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聖女ではない新しい私へ
7.受け入れる
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「…ユウリ、これからは妹だと思っていいだろうか…。」
少しだけ不安そうにカインさんが聞いてくる。
いつも笑顔なカインさんがこんなふうに不安そうな顔をするなんて。
「ユウリ、カイン兄さんは…俺とジェシカは兄弟だって言っても本当は従兄弟だ。
カイン兄さんの本当の兄弟はユウリだけなんだ。」
私たちの会話を聞いていたキリルに言われてハッとする。
そうだった。ずっとキリルとジェシカさんを兄弟だと思っていたけど、
本当は従兄弟だったことを思い出す。
お母さんが殺されて、お父さんとは縁を切った状況で…。
引き取られた公爵家でよくしてもらったとしても、
一緒に暮らしていたキリルたちは本当の兄弟ではなくて。
そっか…カインさんにとって私がたった一人の兄弟でもあるし、
私にとってもカインさんがたった一人の兄弟なんだ。
「…カインさん。お兄ちゃんって呼んでも…いい?」
「っ!あ、ああ!呼んで欲しい!」
私がそうお願いしたのがうれしかったのか、
ソファを立ち上がってこっちに来たと思ったら私の身体を高く持ち上げた。
「わぁっ。」
「ユウリ、お兄ちゃんだよ!…良かった。やっと…妹に会えた…。」
小さい子どもじゃないんだからやめてほしいと思ったけれど、
泣きそうな顔して喜んでいるカインお兄ちゃんに何も言えない。
「ユウリ、しばらくは許してやって。
伯母上と一緒に、生まれてくるはずだった弟妹も殺されたと思っていたんだ。
それがこうして会えたから…うれしくて仕方ないんだよ。」
「…わかったけど、降ろして~。普通に喜んで!」
「あ、ああ。ごめん。怖かった?」
「ううん。大丈夫。びっくりしただけ。」
ゆっくりと下に降ろしてくれると、きゅうっと抱きしめられた。
キリルに抱きしめられるような感じじゃなく、ただうれしいって感じの抱擁に、
私も同じようにお兄ちゃんを抱きしめ返した。
「…本当に会えてよかった。」
「…うん。」
しばらく黙ってそうしていたら、美里ののんびりした声が聞こえた。
「えっと。私もお兄ちゃんって呼んだほうがいい?キリルお兄ちゃん。」
「あーうん。そう呼んでくれるとうれしいな。
ジェシカにも早く言わなきゃな。」
振り返って見たらにこにこと笑っている美里と、
うんうんうなずいてジェシカさんに連絡しようとしているキリル。
「なんだか…こちらとの温度差を感じるね?」
「あーそうだね。なんか温度差あるね~。
キリルお兄ちゃんが私の兄だっていうのはなんか納得。
今まで一緒にいて、ずっとそんな感じだったもんね。
だから、本当に兄弟だったって知っても、そこまで驚かなかったっていうか。」
「そうなんだ。…まぁ、よく考えてみたら二人って雰囲気似てるね。
穏やかでのんびりしている感じっていうか。」
「あーうん。悠里とカインも似ているよ?
