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聖女としての働き
15.忙しいのに
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本来なら、仕事場を離れ、その間に侵入者を許し、
聖女様をさらわれそうになったのだ。
隊員たちを即座に辞めさせてもいいくらいなものだ。
たまたまキリル兄様が戻ってくるのが間に合ったからいいようなもの、
隊員たちが何も役に立たなかったのだから、
神官宮には必要ないと切り捨てられてもおかしくない。
それなのに、再教育してもらえるだけでもありがたい話だというのに、
不満の声が出るとは情けない。
「狙われているとわかっているのに、安易に聖女様宛の差し入れを受け取る。
罠を仕掛けられているというのに、気が付きもしない。
護衛任務だというのに、勝手に持ち場を離れる。
神官宮の外からの食料は口にしてはいけないというのに差し入れを食べる。
……そして、イチカに同情してしまっているものたちが何人もいる。」
一つずつ問題点を挙げると、隊員たちがうつむいていく。
どれか一つでも重大なミスだというのに。
四十年ぶりの聖女だということのゆるみがここにも影響している。
どれだけ聖女が狙われやすいと聞いていても、実感がないのだ。
今まで訓練だけだった生活から一転、
聖女をお守りするという緊急時に変わったというのに、
まだどこか平和な気分で護衛をしている。
その上、役に立たないどころか害でしかない隊員がいる。
泣きながらユウリ様に会いたいと押しかける少女に、感情移入してしまっている。
どうにかして慰めようと、ユウリ様の話をした者もいれば、
差し入れの菓子は捨てずに隊員で食べようと言い出したもの、
またおいでと声をかけて自分の勤務時間を教えたもの、
イチカが来そうな時間帯に受付に隊員が必要以上に待っていること、
すべてが聖女様にとって害になる行動でしかない。
それを理解せずに領地を回ったとしたら、どれほど危険なことになるか。
「もう一度聖女の説明書を覚えなおしなさい。
期限は三日以内。
それ以降、違反を繰り返すようならば神官宮から排除します。
規定通り神力も封じて追放することになります。」
「「「「…。」」」」
厳しいように聞こえたのかもしれないが、これは神官宮に入るときに契約した内容だ。
隊長の方針に従わない、聖女に危険をさらした等の重大な過失がある場合は、
もう二度と神力を使えないように封じた上で神官宮から追放することになっている。
神官宮の隊員は選ばれるだけでも名誉なことで、
聖女がいる時期に隊員だったとなれば地方では英雄扱いされる。
その代わり、追放されるようなことがあれば身内からも非難されるだろう。
「あら。返事がないわね。わかったの?
本当なら今すぐ辞めさせて、地方の神官宮から補充してもいいのよ?」
「「「「はっ!!」」」」
半ばわかりたくないという顔をしている者もいることにため息がでる。
いつから隊員たちまで毒されてしまったのか。
「あなたたちは見えないでしょうけど、ダニエル王子は寄生されているわ。
きちんと説明したわよね?イチカは寄生するものだと。
あのままだとダニエル王子はダメになるでしょうね。」
さすがにその一言で隊員たちがハッとした顔になる。
イチカがその魅力を発揮できているのは、ダニエル王子の力を吸い取っているからだ。
その危険性くらいは、わざわざ説明しなくてもいいだろう。
「数か月以内には瘴気の一報が入るでしょう。
その時に足を引っ張るような隊員がいないことを願います。」
「「「「はっ!」」」」
少しは深刻に話を受け止めてくれたのか、隊員の顔つきが変わった気がする。
またきちんと教育されているか確認しなければならないだろうが、
ほとんどの隊員は考えを改めたのではないだろうか。
ユウリ様の誘拐未遂が発覚した後、キリル兄様の怒りようはすさまじかった。
そのままの勢いで隊員たちに怒鳴りつけたらまずいと、カイン兄様に呼び出された。
「忙しい時期なのはわかるが、隊員たちの再教育を頼む。」と。
学園の卒業生として、というよりも学園会の会長としての仕事と引き継ぎ、
その上…結婚式を延期することによる雑多な手続き。
学園を卒業したら本当はすぐに結婚する予定だったが、
神官宮の仕事を引き受けたことにより結婚式は延期となった。
籍だけは先に入れるので、公爵家の仕事は婚約者に任せる予定ではあるけれど、
ここでまた増えた余計な仕事で心配事は増えていくばかりだ。
最近は婚約者と顔を合わせても、すぐに呼び出されてしまう。
そういうことで文句を言う人ではないけれど、さすがに申し訳なくなってきた。
