お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん

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五十一、立ち入り禁止区域

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数分ほど歩くと目的地へ到着する。

「クーコの木がこんな身近にあったなんて。
知らなかったわ」

「どうだ。オイラの情報収集力におそれいったか」

以前レオ王と訪れた礼拝堂の裏手には、殺風景な野原が広がっていたのだ。

礼拝堂と野原は高い垣根で隔てられていたが、垣根の一角にわからないように扉がつくられていたのだ。

チューちゃんに先導されて、それをくぐりぬけたとたん出くわす荒れ地に眉をひそめる。

王宮内にこんな場所があるなんて、信じられなかった。

「ストーン国の庭師って意外に怠慢なのね。
それからいうとポプリ国の庭師は、非常に真面目だわ。
裏表なく働いているもの」

まだ気分はポプリ国の王女なのね。

軽い優越感を覚えたもの。

「そうじゃないんだぜ。
ここは立ち入り禁止区域なんだ。
噂によれば、気味悪い化け物がいきなり襲いかかってくるらしい」

顎に手をそえて、考えぶかそうな顔をしているチューちゃんに、ブーニャンはグルグル尻尾を回しながらうなずいた。

「ローズ様。
これ以上先へは、入ってはいけません。
お城へ到着した時、ナール宰相から厳重に注意をうけたのを思いだしました。
ここのことだったんですね。
それに、私だってまだ死にたくありませんから」

グラスがバスケットをかかえたまま、一歩一歩後ずさりする。

それとは反対にブーニャンは、野原の真ん中むかって走り出してゆく。

「ニャーン。大丈夫よ。ローズ。
きっとあそこは安全よ。
なんの気配も感じられないもの」

「こら。ブーニャン。待ちなさい」

「ローズ様。そちらは危険ですって」

ブーニャンの後を追う私の後ろを、グラスが追いかけてくる。

結局荒れ野の真ん中までやってきた。

しばらく立ち止まり様子をうかがっていたけれど、特になにも変わったことはおこらない。

それどころか、探していたクーコの実が頭からふってくる。

チューちゃんが頼んだのね。

近くにそびえているクーコの木を、大量の小鳥達が揺らせている。

木々がしなる度に、小さな赤いクーコの実がパラパラと落ちてきた。

この実は美容にもとてもいいという。

美貌で知られている、他国のある女王が、毎日食しているほどだ。

「グラス。これで私達も美人になれるわよ」

スカートをひろげて、木の実をうけとめる。

「ローズ様。いくら誰もいないとはいえ、お行儀が悪すぎますよ。
そういうことは私におまかせください」

グラスは楽しそうに、左右に走り回っている。 

そうして一生懸命集めたクーコの実を、グラスが持参した布袋につめていると、お腹がギュルルとなった。

「ローズ様。すぐそこに小屋があります。
そろそろ、あそこでお昼にしましょうか」

どうやらナール宰相の忠告は、すっかりグラスの頭から消えてしまったようね。

「それにしても不思議ね。
どうしてナール宰相は、ここを立ち入り禁止区域にしているのかしら」

小屋に向かって歩きながら、後ろを歩くグラスをふりかえる。

「さあね。
クーコの実を、独り占めしたかったのかもしれませんね」

グラスが悪戯っぽく肩をすくめた。

「そういえば、クーコの木がこんな所にあるのも不思議なのよね。
誰かが、意図的に植えたとしか思えないわ」

そう言っているうちに小屋の前につく。

「お邪魔します。誰もいらっしゃらないと思いますが」

そう挨拶をしながら、扉をギギギと開いた時だった。

「まあ。なんて綺麗な人なの」

正面に飾られていた肖像画が目に飛び込んできた瞬間、驚きの声をあげる。

何枚かの絵は、どれも同じ女性を描いているようだ。

一番大きな絵の前には、テーブルが置かれていて、その上には瑞々しい花が花瓶の中でゆれている。

「それにしてもこの人。
どこかで、会ったことがあるような気がするわ」

流れるようなプラチナの髪。

透き通るようなエメラルドの瞳。

「そうだ。王様とそっくりだわ。
もしかしたら、この方がお母様のエレーナ王妃様なのかしら」 

どこか淋しげな微笑みをうかべる女性の絵を腕を組んで眺めていたら、背後から荒々しい声がする。

「貴様。ここで一体何をしている」
 
    
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