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絡み合う運命
18.新たな危機
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「…助けられるのなら、以前の時にそう言った。
鈴を振ってみてもいいけど、無理なんだ。
…ただ、彼らに伝えていいのかどうか迷うな…。
これから……なのに、絶望させてしまうのがいいのかどうか…。」
「…そんな。」
男性たちはずっと私に向かってお願いし続けている。
必死なのは、きっと瘴気に取りつかれたものがどうなるのかわかっているんだ。
隊員が男性たちに神剣を向けているせいでこちらに来ることはない。
期待を込めてお願いされているのを聞くと…
聖女だとしても何もできないことが申し訳なくて苦しくなる。
…何もしてあげられない。
それでも、せめて最後に鈴の音を…。
そう思って精一杯の力で鈴を振る。
瘴気が薄れ、澄んだ鈴の音が響き渡る。
「あぁ、なんて綺麗な音なんだ。」
「おれは…これで助かるのか…。」
「よかった…また娘にあえる………。」
鈴の音を聞いて喜んで涙を流していた男性たちが、かくんと膝をつく。
そのまま言葉を発しなくなり、動きが止まる。
「意識が無くなった…来るぞ。」
キリルのその言葉が終わると同時に、男性たちの身体を食い破って魔獣が生まれてくる。
イタチのような魔獣がわらわらと出て、そのまま隊員たちに襲いかかってきた。
切っても切っても魔獣は生まれ続け、隊員たちが後ろに下がり始めた。
魔獣の多さに対応が難しくなっている。
このままだと隊員たちの誰かがやられてしまうかもしれない。
「キリル、私をおろして。」
「ユウリ!?」
「あのままじゃ隊員たちが危ない。キリルも手伝ってあげて!」
隊員たちよりもキリルが神剣を扱ったほうが威力が強い。
小さな魔獣だったら一瞬で切り捨てられる。
魔獣を討伐できなければ一時撤退しなくてはいけなくなる。
私を抱き上げていたらキリルは神剣をふれないと思い、下ろすようにお願いする。
キリルもこの状況では仕方ないと思ったのか、素直にうなずいた。
「…わかった。ユウリは後ろへ離れていて。
魔力をまとわせていれば魔獣は寄っていかないはずだ。
やり方はわかるね?」
「うん、大丈夫。自分の身は守れる…だから、魔獣をお願い。」
「行ってくる。」
私を地面にゆっくりと下ろすと、神剣を抜いて魔獣へと向かって行く。
魔獣におされていた隊員たちもキリルに続くように魔獣へと向かって行くのを見て、
少しだけほっとする。
これならすぐに討伐は終わるはず。
邪魔にならないように後ろへと数歩下がって、様子をみることにする。
思った以上に魔獣の数は多く、キリルが参戦しなければ無理だったかもしれない。
あと少しで終わるかな…そう思ってからも数分が過ぎていた。
その時、後ろから口をふさがれ、お腹のあたりに腕を回された。
驚いているうちに後ろへと連れて行かれる。
持ち上げられるようにして連れて行かれたため、
地面に足をふんばって抵抗することもできず、
口をふさがれたために声を上げることもできない。
それでも力の限り抵抗して暴れたのだが、
魔獣を討伐する音に紛れて、キリルも隊員たちも気が付いてくれなかった。
みるみるうちにキリルたちが遠くなっていく。
どうしていいのかわからないまま、連れ去られてしまっていた。
「早く!こっちよ!」
誰か、女性の声が聞こえる。
私を連れ去ろうとしている人は、その声に反応して、そちらへと向かった。
茂みを抜けたその先、一台の馬車が待っていた。
湖がある場所からすぐ近いところに、
馬車が通れるほど大きな道があるとは知らなかった。
今まで通ったことが無いというのは、ここは拠点から反対側ということだろうか。
馬車には馬が二頭つながれていて、御者らしき人がいた。
馬車の窓を開けてこちらに向かって叫んでいた人を見て、あの時の女性だと気が付いた。
あれは律といっしょにいた女性だ。
…ということは、今私をつかまえているのは律?
