お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん

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四十八、お飾り王妃確定

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勉強嫌いだけれど活字好き。

そんな私が読む本は、恋愛小説と食べ物の本限定だった。

「身体にいい食べ物図鑑」

中でも、この本は「ハリス王とマーゴ姫」と双璧をなすお気に入りだった。

「ほらここよ、グラス。
クーコの実の効用が書いてあるのよ」

ポプリ国から持参した分厚い本をテーブルの上に置くと、小さな赤い実のイラスト入りページを指さす。

今日の王妃としての予定はゼロだ。

結婚式の翌日だもの。

皆がきっと気を使ってくれたのね。

おかげで窮屈なドレスからも解放されている。

すぐにでも木の実取りにでかけられるような動きやすい水色のワンピースは、着心地もとてもいい。

「まるでローズ様は薬師のようですね。
ポプリの離宮にいるときから、食用の花をたくさん育てたりしてましたし」

グラスはブーニャンの首元をなでながら、目を細める。

「ニャアアア」

ブーニャンは、喉をゴロゴロならして甘えているように見える。

使い魔の言葉がわからない人にはね。

けど、本当は嫌みを言ってるの。

「ローズはね。
薬師というより、ただのゲテモノ食いなのよ」
と。

まあ、当たらずとも遠からずってとこね。
 
ちょっと変わった食材に、興味津々なのだから。

「クーコの実はね。
目の疲れにきくのよ」

「そうですか。
深夜、布団にもぐって本を読む癖のあるローズ様に、ぴったりじゃないですか。
たっぷり摘んできましょう」

グラスはそう言うと、私にレース飾りのついた帽子を差し出してから、大きなバスケットを「よいしょ」とかかえた。

その時だ。

コツコツと扉がノックされ、あまり聞きたくない声がする。

「王妃様。オニキスでございます」

露骨に顔をしかめるグラスを手でたしなめて、オニキスの入室を許可した。

「おはようございます、王妃様。
そのような格好で、今からどこかへお出かけですか」

相変わらず黒ずくめの服を着たオニキス女官は、頭から爪先をなめるように見てくる。

「えーと、そうなのよ。
実はね」

と言いかけたが、グラスが先に声をだす。

「失礼ながら、オニキス女官。
プライベートな用事なので」

「なるほど。
行き先を尋ねるなということですね」

「そういうことです」

「よろしいでしょう。
今日は公務もお休みです。
あなたがついていてくれたら、大丈夫でしょうし」

いつも嶮しい表情のオニキス女官が、気のせいか少し和らいでいるように見える。

あれこれ詰問されて、外出を禁止されるかも、と不安になっていたので胸をなでおろした。

「今日ゆっくり休んだら、明日からまた公務をがんばりますから」

「いえ。王妃様。
王妃様はしばらく公務をされなくてけっこうです。
先ほどナール宰相からそう告げられ、とりいそぎお知らせにあがったのです」

「それはどういうことなのかしら」 
  
慣れない国での公務は非常に疲れる。 

休んでいいと言われたらホッとするはずなのに、どことなく毒のあるオニキス女官の口調に心が騒いだ。

「王妃様には子作りに専念していただきたいのですよ。
期限は一年。
もし、その間に子供ができない場合は、レオ王様に側妃をもらう手はずになっております」

オニキス女官の口元が意地悪くほころぶ。

「それは王様もご存じなのですか」

こちらに一度も意志確認なく、こんな重大な事を決めてしまうなんて、不快でしかない。

こみあげる怒りをグッとおさえて、冷静をよそおう。

「もちろんですわ。
王様は、側妃に私などをご所望で、すいぶんとまどっている次第です」

口先だけはしおらしいが、こちらに視線を移すオニキス女官の目は勝ち誇っていた。

「なんですって」

グラスと同時に声をはりあがる。

「おお、こわい。
私はただ決定事項を伝えに来ただけですのに。
では、失礼いたします」

オニキス女官は、いつもより一段と低く頭を下げると扉の外へ出て行った。

「ナール宰相は、王様に嫌われた私に子供なんかできるはずないとふんでいるのね。
一年すれば用済みになる私に、わざわざ公務を教えるのが嫌なのよ。
正式にお飾り王妃に決定だわ。
で、そのうちお払い箱王妃になるパターンね」

太くて長いため息をつく。
 
 
 


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