お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん

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四十一、レオ王の訪問

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カップを持っていた手を、膝の上にキチンとそろえる。

それから背筋を伸ばし、扉へ視線を移す。

「突然訪れて申し訳ない。
会議が混戦して、とりあえす休憩をとることになったんだ」

レオ王は渋面をして、額にかかった髪をハラリとかき上げる。

確かに少し疲れているようだ。

こんなけだるい雰囲気を醸し出した王様は、初めて見た。

それはそれでとても素敵ね。

そう思った瞬間、心臓がドキッとはねる。

「領主様もそれぞれに主張があるのですね。 
それをまとめるのも大変だと思います。
私でよければ、いつでも愚痴をお聞きしますわ」 

「着いたばかりのあなたに、気を使わせてしまったようだな」

レオ王は申し訳なさそうに頭をかいた。

「キャアア」

とたんに部屋の隅に控えていたグラスが、黄色い声をあげる。

いつもクールなレオ王の少年のようなしぐさに、たまらなくなったのだろう。

わかる。わかる。その気持ち。

でも一応王女だから、グラスのように叫びたいのを必死でこらえていた。

「グラスだったかな。
悪いが、私にもローズと同じ飲み物をいれてくれ」

「王様。
王女様を疑うわけではありませんが、一度私に毒味をさせて下さい」

まるでレオ王の影のように、一緒に入室してきた美丈夫な騎士が静かな声をだす。

「おい。ユリア。
王女を信じているなら、毒味はいらないだろう。
それとも本当は王女を疑っているのか」

レオ王の瞳が、まるで悪戯っ子のように輝いている。

「いや。そういうわけでは。
けれども一応王宮のルールでして」

ユリアと呼ばれた騎士は消え入りそうな声をだす。

黒髪、鋭い切れ長の瞳。

大柄な王様と並んでもひけをとらない位長身なユリアは、レオ王とはタイプの違ったイケメンである。

「ははは。冗談だ。
なら、王女が飲んでいるそれをもらおう。
それでいいだろう。
わかったら悪いが、ローズと二人きりにしてくれないか。
ユリアもグラスも部屋にはりついて、野暮にもほどがあるぞ」

冗談とも本気とも聞こえる言葉に、ユリアは廊下へ、グラスは隣の自室へあわてて出ていった。

「これでやっと二人きりになれたな」

レオ王は私の真向かいに座ると、テーブルに置いていたカップに口をつける。

嘘でしょ。本当にするなんて。

これって間接キスじゃないの。

そう思っただけで、一気に頬が赤く染まってゆく。

「なんだその顔は。
またいやらしいことを考えていたのか」

「ち、ちがいますよ」

いえ。そうだけど。

けど、焦って否定するしかない。

「ハハハ」

レオ王は楽しそうに笑うと、身をのりだしてきて私の鼻をつまんだ。

「嘘つけ」

「バレましたか」

「ローズといるとなごむな。
よくこんな男のところへ嫁いでくれた。 感謝する」

レオ王は今度は真剣な眼差しをむけてくる。

「『こんな男』だなんて」

「いや。そうだ。
知っているだろうが、私は側妃の息子だ。
本来なら、前王妃の息子である兄のレイサ第一王子が即位するはすだった。
そのレイサが肺病で亡くなり、期待されていなかった男が王となった。
帝王学も知らずに育った男が王だ。
笑えるだろ」

「よくある話じゃないですか」

そこまでの経緯は結婚前に調査済みだったので、さして驚かなかった。

「それにな。
私は愛を知らずに育った。
だから、人をうまく愛せない」

「それはどういうことですか。
もう少し詳しく話してもらえませんか」

小首を傾けた。
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