お飾り王妃のはずなのに、黒い魔法を使ったら溺愛されてます

りんりん

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五十三、使い魔の紹介

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「こういうのは、生まれて初めてだ。
なぜか、とても気持ちが高ぶるぞ」

当然のように隣に座ったレオ王は、グラスの用意したサンドイッチを手にするとかぶりつく。

あわわ。それは反則でしょ。

優雅な王のワイルドな食べ方に、ギャップ萌えする。

ナール宰相とグラスは向かいに座った。

ユリア騎士も誘ったのだけれど、丁寧に拒否される。

真面目な彼は扉付近に立っていた。

「これはうまい。グラス」

王様が、サンドイッチを見つめてうなる。

「そうですか。
それは光栄です。
料理人のサムにも伝えておきます。
さぞ、喜ぶでしょう」

グラスが顔をパアッと輝かして、声を弾ませた。

本当にサムを愛しているのね。

「中身は鶏のむね肉と、刻んだキュウリで正解かしら」

「ピンポーン。
さすが食いしん坊のローズ様ですね」

グラスの明るい声に、テーブルの上のチューちゃんと、下でうずくまっているブーニャンが楽しそうに鳴く。

「チチチ。チュウ」

「ニャーン」

「なんと、なんと」

そのとたん、ナール宰相が神経質そうに眉をひそめた。

「やはりここでの食事はやめましょう。
テーブルの上にネズミがいる。
不衛生きわまりない。
王様になにかあれば、あなたの首がとびますぞ」

そう言ってグラスに視線を移し、威嚇する。

「宰相の言うことはもっともです」

「王妃様もこうおっしゃってることだし、サッサとこんな所は出てゆきましょう。
それに、こう言っちゃなんですがね。
私は猫も大嫌いなんですよ」

ナール宰相が、テーブルに手をついて腰をあげた。

その瞬間、オズオズと声をだす。

「あのう宰相、もう少しだけお話を聞いていただけませんか」

「なんですか。王妃様」

そう。こんな私でも一応王妃なのだ。

無視することもできないナール宰相は、シブシブと席に座りなおす。

「ここにいるネズミのことなんですが」
 
そう切り出すと、掌の上にチューちゃんをのせる。

「王妃様、汚いですよ。
で、そのネズミがなにか」

ナール宰相はけげんそうに顔をよせてきた。

「この子は、ただのネズミじゃないんです。
実は私の使い魔で、名前はチューちゃんですのよ」

「はああ。使い魔? 
何ですかそれは」

宰相の間が抜けた声に、レオ王がプッと吹き出してしまう。

「使い魔とはな。
魔法使いの手下のことだ。
あれだけ、魔法使いの王妃を望んでおきながら、そんなことも知らないのか」

結婚前に、レオ王にはチューちゃんとブーニャンのことを話しておいていたの。

手下だなんて、言葉が乱暴すぎるけど、言っている意味はあっている。

レオ王はナール宰相に視線を移して、ニヤリとした。

「そう言えば。聞いたことはあります。
けど、実際見たのは初めてで、驚きました」

「そういうことだから、お願いします。
チューちゃんが食事中に、テーブルの上にいるのを許して欲しいの」

「わかりました。
コレが使い魔ねえ」

そう呟くと、ナール宰相はチューちゃんの頭を指で軽くつつく。

「王妃が、私以外に使い魔の紹介をするとわね。 
喜べ。ナール宰相。
どうやら、王妃に信頼されたようだぞ」

「本当ですか。それは光栄です」

「なら、こちらも王妃を信頼して、どうしてここが立ち入り禁止区域になったか理由をうちあけたらどうだろうか」
 
    
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