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四十七、グラスの嘆き
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「おい。もうそろろそ起きろ」
頭上から誰かがせかす。
けどまだ眠い。
「お願い。あとほんの少しでいいから寝かせて欲しいの」
そう言って、フカフカの布団を頭からかぶった時だった。
「ローズ。
昨夜は面倒をかけてすまなかったな」
レオ王の渋い声が耳元をかすめる。
「いけない。
私ったら何をしてるの」
黄色い声をだしてガバっと跳ね起きると、部屋をキョロキョロ見渡して、レオ王の姿を探す。
けれど、どこにも王の姿は見当たらない。
目に入るのは、隣の部屋で窓の掃除をしているグラスの姿だけだ。
「今日から貴賓室じゃないんだ」
より豪華さをました部屋の装飾に、ハッとする。
寝ぼけてうっかりしていたけど、ここは王妃の部屋なのだ。
正確にはお飾り王妃だけれども。
「それにしてもおかしいわね。
確かに王様の声がしたんだけれど」
小首を傾げていると、小さな黒い物体が瞬時に肩に飛び乗ってきた。
「やっと目がさめたか」
ストーン国へやってきてから、どこかへ消えていたチューちゃんだ。
「ひょっとして、さっきのはチューちゃんだったのね」
「レオ王だと思って、あせっただろう」
私の掌に移動したチューちゃんは、どや顔をする。
「チューちゃんの物真似は、やっぱり世界一ね。
すっかり騙されたわ。
で、今までどこで何をしてたの」
「ローズに頼まれた木の実を探してたんだぞ」
「私が頼んだですって」
「忘れたのか。クーコの実だよ。
ストーン国へ着くなり、オイラに命令したくせに」
チューちゃんは小さな頬をプウと膨らませる。
「クーコの実?
目の疲れにきく木の実ね。
ああ、思い出したわ。
ポプリ国にはなかったけれど、気候の違うストーン国にはあるかなとひらめいたのよ。
ごめんなさい。
色々ありすぎて、すっかり忘れていたわ」
「ま、新婚だもんな。
フワフワしてもしょーがないか。
で、ローズ。
昨日の夜はどうだったんだい」
チューちゃんは、丸い目を細めて意味深に笑う。
「チューちゃんたらイヤーね。
おませなんだから」
「オイラは身体は小さいけれど、年はローズよりずーと上なんだぞ」
「そうだったわね」
ヤレヤレという感じでチューちゃんの小鳥位しかない頭をなでた時だった。
「ローズ様。
昨夜の今日ですよ。
よくまあ。
朝から、ネズミと楽しげに遊ぶ気になれますね」
ドカドカと足音をたてて、グラスがやってきた。
「昨夜の今日ってどういう意味かしら。
結局昨夜は王様とは何もなかったのよ」
そう小首を傾げた瞬間、グラスが声をはりあげる。
「それは王宮の者なら、誰でも知ってます。
オニキス女官が言いふりまわしているんですよ。
王様が不機嫌な顔で、すぐに閨房から退出してくると、『もう二度と王妃と寝所を共にしない』とおっしゃったって。
私は悔しいやら、悲しいやらで昨晩は一睡もできませんでした。
ローズ様とちがってね」
グラスは一気にそう言うと、両手で顔を覆い微かに肩を震わせた。
「心配かけてごめんなさい。
でも、噂ほど深刻な状況じゃないのよ」
「本当ですか。
オニキス女官が言ってことはデマなんでね」
パッと顔から手を離したグラスは、喜しそうに瞳を輝かす。
「いえ。本当よ。
王様は私には指一歩触れなかった」
「なのにどうしてローズ様は、そんなにニコニコできるんですか」
「それはね。グラス。
私は王様を信じているからなの」
「それって少し呑気すぎませんか」
「大丈夫よ」
『ああ。
けどその運命を変えてみせる。
私を信じて、しばらく待っていてくれないか』
真摯な眼差しでレオ王はそう願った。
あの言葉を胸に秘めているだけで、とても幸せな気持ちになるのだ。
「グラスも噂なんかに気にしないで。
そうそう。
チューちゃん情報によれば、この国にはクーコの実があるらしいの。
今から二人で摘みにいきましょうよ」
「わかりました。
私はローズ様が傷ついていないのなら、それでいいんです。
けど、ローズ様。
