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絡み合う運命
17.願い
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事件が起きたのは美里が魔力切れを起こして、
私とキリルだけで浄化作業をするようになって三日目のことだった。
その日も小さな湖に行き、浄化作業を行っていた。
この周辺の小さな湖はここが最後で、
明日以降は美里が起きるまで待機することになっていた。
カインさんから魔力提供をされ続けている美里も、
そろそろ起きるはずだった。
「ここもひどいな。」
「やっぱり周辺の木にぶら下がってる…やだなぁ。」
小さい湖だとあふれてしまうのか、
ここも周辺の木々に瘴気のかたまりがぶら下がっている。
それがうごめいているのが見えるので、目をそらしたくなる。
どっちかと言えば湖の中だけにいるほうが浄化しやすい。
もちろん、量によって時間が変わるのであって、
外に出ていてもたいして変わらないのだが、
気持ちの問題で見えると疲れてしまう気がする。
「見ないように浄化してもいいよ。」
「うーん。見なくても浄化はできるんだろうけど。
なんとなく、見ているほうが音がまっすぐ届いてくれる気がするんだよね。」
思っているだけかもしれないが、神力は私の意思によって強さが変わる気がした。
届けたいと思う方向、浄化したいと思っている場所に届いているように見えた。
実際には差は無いのかもしれないが、少しでも早く浄化したいと思っているから、
手を抜くようなことはしたくなかった。
「そっか。わかった。
じゃあ、今日も頑張ろう。」
「うん。」
今日もまたキリルに抱きかかえられて浄化作業が始まる。
周りに隊員たちがいることにも慣れて気にならなくなっていた。
神力をこめて鈴を振ると少しずつ少しずつ瘴気が削られ消えていく。
今日も長時間かかるだろうなと思いながら作業を進める。
予想通り、湖の瘴気の大部分が消えるころには日が暮れ始めていた。
「あとちょっとかな。」
「うん、もう少しだね。」
あともう少し頑張れば終わって拠点に戻れる。
そう思って最後の力を振り絞って鈴を振る。
三日間、私とキリルだけで浄化作業をし続け、疲労は溜まっていた。
魔力も朝になれば回復しているけれど、通常の六割程度しか回復していなかった。
それでもこの小さな湖を浄化するのは大丈夫だと判断し、最後まで浄化しようとする。
その時、湖の奥、林の中から何かがあらわれた。
急に現れた何かに、隊員たちが一瞬で警戒態勢に入る。
…魔獣かと思われたが、それは人間だった。
ぼろぼろの服を着た男性が三人、よろよろとこちらへと歩いてくる。
目はうつろで農作業着だと思われる服は泥だらけで、あちこちがやぶれている。
…こんなところに人がいることにも驚きだったが、
そんなことよりも三人の周りには黒い影がまとわりついていた。
「…ひっ。」
「ユウリ!もしかして彼らは!?」
「瘴気が…取りついてる!」
もうすでに瘴気が身体の中に入り込んでしまっている人たちだった。
こんなに瘴気の気配が濃い森の中を普通の人が入り込めばこうなっても仕方ない。
どうしてこんなところに領地の平民が入り込んだのか。
領主がこの付近には近寄らないように命令しているはずなのに。
隊員たちが神剣を構え、男性たちの周りを取り囲んだ。
人に取りついてから魔獣が生まれるまでの時間は決まっていない。
生まれる魔獣の数も、瘴気の量によって変わる。
…今、この人たちの身体を食い破って魔獣が生まれてもおかしくない。
以前に見てしまったその瞬間を思い出し、身体が震え始める。
怖い…でも、目をそらしてはいけないような気がする。
最悪の状況を覚悟した瞬間、その男性たちが私を見て騒ぎ始めた。
「…せいじょさま…たすけて!たすけてくれ!」
「お願いしますだ!聖女さまなら…助けられるって!」
「…あぁ、よかった。聖女様に会えた。これで助かる…。」
え?聖女なら助けられるの?
