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聖女としての働き
24.離れていく(一花)
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嫌がらせで言っているのかと思っていたのに、
にらみつけたら真剣な目で見つめ返された。
いつものいかにも王子様らしく微笑んでますといった笑顔ではない。
もしかして真面目な話?
「国王が嫌なら、あとはもう一人候補はいる。」
「もう一人?誰よ。」
「俺。第17王子、カイラン・ユハエルだ。」
「はぁ?」
偉そうな男だとは思っていたけれど、17王子なの?
さっき王子が17人いるって言ってたから、末の王子ってことだよね。
なんで、こんなに偉そうなの?
「なんで国王かあんたなわけ?17王子って一番下の王子でしょ?」
「それは、この国が末子、つまり一番下の王子が次の国王になるからだよ。」
「なんでそんなめんどくさいシステムなの?」
「国王の在位が長く続いたほうが国が安定すると言われている。
それと、王子や王女の数が多いほど、貴族と婚姻させことができる。
臣下の家に嫁がせることで王家と貴族を結び付けて、
権力を安定させた状態で一番下の王子に引き継がせるんだ。」
「へー。まぁ、そういう国があってもおかしくはないけど。
だから、国王か、次の国王だってことはわかった。
だが、どっちも断る!」
62歳のじじいよりかはましかもしれないけど、そもそも後宮に入る気なんてない。
絶対に断る。断れなかったとしても断る。
このままこの国にいて悠里に会えなくなるなんて、絶対に嫌だもの。
「まぁ、そういうな。
少なくとも一年以上は先の話だ。」
「一年以上?私、ここにきて二か月もたってるよ。
なんでそんなに気長なの?」
自分のことではあるけど、さらってきて一年以上待つっておかしくない?
嫌がっていてもそのまま後宮に放り込むべきじゃないの?
なんか、いちいちこの国の対応っておかしいのよね…。
国王とは一回も会わないのに、この王子とはこれだけ会うのも変だし。
「聖女に手を出したら、どんな神罰が下るかわからないからな。
他の聖女が結婚したら、お前に手を出しても大丈夫だとわかるだろう。
それを待っているんだ。」
「…他の聖女が結婚したら?」
「そうだ。瘴気が落ち着いたら聖女はたいてい結婚を発表する。
相手のことは公表しないからわからないけどな。
他の国からの求婚を断るために、さっさと国内の貴族と結婚させるんだろう。」
「聖女が結婚……」
悠里とあともう一人の女、名前なんだっけ。
二人とも聖女の役目が終わったら結婚するの?
役目が終わったら自由になれるんじゃないの?
そうしたら、向こうの世界に帰るか、
もし帰れないのなら一緒にこの世界で暮らそうと思っていたのに。
「今の国王、父上は前の聖女アイ様に求婚して断られている。
だからこそ、今度は断られないようにお前をさらってきたわけだ。
ここまで執着しているお前を逃がすと思うか?」
「……。」
「助けだせるとしたら、俺だけだ。
半年後に俺は成人して国王になる。そうしたら父上は前国王になる。
俺の後宮にいれた妃には父上であっても手は出せなくなる。
…よく考えておけ。
俺の後宮に入らなければ、父上によって監禁されるだけだ。」
もう冷めているはずのお茶を飲み干すと、王子は去っていった。
国王や王子の後宮のことよりも、
悠里が結婚するかもしれないことのほうがショックだった。
悠里が、あの悠里が、あの男にはしがみつくようにしていた。
男どころか同性にだってさわることのない悠里が。
どうしてあの男には簡単にふれさせていたのか。信じられなかった。
もしかして……悠里はあの男と結婚することになるんだろうか。
こうして離れたところに連れてこられて、もう三か月以上も悠里とは会っていなくて。
寂しさは感じるけれど、ここから逃げ出してまで会いに行く気力は無くなっていた。
もう二度と会わないと言われた。
あの女がいるから、友達としても私は必要ないって言われた。
夜会での言葉が胸に突き刺さる。
……もう、会えないのだろうか。
見上げたら雨雲が近づいてきているのが見えた。
ここに来て、初めて雨が降るのかもしれない。
冷気が足元から来て、思わず身震いした。
にらみつけたら真剣な目で見つめ返された。
いつものいかにも王子様らしく微笑んでますといった笑顔ではない。
もしかして真面目な話?
