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本編
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彼女は恋愛に、大きな憧れを抱いてきた。
中学時代は、恋愛要素ありのソーシャルゲーム、推しキャラの夢小説に明け暮れて過ごしてきた。
自分の青春もそこそこに、推しとの恋愛のことだけを考えて生きてきた。
私には推しがいればいい。
推しがいれば私の人生は毎日が輝いている。二次元最高!
そんな思いを抱いていた彼女に転機があったのは、中学3年生の夏だった。
何と、彼女の最愛の推しが出てくるソシャゲがサ終を迎えたのだ。
少女は何度も何度も泣いて、僅かな子供の貯金分しか課金できなかった無力な自分を憎んだ。
そして、彼女は悟ったのだ。
二次元こそ、終わりがあるのかもしれない。
それは今までの彼女の考えを大きく覆す物であった。
サ終の心配もなく、何十年と推していくことができ、ボイスを聴くのに追加料金を払う必要もなく、天井までガチャを回さなくても新規絵が見られる異性、つまり三次元の彼氏という存在に憧れを抱くようになったのだ。
それから、妙にオタク特有のフットワークの軽さのある彼女は、大変身を遂げた。
ダイエット、メイクの練習、ファッションの勉強、ありとあらゆる方向から女子力を上げ、最高の高校デビューを果たした……はずだった……。
「姉御!廊下で俺の友達がいじめられてるんです!助けてあげてください!」
「はぁ……。あんた男なんだからしっかりしなさいよ。いっつも私に頼ってばかりじゃない。で、その不届き者はどこよ?」
「流石姉御!蹴散らしてやってくだせぇ!」
彼女は、おもしれー女になりたかった。おもしれー女になって、イケメンに見初められる妄想ばかりしてきたせいで、男子からも恋愛の対象ではなく、すっかり姉御として頼られる存在になってしまったのだ。
彼女がいじめっ子を倒そうと廊下に出た時、推しそっくりの声が彼女に耳に響いた。
「おいおい。そんなところで騒がれたら、俺様のル○バが通れねーじゃねーか」
身長180は超えてそうなイケメンがそこにはいた。端正な顔立ちは、まるでサ終と共に消えてしまった彼女の推しの生き写しのようだった。
「かっこいい……♡」
「え?姉御、あの人そんなにかっこいいですか……?いや、顔はかっこいいと思いますが……いっつもルン○を引き連れて廊下掃除してるような奴ですよ……?」
姉御キャラで通っていたはずの彼女の顔がすっかり乙女の顔になる。
「何だよ、いじめか?クソだせーな。お前もル○バの餌にしてやろうか?」
「ヒィッ!」
言ってることは何も怖くないのに、彼の高身長に怯んだいじめっ子達は走って逃げて行く。
「何見てんだ?お前、俺様に見惚れたのか?」
「ばっ……ばか!そんなわけないじゃない!ちょっとルン○が可愛いなって見てただけよ!」
頬を真っ赤に染めながら言う言葉ではない。
「え?マジ?お前見る目あるじゃん。ル○バ、可愛いよな」
彼もまた、天然であった。
「お前、うちの学校で喧嘩番長やってんだって?毎日いじめっ子を成敗してるらしいな?」
「それが……何よ……」
「おもしれー女だなって。お前、俺様の女になれよ」
彼は彼女に壁ドンして迫る。
彼女は内心、キタ!と喜んでいた。けれど、ここではしゃいでは、王道に反すると思い、精一杯ツンツンした態度を作った。
「はぁ!?あんたの女になんかなるわけないでしょ!私はね、あんたみたいな何でも自分の思い通りになると思ってる王様気取りの男がだいっきら……って……えっ!?」
彼女がそこまで言うと、彼はボロボロと泣き出した。
「うっ……ひぐっ……何でそんな酷いこと言うんだよ……。そんなに……俺のこと……嫌い……?」
彼女は困惑してしまった。二次元の恋愛物で見たことがない展開には、彼女は対応し切れなかった。
「えっ……なんかごめん……。あの……別に本気で言ったわけじゃなくて……」
それでも彼は泣き続ける。
「君のこと、中学の頃に図書館で見かけた時からずっと好きだったのに……。君の好きなキャラクターみたいになろうって、頑張ってきたのに……。毎日校内でル○バ散歩させて、君の髪の毛を集めておまじないもしてきたのに……。そんなに……僕のことが……嫌い……?」
「えっと……」
彼女はヤンデレは守備範囲外だった。彼女は、王道な俺様系が好みだった。でも、ヤンデレを蔑ろにすると、バドエンが待っているということは知っていた。
「あの……その……ノリで言っただけで……別に……嫌いじゃないよ……?あの……だから……元気……出して……?」
彼女はコミュ障ゆえ、気の利いた言葉は思い浮かばなかった。
「ほんと!?じゃあ、付き合ってくれる!?」
「えっ……」
「……付き合ってくれるよね……?」
「アッ……ハイ……」
そのまま彼女は押し切られて、彼と付き合うことになった。
彼女は、悟った。
やっぱり向こうから干渉してこない二次元こそが至高だったな……。
後悔しても、もう遅い!