そう思ってキリルを見たら首を横に振られる。
「…助けられるのなら、以前の時にそう言った。
鈴を振ってみてもいいけど、無理なんだ。
…ただ、彼らに伝えていいのかどうか迷うな…。
これから……なのに、絶望させてしまうのがいいのかどうか…。」
「…そんな。」
私とキリルだけで浄化作業をするようになって三日目のことだった。
その日も小さな湖に行き、浄化作業を行っていた。
この周辺の小さな湖はここが最後で、
明日以降は美里が起きるまで待機することになっていた。
カインさんから魔力提供をされ続けている美里も、
そろそろ起きるはずだった。
「ここもひどいな。」
「やっぱり周辺の木にぶら下がってる…やだなぁ。」
小さい湖だとあふれてしまうのか、
ここも周辺の木々に瘴気のかたまりがぶら下がっている。
それがうごめいているのが見えるので、目をそらしたくなる。
どっちかと言えば湖の中だけにいるほうが浄化しやすい。
もちろん、量によって時間が変わるのであって、
外に出ていてもたいして変わらないのだが、
気持ちの問題で見えると疲れてしまう気がする。
「見ないように浄化してもいいよ。」
「うーん。見なくても浄化はできるんだろうけど。
なんとなく、見ているほうが音がまっすぐ届いてくれる気がするんだよね。」
思っているだけかもしれないが、神力は私の意思によって強さが変わる気がした。
届けたいと思う方向、浄化したいと思っている場所に届いているように見えた。
実際には差は無いのかもしれないが、少しでも早く浄化したいと思っているから、
手を抜くようなことはしたくなかった。
「そっか。わかった。
じゃあ、今日も頑張ろう。」
「うん。」
今日もまたキリルに抱きかかえられて浄化作業が始まる。
周りに隊員たちがいることにも慣れて気にならなくなっていた。
神力をこめて鈴を振ると少しずつ少しずつ瘴気が削られ消えていく。
今日も長時間かかるだろうなと思いながら作業を進める。
予想通り、湖の瘴気の大部分が消えるころには日が暮れ始めていた。
「あとちょっとかな。」
「うん、もう少しだね。」
あともう少し頑張れば終わって拠点に戻れる。
そう思って最後の力を振り絞って鈴を振る。
三日間、私とキリルだけで浄化作業をし続け、疲労は溜まっていた。
魔力も朝になれば回復しているけれど、通常の六割程度しか回復していなかった。
それでもこの小さな湖を浄化するのは大丈夫だと判断し、最後まで浄化しようとする。
その時、湖の奥、林の中から何かがあらわれた。
急に現れた何かに、隊員たちが一瞬で警戒態勢に入る。
…魔獣かと思われたが、それは人間だった。
ぼろぼろの服を着た男性が三人、よろよろとこちらへと歩いてくる。
目はうつろで農作業着だと思われる服は泥だらけで、あちこちがやぶれている。
…こんなところに人がいることにも驚きだったが、
そんなことよりも三人の周りには黒い影がまとわりついていた。
「…ひっ。」
「ユウリ!もしかして彼らは!?」
「瘴気が…取りついてる!」
もうすでに瘴気が身体の中に入り込んでしまっている人たちだった。
こんなに瘴気の気配が濃い森の中を普通の人が入り込めばこうなっても仕方ない。
どうしてこんなところに領地の平民が入り込んだのか。
領主がこの付近には近寄らないように命令しているはずなのに。
隊員たちが神剣を構え、男性たちの周りを取り囲んだ。
人に取りついてから魔獣が生まれるまでの時間は決まっていない。
生まれる魔獣の数も、瘴気の量によって変わる。
…今、この人たちの身体を食い破って魔獣が生まれてもおかしくない。
以前に見てしまったその瞬間を思い出し、身体が震え始める。
怖い…でも、目をそらしてはいけないような気がする。
最悪の状況を覚悟した瞬間、その男性たちが私を見て騒ぎ始めた。
「…せいじょさま…たすけて!たすけてくれ!」
「お願いしますだ!聖女さまなら…助けられるって!」
「…あぁ、よかった。聖女様に会えた。これで助かる…。」
え?聖女なら助けられるの?
そう思ってキリルを見たら首を横に振られる。
「…助けられるのなら、以前の時にそう言った。
鈴を振ってみてもいいけど、無理なんだ。
…ただ、彼らに伝えていいのかどうか迷うな…。
これから……なのに、絶望させてしまうのがいいのかどうか…。」
「…そんな。」
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