「国王が嫌なら、あとはもう一人候補はいる。」
「もう一人?誰よ。」
「俺。第17王子、カイラン・ユハエルだ。」
「はぁ?」
偉そうな男だとは思っていたけれど、17王子なの?
さっき王子が17人いるって言ってたから、末の王子ってことだよね。
なんで、こんなに偉そうなの?
「なんで国王かあんたなわけ?17王子って一番下の王子でしょ?」
「それは、この国が末子、つまり一番下の王子が次の国王になるからだよ。」
「なんでそんなめんどくさいシステムなの?」
「国王の在位が長く続いたほうが国が安定すると言われている。
それと、王子や王女の数が多いほど、貴族と婚姻させことができる。
臣下の家に嫁がせることで王家と貴族を結び付けて、
権力を安定させた状態で一番下の王子に引き継がせるんだ。」
「へー。まぁ、そういう国があってもおかしくはないけど。
だから、国王か、次の国王だってことはわかった。
だが、どっちも断る!」
62歳のじじいよりかはましかもしれないけど、そもそも後宮に入る気なんてない。
絶対に断る。断れなかったとしても断る。
このままこの国にいて悠里に会えなくなるなんて、絶対に嫌だもの。
「まぁ、そういうな。
少なくとも一年以上は先の話だ。」
「一年以上?私、ここにきて二か月もたってるよ。
なんでそんなに気長なの?」
自分のことではあるけど、さらってきて一年以上待つっておかしくない?
嫌がっていてもそのまま後宮に放り込むべきじゃないの?
なんか、いちいちこの国の対応っておかしいのよね…。
国王とは一回も会わないのに、この王子とはこれだけ会うのも変だし。
「聖女に手を出したら、どんな神罰が下るかわからないからな。
他の聖女が結婚したら、お前に手を出しても大丈夫だとわかるだろう。
それを待っているんだ。」
「…他の聖女が結婚したら?」
「そうだ。瘴気が落ち着いたら聖女はたいてい結婚を発表する。
相手のことは公表しないからわからないけどな。
他の国からの求婚を断るために、さっさと国内の貴族と結婚させるんだろう。」
「聖女が結婚……」
悠里とあともう一人の女、名前なんだっけ。
二人とも聖女の役目が終わったら結婚するの?
役目が終わったら自由になれるんじゃないの?
そうしたら、向こうの世界に帰るか、
もし帰れないのなら一緒にこの世界で暮らそうと思っていたのに。
「今の国王、父上は前の聖女アイ様に求婚して断られている。
だからこそ、今度は断られないようにお前をさらってきたわけだ。
ここまで執着しているお前を逃がすと思うか?」
「……。」
「助けだせるとしたら、俺だけだ。
半年後に俺は成人して国王になる。そうしたら父上は前国王になる。
俺の後宮にいれた妃には父上であっても手は出せなくなる。
…よく考えておけ。
俺の後宮に入らなければ、父上によって監禁されるだけだ。」
もう冷めているはずのお茶を飲み干すと、王子は去っていった。
国王や王子の後宮のことよりも、
悠里が結婚するかもしれないことのほうがショックだった。
悠里が、あの悠里が、あの男にはしがみつくようにしていた。
男どころか同性にだってさわることのない悠里が。
どうしてあの男には簡単にふれさせていたのか。信じられなかった。
もしかして……悠里はあの男と結婚することになるんだろうか。
こうして離れたところに連れてこられて、もう三か月以上も悠里とは会っていなくて。
寂しさは感じるけれど、ここから逃げ出してまで会いに行く気力は無くなっていた。
もう二度と会わないと言われた。
あの女がいるから、友達としても私は必要ないって言われた。
夜会での言葉が胸に突き刺さる。
……もう、会えないのだろうか。
見上げたら雨雲が近づいてきているのが見えた。
ここに来て、初めて雨が降るのかもしれない。
冷気が足元から来て、思わず身震いした。
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