「遅かったじゃない!早く乗って。
ここは危ないのよ!」
「わかった。」
鈴を振ってみてもいいけど、無理なんだ。
…ただ、彼らに伝えていいのかどうか迷うな…。
これから……なのに、絶望させてしまうのがいいのかどうか…。」
「…そんな。」
男性たちはずっと私に向かってお願いし続けている。
必死なのは、きっと瘴気に取りつかれたものがどうなるのかわかっているんだ。
隊員が男性たちに神剣を向けているせいでこちらに来ることはない。
期待を込めてお願いされているのを聞くと…
聖女だとしても何もできないことが申し訳なくて苦しくなる。
…何もしてあげられない。
それでも、せめて最後に鈴の音を…。
そう思って精一杯の力で鈴を振る。
瘴気が薄れ、澄んだ鈴の音が響き渡る。
「あぁ、なんて綺麗な音なんだ。」
「おれは…これで助かるのか…。」
「よかった…また娘にあえる………。」
鈴の音を聞いて喜んで涙を流していた男性たちが、かくんと膝をつく。
そのまま言葉を発しなくなり、動きが止まる。
「意識が無くなった…来るぞ。」
キリルのその言葉が終わると同時に、男性たちの身体を食い破って魔獣が生まれてくる。
イタチのような魔獣がわらわらと出て、そのまま隊員たちに襲いかかってきた。
切っても切っても魔獣は生まれ続け、隊員たちが後ろに下がり始めた。
魔獣の多さに対応が難しくなっている。
このままだと隊員たちの誰かがやられてしまうかもしれない。
「キリル、私をおろして。」
「ユウリ!?」
「あのままじゃ隊員たちが危ない。キリルも手伝ってあげて!」
隊員たちよりもキリルが神剣を扱ったほうが威力が強い。
小さな魔獣だったら一瞬で切り捨てられる。
魔獣を討伐できなければ一時撤退しなくてはいけなくなる。
私を抱き上げていたらキリルは神剣をふれないと思い、下ろすようにお願いする。
キリルもこの状況では仕方ないと思ったのか、素直にうなずいた。
「…わかった。ユウリは後ろへ離れていて。
魔力をまとわせていれば魔獣は寄っていかないはずだ。
やり方はわかるね?」
「うん、大丈夫。自分の身は守れる…だから、魔獣をお願い。」
「行ってくる。」
私を地面にゆっくりと下ろすと、神剣を抜いて魔獣へと向かって行く。
魔獣におされていた隊員たちもキリルに続くように魔獣へと向かって行くのを見て、
少しだけほっとする。
これならすぐに討伐は終わるはず。
邪魔にならないように後ろへと数歩下がって、様子をみることにする。
思った以上に魔獣の数は多く、キリルが参戦しなければ無理だったかもしれない。
あと少しで終わるかな…そう思ってからも数分が過ぎていた。
その時、後ろから口をふさがれ、お腹のあたりに腕を回された。
驚いているうちに後ろへと連れて行かれる。
持ち上げられるようにして連れて行かれたため、
地面に足をふんばって抵抗することもできず、
口をふさがれたために声を上げることもできない。
それでも力の限り抵抗して暴れたのだが、
魔獣を討伐する音に紛れて、キリルも隊員たちも気が付いてくれなかった。
みるみるうちにキリルたちが遠くなっていく。
どうしていいのかわからないまま、連れ去られてしまっていた。
「早く!こっちよ!」
誰か、女性の声が聞こえる。
私を連れ去ろうとしている人は、その声に反応して、そちらへと向かった。
茂みを抜けたその先、一台の馬車が待っていた。
湖がある場所からすぐ近いところに、
馬車が通れるほど大きな道があるとは知らなかった。
今まで通ったことが無いというのは、ここは拠点から反対側ということだろうか。
馬車には馬が二頭つながれていて、御者らしき人がいた。
馬車の窓を開けてこちらに向かって叫んでいた人を見て、あの時の女性だと気が付いた。
あれは律といっしょにいた女性だ。
…ということは、今私をつかまえているのは律?
「遅かったじゃない!早く乗って。
ここは危ないのよ!」
「わかった。」
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