オニキス女官なんかに負けないで下さいよ」
グラスが口角とキュツと上げて笑った。
頭上から誰かがせかす。
けどまだ眠い。
「お願い。あとほんの少しでいいから寝かせて欲しいの」
そう言って、フカフカの布団を頭からかぶった時だった。
「ローズ。
昨夜は面倒をかけてすまなかったな」
レオ王の渋い声が耳元をかすめる。
「いけない。
私ったら何をしてるの」
黄色い声をだしてガバっと跳ね起きると、部屋をキョロキョロ見渡して、レオ王の姿を探す。
けれど、どこにも王の姿は見当たらない。
目に入るのは、隣の部屋で窓の掃除をしているグラスの姿だけだ。
「今日から貴賓室じゃないんだ」
より豪華さをました部屋の装飾に、ハッとする。
寝ぼけてうっかりしていたけど、ここは王妃の部屋なのだ。
正確にはお飾り王妃だけれども。
「それにしてもおかしいわね。
確かに王様の声がしたんだけれど」
小首を傾げていると、小さな黒い物体が瞬時に肩に飛び乗ってきた。
「やっと目がさめたか」
ストーン国へやってきてから、どこかへ消えていたチューちゃんだ。
「ひょっとして、さっきのはチューちゃんだったのね」
「レオ王だと思って、あせっただろう」
私の掌に移動したチューちゃんは、どや顔をする。
「チューちゃんの物真似は、やっぱり世界一ね。
すっかり騙されたわ。
で、今までどこで何をしてたの」
「ローズに頼まれた木の実を探してたんだぞ」
「私が頼んだですって」
「忘れたのか。クーコの実だよ。
ストーン国へ着くなり、オイラに命令したくせに」
チューちゃんは小さな頬をプウと膨らませる。
「クーコの実?
目の疲れにきく木の実ね。
ああ、思い出したわ。
ポプリ国にはなかったけれど、気候の違うストーン国にはあるかなとひらめいたのよ。
ごめんなさい。
色々ありすぎて、すっかり忘れていたわ」
「ま、新婚だもんな。
フワフワしてもしょーがないか。
で、ローズ。
昨日の夜はどうだったんだい」
チューちゃんは、丸い目を細めて意味深に笑う。
「チューちゃんたらイヤーね。
おませなんだから」
「オイラは身体は小さいけれど、年はローズよりずーと上なんだぞ」
「そうだったわね」
ヤレヤレという感じでチューちゃんの小鳥位しかない頭をなでた時だった。
「ローズ様。
昨夜の今日ですよ。
よくまあ。
朝から、ネズミと楽しげに遊ぶ気になれますね」
ドカドカと足音をたてて、グラスがやってきた。
「昨夜の今日ってどういう意味かしら。
結局昨夜は王様とは何もなかったのよ」
そう小首を傾げた瞬間、グラスが声をはりあげる。
「それは王宮の者なら、誰でも知ってます。
オニキス女官が言いふりまわしているんですよ。
王様が不機嫌な顔で、すぐに閨房から退出してくると、『もう二度と王妃と寝所を共にしない』とおっしゃったって。
私は悔しいやら、悲しいやらで昨晩は一睡もできませんでした。
ローズ様とちがってね」
グラスは一気にそう言うと、両手で顔を覆い微かに肩を震わせた。
「心配かけてごめんなさい。
でも、噂ほど深刻な状況じゃないのよ」
「本当ですか。
オニキス女官が言ってことはデマなんでね」
パッと顔から手を離したグラスは、喜しそうに瞳を輝かす。
「いえ。本当よ。
王様は私には指一歩触れなかった」
「なのにどうしてローズ様は、そんなにニコニコできるんですか」
「それはね。グラス。
私は王様を信じているからなの」
「それって少し呑気すぎませんか」
「大丈夫よ」
『ああ。
けどその運命を変えてみせる。
私を信じて、しばらく待っていてくれないか』
真摯な眼差しでレオ王はそう願った。
あの言葉を胸に秘めているだけで、とても幸せな気持ちになるのだ。
「グラスも噂なんかに気にしないで。
そうそう。
チューちゃん情報によれば、この国にはクーコの実があるらしいの。
今から二人で摘みにいきましょうよ」
「わかりました。
私はローズ様が傷ついていないのなら、それでいいんです。
けど、ローズ様。
オニキス女官なんかに負けないで下さいよ」
グラスが口角とキュツと上げて笑った。
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