なんか真面目っぽいっていうか、考えすぎているとことか。」
「あぁ、うん。言われてみたらそうかも。」
本当の生まれがどうとか、兄弟がどうとか急に言われて驚いたものの、
今まで四人で仲良く生活してきているし、お互いのこともよくわかってる。
これからもあまり変わることはないような気がしてきた。
「まぁ、俺としてははっきりして良かった。
これで聖女の仕事も終わるし、聖女の説明書の確認が終われば、
あとは自由に好きなところにいける。
ユウリ、ミサト、ここまでよく頑張ってきたね。お疲れさま。」
これで…長かった聖女の生活も終わるんだ。
律と一花から逃げてこの世界に来て、異世界転移だって言われて呆れて、
キリルのことや神力のことで悩んで苦しんで…。
気がついたら、キリルのことが好きになって、想いが通じて、
今では美里が親友になって、カインさんがお兄ちゃんになって。
聖女じゃなくなって、これからの私はどうなるんだろう。
少しだけ不安そうにカインさんが聞いてくる。
いつも笑顔なカインさんがこんなふうに不安そうな顔をするなんて。
「ユウリ、カイン兄さんは…俺とジェシカは兄弟だって言っても本当は従兄弟だ。
カイン兄さんの本当の兄弟はユウリだけなんだ。」
私たちの会話を聞いていたキリルに言われてハッとする。
そうだった。ずっとキリルとジェシカさんを兄弟だと思っていたけど、
本当は従兄弟だったことを思い出す。
お母さんが殺されて、お父さんとは縁を切った状況で…。
引き取られた公爵家でよくしてもらったとしても、
一緒に暮らしていたキリルたちは本当の兄弟ではなくて。
そっか…カインさんにとって私がたった一人の兄弟でもあるし、
私にとってもカインさんがたった一人の兄弟なんだ。
「…カインさん。お兄ちゃんって呼んでも…いい?」
「っ!あ、ああ!呼んで欲しい!」
私がそうお願いしたのがうれしかったのか、
ソファを立ち上がってこっちに来たと思ったら私の身体を高く持ち上げた。
「わぁっ。」
「ユウリ、お兄ちゃんだよ!…良かった。やっと…妹に会えた…。」
小さい子どもじゃないんだからやめてほしいと思ったけれど、
泣きそうな顔して喜んでいるカインお兄ちゃんに何も言えない。
「ユウリ、しばらくは許してやって。
伯母上と一緒に、生まれてくるはずだった弟妹も殺されたと思っていたんだ。
それがこうして会えたから…うれしくて仕方ないんだよ。」
「…わかったけど、降ろして~。普通に喜んで!」
「あ、ああ。ごめん。怖かった?」
「ううん。大丈夫。びっくりしただけ。」
ゆっくりと下に降ろしてくれると、きゅうっと抱きしめられた。
キリルに抱きしめられるような感じじゃなく、ただうれしいって感じの抱擁に、
私も同じようにお兄ちゃんを抱きしめ返した。
「…本当に会えてよかった。」
「…うん。」
しばらく黙ってそうしていたら、美里ののんびりした声が聞こえた。
「えっと。私もお兄ちゃんって呼んだほうがいい?キリルお兄ちゃん。」
「あーうん。そう呼んでくれるとうれしいな。
ジェシカにも早く言わなきゃな。」
振り返って見たらにこにこと笑っている美里と、
うんうんうなずいてジェシカさんに連絡しようとしているキリル。
「なんだか…こちらとの温度差を感じるね?」
「あーそうだね。なんか温度差あるね~。
キリルお兄ちゃんが私の兄だっていうのはなんか納得。
今まで一緒にいて、ずっとそんな感じだったもんね。
だから、本当に兄弟だったって知っても、そこまで驚かなかったっていうか。」
「そうなんだ。…まぁ、よく考えてみたら二人って雰囲気似てるね。
穏やかでのんびりしている感じっていうか。」
「あーうん。悠里とカインも似ているよ?
なんか真面目っぽいっていうか、考えすぎているとことか。」
「あぁ、うん。言われてみたらそうかも。」
本当の生まれがどうとか、兄弟がどうとか急に言われて驚いたものの、
今まで四人で仲良く生活してきているし、お互いのこともよくわかってる。
これからもあまり変わることはないような気がしてきた。
「まぁ、俺としてははっきりして良かった。
これで聖女の仕事も終わるし、聖女の説明書の確認が終われば、
あとは自由に好きなところにいける。
ユウリ、ミサト、ここまでよく頑張ってきたね。お疲れさま。」
これで…長かった聖女の生活も終わるんだ。
律と一花から逃げてこの世界に来て、異世界転移だって言われて呆れて、
キリルのことや神力のことで悩んで苦しんで…。
気がついたら、キリルのことが好きになって、想いが通じて、
今では美里が親友になって、カインさんがお兄ちゃんになって。
聖女じゃなくなって、これからの私はどうなるんだろう。
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