喜んでいたのは神剣ができたからじゃなく、
私がこれでもう役立たずだと落ち込まなくなることだったとわかる。
「キリル…うん。
もう、大丈夫。
ずっと見守ってくれていてありがとう…。」
「そんなのは、いくらでも。」
ゆっくりと私を地面におろし、それでも抱きしめたままのキリルに、
私からも抱き着いて感謝を伝える。
やっと役に立てた。ここにいていいんだ。うれしさがこみあげてくる。
「……ねぇ~もう一回やってみてくれない?」
「おはよう!今日から悠里もここなんだね!」
「うん。まだうまく制御できないんだけど、試しにって。
美里は神剣にできた?」
「それがね~うまくいかないんだよね。
神力はわかった気がするんだけど、剣に流れても定着してくれないっていうか。
やっぱり簡単にはいかないみたい。
ちょっと飽き始めてたから、悠里が来てくれてうれしい。
久しぶりにやる気出た。」
「そうなんだ。じゃあ、私もやる気だして頑張ろうかな。」
笑いながら頑張ろうと言っていると、本当にやる気が出てくる。
少し落ち込んでいた気持ちが浮上したのは、美里の力に引き上げられたのかもしれない。
聖女の力が相互に働くというのが、こういう時によくわかる。
美里がいつも作業している場所に一緒に行くと、
少し広い場所にテーブルが置かれていて、上には白い剣が山積みになっていた。
数えきれないほどの剣を見て、美里がうんざりするよね~とつぶやいた。
「え?これ全部に付加するの?」
「……いや、これ一部かな。」
「え?」
「この国でも各領地ごとに送るわけだし、
それだけじゃなく六か国で使うわけだから。
まぁ、作るのは急がないから、量は気にしないで。」
「わかった…見なかったことにする。」
美里とカインさんが剣を一本持って離れていくのを見て、
キリルが剣を持って違う方向へと行く。
手を引かれるままについていくと、
そこは訓練場の端のほうで周りに誰もいなかった。
ここなら静かで集中しやすそうだ。
「ここでいいかな。
剣に神力を付加する手順を説明するよ?
俺とユウリで柄と剣先を掲げるように持つ。
手のひらの上に乗せる感じ。」
「こう?」
キリルが手のひらを上に向けて、その上に剣を乗せているのを見て、
キリルの手のひらのすぐ隣に同じように手を添える。
ひやりとした剣にふれると、キーンと張りつめたような高音が聞こえた気がした。
「剣が反応している。
俺たちの神力に反応しているんだ。いけるかもしれない。
いつものように神力を身体に流して…。
そのまま身体と同じように剣にも流れるようにしてみて。」
「わかった。」
キリルから流れてくる魔力を神力へと変え、剣を中心に8の字に神力を流す。
いつもなら蛇に神力を吸われてしまうタイミングだと感じたその時、
左腕の蛇がしゅるりと動いた。
「え?」
「うわ?」
見たらキリルの腕の蛇も同じように動いている。
左右から交差するように白と青の蛇が剣にまとわりつく。
二重らせんを描いて端まで行き、また戻り、私の腕に蛇が戻った。
「どういうこと?」
「………神剣になっている。」
「え?本当!?」
見たら、真っ白い剣だったはずなのに、青白く光っている。
剣から私たちと同じ神力を感じた。これが付加したということ?
「…成功した。成功したよ!ユウリ、成功しているよ!」
「……ほんとう、に?」
まさかあれほど悩んでいたのに、蛇が神力を付加するとは思わなかった。
できあがった神剣に気が付いたのか、美里とカインさんが近くまで来ていた。
「キリル、できたのか!?」
「あぁ、兄さん、ちょっとこれ持ってて!」
放り投げるように神剣をカインさんに渡すキリルに、私と美里が悲鳴をあげそうになる。
カインさんは特に驚くことなく、剣を受け取ると上に掲げた。
「…これが神剣。」
キリルはそんなカインさんは見もせず、私を抱き上げ、くるくると回り出した。
「ちょ…ちょっと!」
「ユウリ、よかった。
…これでもう、悲しくない。」
その言葉に、キリルが喜んでいたのは神剣ができたからじゃなく、
私がこれでもう役立たずだと落ち込まなくなることだったとわかる。
「キリル…うん。
もう、大丈夫。
ずっと見守ってくれていてありがとう…。」
「そんなのは、いくらでも。」
ゆっくりと私を地面におろし、それでも抱きしめたままのキリルに、
私からも抱き着いて感謝を伝える。
やっと役に立てた。ここにいていいんだ。うれしさがこみあげてくる。
「……ねぇ~もう一回やってみてくれない?」
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