そんな、彼女の大好きなネット小説あるあるの単語を思い浮かべながら、彼女はそっとため息をついた。
中学時代は、恋愛要素ありのソーシャルゲーム、推しキャラの夢小説に明け暮れて過ごしてきた。
自分の青春もそこそこに、推しとの恋愛のことだけを考えて生きてきた。
私には推しがいればいい。
推しがいれば私の人生は毎日が輝いている。二次元最高!
そんな思いを抱いていた彼女に転機があったのは、中学3年生の夏だった。
何と、彼女の最愛の推しが出てくるソシャゲがサ終を迎えたのだ。
少女は何度も何度も泣いて、僅かな子供の貯金分しか課金できなかった無力な自分を憎んだ。
そして、彼女は悟ったのだ。
二次元こそ、終わりがあるのかもしれない。
それは今までの彼女の考えを大きく覆す物であった。
サ終の心配もなく、何十年と推していくことができ、ボイスを聴くのに追加料金を払う必要もなく、天井までガチャを回さなくても新規絵が見られる異性、つまり三次元の彼氏という存在に憧れを抱くようになったのだ。
それから、妙にオタク特有のフットワークの軽さのある彼女は、大変身を遂げた。
ダイエット、メイクの練習、ファッションの勉強、ありとあらゆる方向から女子力を上げ、最高の高校デビューを果たした……はずだった……。
「姉御!廊下で俺の友達がいじめられてるんです!助けてあげてください!」
「はぁ……。あんた男なんだからしっかりしなさいよ。いっつも私に頼ってばかりじゃない。で、その不届き者はどこよ?」
「流石姉御!蹴散らしてやってくだせぇ!」
彼女は、おもしれー女になりたかった。おもしれー女になって、イケメンに見初められる妄想ばかりしてきたせいで、男子からも恋愛の対象ではなく、すっかり姉御として頼られる存在になってしまったのだ。
彼女がいじめっ子を倒そうと廊下に出た時、推しそっくりの声が彼女に耳に響いた。
「おいおい。そんなところで騒がれたら、俺様のル○バが通れねーじゃねーか」
身長180は超えてそうなイケメンがそこにはいた。端正な顔立ちは、まるでサ終と共に消えてしまった彼女の推しの生き写しのようだった。
「かっこいい……♡」
「え?姉御、あの人そんなにかっこいいですか……?いや、顔はかっこいいと思いますが……いっつもルン○を引き連れて廊下掃除してるような奴ですよ……?」
姉御キャラで通っていたはずの彼女の顔がすっかり乙女の顔になる。
「何だよ、いじめか?クソだせーな。お前もル○バの餌にしてやろうか?」
「ヒィッ!」
言ってることは何も怖くないのに、彼の高身長に怯んだいじめっ子達は走って逃げて行く。
「何見てんだ?お前、俺様に見惚れたのか?」
「ばっ……ばか!そんなわけないじゃない!ちょっとルン○が可愛いなって見てただけよ!」
頬を真っ赤に染めながら言う言葉ではない。
「え?マジ?お前見る目あるじゃん。ル○バ、可愛いよな」
彼もまた、天然であった。
「お前、うちの学校で喧嘩番長やってんだって?毎日いじめっ子を成敗してるらしいな?」
「それが……何よ……」
「おもしれー女だなって。お前、俺様の女になれよ」
彼は彼女に壁ドンして迫る。
彼女は内心、キタ!と喜んでいた。けれど、ここではしゃいでは、王道に反すると思い、精一杯ツンツンした態度を作った。
「はぁ!?あんたの女になんかなるわけないでしょ!私はね、あんたみたいな何でも自分の思い通りになると思ってる王様気取りの男がだいっきら……って……えっ!?」
彼女がそこまで言うと、彼はボロボロと泣き出した。
「うっ……ひぐっ……何でそんな酷いこと言うんだよ……。そんなに……俺のこと……嫌い……?」
彼女は困惑してしまった。二次元の恋愛物で見たことがない展開には、彼女は対応し切れなかった。
「えっ……なんかごめん……。あの……別に本気で言ったわけじゃなくて……」
それでも彼は泣き続ける。
「君のこと、中学の頃に図書館で見かけた時からずっと好きだったのに……。君の好きなキャラクターみたいになろうって、頑張ってきたのに……。毎日校内でル○バ散歩させて、君の髪の毛を集めておまじないもしてきたのに……。そんなに……僕のことが……嫌い……?」
「えっと……」
彼女はヤンデレは守備範囲外だった。彼女は、王道な俺様系が好みだった。でも、ヤンデレを蔑ろにすると、バドエンが待っているということは知っていた。
「あの……その……ノリで言っただけで……別に……嫌いじゃないよ……?あの……だから……元気……出して……?」
彼女はコミュ障ゆえ、気の利いた言葉は思い浮かばなかった。
「ほんと!?じゃあ、付き合ってくれる!?」
「えっ……」
「……付き合ってくれるよね……?」
「アッ……ハイ……」
そのまま彼女は押し切られて、彼と付き合うことになった。
彼女は、悟った。
やっぱり向こうから干渉してこない二次元こそが至高だったな……。
後悔しても、もう遅い!
そんな、彼女の大好きなネット小説あるあるの単語を思い浮かべながら、彼女はそっとため息をついた。
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