「…本当に大丈夫かしら。」
聖女の部屋へと報告に上がる前にため息をついて、気持ちを切り替えた。
聖女様をさらわれそうになったのだ。
隊員たちを即座に辞めさせてもいいくらいなものだ。
たまたまキリル兄様が戻ってくるのが間に合ったからいいようなもの、
隊員たちが何も役に立たなかったのだから、
神官宮には必要ないと切り捨てられてもおかしくない。
それなのに、再教育してもらえるだけでもありがたい話だというのに、
不満の声が出るとは情けない。
「狙われているとわかっているのに、安易に聖女様宛の差し入れを受け取る。
罠を仕掛けられているというのに、気が付きもしない。
護衛任務だというのに、勝手に持ち場を離れる。
神官宮の外からの食料は口にしてはいけないというのに差し入れを食べる。
……そして、イチカに同情してしまっているものたちが何人もいる。」
一つずつ問題点を挙げると、隊員たちがうつむいていく。
どれか一つでも重大なミスだというのに。
四十年ぶりの聖女だということのゆるみがここにも影響している。
どれだけ聖女が狙われやすいと聞いていても、実感がないのだ。
今まで訓練だけだった生活から一転、
聖女をお守りするという緊急時に変わったというのに、
まだどこか平和な気分で護衛をしている。
その上、役に立たないどころか害でしかない隊員がいる。
泣きながらユウリ様に会いたいと押しかける少女に、感情移入してしまっている。
どうにかして慰めようと、ユウリ様の話をした者もいれば、
差し入れの菓子は捨てずに隊員で食べようと言い出したもの、
またおいでと声をかけて自分の勤務時間を教えたもの、
イチカが来そうな時間帯に受付に隊員が必要以上に待っていること、
すべてが聖女様にとって害になる行動でしかない。
それを理解せずに領地を回ったとしたら、どれほど危険なことになるか。
「もう一度聖女の説明書を覚えなおしなさい。
期限は三日以内。
それ以降、違反を繰り返すようならば神官宮から排除します。
規定通り神力も封じて追放することになります。」
「「「「…。」」」」
厳しいように聞こえたのかもしれないが、これは神官宮に入るときに契約した内容だ。
隊長の方針に従わない、聖女に危険をさらした等の重大な過失がある場合は、
もう二度と神力を使えないように封じた上で神官宮から追放することになっている。
神官宮の隊員は選ばれるだけでも名誉なことで、
聖女がいる時期に隊員だったとなれば地方では英雄扱いされる。
その代わり、追放されるようなことがあれば身内からも非難されるだろう。
「あら。返事がないわね。わかったの?
本当なら今すぐ辞めさせて、地方の神官宮から補充してもいいのよ?」
「「「「はっ!!」」」」
半ばわかりたくないという顔をしている者もいることにため息がでる。
いつから隊員たちまで毒されてしまったのか。
「あなたたちは見えないでしょうけど、ダニエル王子は寄生されているわ。
きちんと説明したわよね?イチカは寄生するものだと。
あのままだとダニエル王子はダメになるでしょうね。」
さすがにその一言で隊員たちがハッとした顔になる。
イチカがその魅力を発揮できているのは、ダニエル王子の力を吸い取っているからだ。
その危険性くらいは、わざわざ説明しなくてもいいだろう。
「数か月以内には瘴気の一報が入るでしょう。
その時に足を引っ張るような隊員がいないことを願います。」
「「「「はっ!」」」」
少しは深刻に話を受け止めてくれたのか、隊員の顔つきが変わった気がする。
またきちんと教育されているか確認しなければならないだろうが、
ほとんどの隊員は考えを改めたのではないだろうか。
ユウリ様の誘拐未遂が発覚した後、キリル兄様の怒りようはすさまじかった。
そのままの勢いで隊員たちに怒鳴りつけたらまずいと、カイン兄様に呼び出された。
「忙しい時期なのはわかるが、隊員たちの再教育を頼む。」と。
学園の卒業生として、というよりも学園会の会長としての仕事と引き継ぎ、
その上…結婚式を延期することによる雑多な手続き。
学園を卒業したら本当はすぐに結婚する予定だったが、
神官宮の仕事を引き受けたことにより結婚式は延期となった。
籍だけは先に入れるので、公爵家の仕事は婚約者に任せる予定ではあるけれど、
ここでまた増えた余計な仕事で心配事は増えていくばかりだ。
最近は婚約者と顔を合わせても、すぐに呼び出されてしまう。
そういうことで文句を言う人ではないけれど、さすがに申し訳なくなってきた。
「…本当に大丈夫かしら。」
聖女の部屋へと報告に上がる前にため息をついて、気持ちを切り替えた。
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