57 / 76
五十六、大切な人 ユリア視点
しおりを挟む
王様の警護の仕事は私の誇りである。
私の父は辺境の領主だ。
領地には、国の輸出量の大半をしめる石がとれる山がある。
その石とは魔法使いが魔法石を作るときに必要な石だ。
石は高品質で、高値で取引された。
石はストーン国の稼ぎ頭といっても過言ではない。
父の領地は国境に近く、スベル王国がすぐそこにせまっている。
スベル王国とは、この山を巡り長年争いがたえない。
ゆえに父は強い私兵をつくり、いつ起こるかもしれない戦いに備えている。
そんな父の元で育った私も、幼いころから兄と共に鍛えられた。
「将来、この領土は兄が継ぐ。
学問に秀でている長男は、うまく領地経営をしてくれるだろう。
そして、武家に秀でているユリアは、
私兵の長として、兄と力をあわせてこの地を守ってくれ」
大人になってからのある日、父は私達にこう告げた。
「もちろんです。
けれど、私はもっと広い世界で腕を磨きたいのです」
「わかった。ユリア。
だが、必ずここへ戻ってきてくれ」
父の了解をえて、武者修行にでようとした時、たまたま王様主催の剣大会が催されたのだ。
参加せずには、いられなかった。
そして、そこで優勝した私は、当時はまだ王子だったレオ様の護衛をまかされたのだ。
王様は魅力的な人である。
一見冷たそうだが、実は繊細で優しい気持の持ち主なのだ。
そんな王様につくす日々に、なんの憂いもなかった。
あの日、オニキス女官に出会うまでは。
そう。
いつしか、私はオニキス女官に惹かれていたのだ。
だが、オニキス女官は王様の愛人である。
そんな噂が王宮内でたえない。
真偽はわからなかった。
オニキス女官が、王様の思い人である
可能性がある限り、私の思いをうちわけることはできない。
苦しかった。
そんな中、私の目の前で、王様はオニキス女官への愛を完全否定したのだ。
「それじゃあ。その大切な人というのは、やはりオニキス女官のことですか。
レオ王の運命の人ですものね」
ローズウッド王妃様が、弱々しい声をあげ顔をくもらせる。
少し離れた所に立ち、その様子を見ていたが、王妃様がお気の毒でしかたなかった。
「いや。違う。
オニキス女官ではない。
以前言った運命というのは、ローズが考えているような意味ではないんだ。
今はそれだけしか言えないが」
王様がそう口にした時、目を丸くして驚いてしまう。
やはり噂はただの噂だったのだろうか。
どちらにせよ、オニキス女官の心は私でなく王様にあるのだが、気持が少し明るくなる。
オニキス女官のことを意識したのは、いつなのかは、はっきりとわからない。
ただナール宰相から頼まれて、王の専属女官として王宮に迎えるオニキスの身辺調査をした時、強い衝撃をうけたのは覚えている。
なんて不運な女なんだろう。
けれど、それにめげずしっかりと真面目に生きている。
そんな女は、私の回りのどこを探しても
見つからなかった。
貧乏平民の女が、努力を重ねて女官になってゆく。
その過程を見ているうちに、いつしか心の中にオニキス女官が住んでいたのだ。
私の父は辺境の領主だ。
領地には、国の輸出量の大半をしめる石がとれる山がある。
その石とは魔法使いが魔法石を作るときに必要な石だ。
石は高品質で、高値で取引された。
石はストーン国の稼ぎ頭といっても過言ではない。
父の領地は国境に近く、スベル王国がすぐそこにせまっている。
スベル王国とは、この山を巡り長年争いがたえない。
ゆえに父は強い私兵をつくり、いつ起こるかもしれない戦いに備えている。
そんな父の元で育った私も、幼いころから兄と共に鍛えられた。
「将来、この領土は兄が継ぐ。
学問に秀でている長男は、うまく領地経営をしてくれるだろう。
そして、武家に秀でているユリアは、
私兵の長として、兄と力をあわせてこの地を守ってくれ」
大人になってからのある日、父は私達にこう告げた。
「もちろんです。
けれど、私はもっと広い世界で腕を磨きたいのです」
「わかった。ユリア。
だが、必ずここへ戻ってきてくれ」
父の了解をえて、武者修行にでようとした時、たまたま王様主催の剣大会が催されたのだ。
参加せずには、いられなかった。
そして、そこで優勝した私は、当時はまだ王子だったレオ様の護衛をまかされたのだ。
王様は魅力的な人である。
一見冷たそうだが、実は繊細で優しい気持の持ち主なのだ。
そんな王様につくす日々に、なんの憂いもなかった。
あの日、オニキス女官に出会うまでは。
そう。
いつしか、私はオニキス女官に惹かれていたのだ。
だが、オニキス女官は王様の愛人である。
そんな噂が王宮内でたえない。
真偽はわからなかった。
オニキス女官が、王様の思い人である
可能性がある限り、私の思いをうちわけることはできない。
苦しかった。
そんな中、私の目の前で、王様はオニキス女官への愛を完全否定したのだ。
「それじゃあ。その大切な人というのは、やはりオニキス女官のことですか。
レオ王の運命の人ですものね」
ローズウッド王妃様が、弱々しい声をあげ顔をくもらせる。
少し離れた所に立ち、その様子を見ていたが、王妃様がお気の毒でしかたなかった。
「いや。違う。
オニキス女官ではない。
以前言った運命というのは、ローズが考えているような意味ではないんだ。
今はそれだけしか言えないが」
王様がそう口にした時、目を丸くして驚いてしまう。
やはり噂はただの噂だったのだろうか。
どちらにせよ、オニキス女官の心は私でなく王様にあるのだが、気持が少し明るくなる。
オニキス女官のことを意識したのは、いつなのかは、はっきりとわからない。
ただナール宰相から頼まれて、王の専属女官として王宮に迎えるオニキスの身辺調査をした時、強い衝撃をうけたのは覚えている。
なんて不運な女なんだろう。
けれど、それにめげずしっかりと真面目に生きている。
そんな女は、私の回りのどこを探しても
見つからなかった。
貧乏平民の女が、努力を重ねて女官になってゆく。
その過程を見ているうちに、いつしか心の中にオニキス女官が住んでいたのだ。
1
あなたにおすすめの小説
学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜
織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。
侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。
学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
厄介払いされてしまいました
たくわん
恋愛
侯爵家の次女エリアーナは、美人の姉ロザリンドと比べられ続け、十八年間冷遇されてきた。
十八歳の誕生日、父から告げられたのは「辺境の老伯爵に嫁げ」という厄介払いの命令。
しかし、絶望しながらも辺境へ向かったエリアーナを待っていたのは――。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる