【完結】可愛くない私に価値はない、でしたよね。なのに今さらなんですか?

りんりん

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3章ハミルトン王国での出来事

4、忘れられない夜

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 ある夜王宮でルネ王女お披露目の舞踏会が催された。

 ルネのたっての希望で王女専属教育係に任命されたけれど、この手のパーティーは超苦手だったので
こっそり会場をぬけ出し、中庭にある噴水前の長椅子に座りブツブツと愚痴をこぼす。

「アランのお兄様は温和ないい人みたいだけれど、その嫁は最悪だわ。
 お世辞笑いを浮かべてルネにすりよって、ルネの過去に探りをいれる姿はコワイわ。
 社交界って、やっぱり私にはムリだわ」

 地面からうかせた両足をブラブラさせながら、太いため息をつく。

「早く国に戻ってシロを抱っこしたいわ。シロは元気かしら」

 そう言って夜空を見上げたら、青白く輝く満月にニッーと笑うシロの顔が浮かびあがる。

「私がいないからって、調子にのって食べ過ぎるんじゃないわよ。
 それにしても、オマエはいつも気楽そうで羨ましいわ。
 こっちはね。
 ルネが王女になってからは儀式の連続で大変なのよ。
 王族社会ってめんどくさいわ」

 シロとの妄想会話を楽しんでいたら、ザワーと大きな音をたてて噴水が勢いよく水をあげた。

「盛大な水のムダ使いね。もったいない、もったいない」
と貧乏根性まるだしで高く伸びる水柱に視線を移した時だった。

 向こうから夜目にも麗しい貴公子が、こちらに向かって歩いてくるではないか。

「オリビア、ここにいたのか。
 ずいぶん探したんだぞ」

「その声はアランなのね。
 いつもと雰囲気が違うから、一瞬誰かわからなかったわ」

「だろうな。こうやって正装をすると、自分でも自分じゃないみたいだからな」

 照れたようにアランは頭をかくと、私の隣に腰をおろした。

 と同時にとてもいい香りが漂ってきて、私の鼻孔をくすぐる。

「ねえ、アラン。
 ずーと気になっていたんだけど、どうして私に自分の身分を隠していたの?
 そんなに私が信じられなかったわけ?」

「それはだな」

 それだけ言うとアランは沈黙した。

「それは?」

 アランの胸元に散りばめられた宝石の輝きにうっとりしていると、突然アランが声をはる。

「オリビアには王子という肩書じゃなくて、僕自身を見て欲しかったからだ」

「え?」

 思わず首を傾ける私にアランはさらに言葉を続けた。

「王族と言うだけで嫌われそうな気がして。
 オリビアにはヒョイ王子との苦い一件があるから」

「そりゃま、その通りだけど。
 でも私なんかにそんな気使いをしなくて良かったのに」

「オリビアだから必要だったんた!」

 アランが熱をおびた視線で私を見据える。
 
「私だからって……それはどういう意味かしら」

 頬を赤く染めながら尋ねると、身体を私の方向に向けたアランにギュッと抱きすくめられ、たくましい胸に顔をうずめる形になってしまった。

 なんとかアランから離れようとゴソゴソもがいていたら、アランの声が頭からふってくる。

「そんな事もわからないのか。
 僕はオリビアが好きなんだ。
 オリビアなしでは、生きていけないほど好きなんだ」

「そんな事を言ったらいけないわ。
 もしアランが王位継承者に選ばれたら、私なんかアランと釣り合わないもの」

 本当は気絶するほど喜しかったのに、現実を考えればこう口にするしかなかった。

「その心配はいらない。
 お母様が僕を王位継承候補からはずしてくれたんだ。
『本当はアランに王位を継いで欲しかったのだけど、ルネを探してくれたお礼よ。
 アナタの希望に従うわ』とね。
 これでもうバカのフリをする必要もなくなった。
 実は現在、異国の大学に研究者としてよばれている。
 給料も少ないし、研究の成果だってどうなるかわからない。
けど、挑戦してみたい。
オリビア。
良かったら、一緒について来てくれないか?」

「はい。アランとならどこまでもついていきます」

しっかりとアランの瞳を見据えて即答する。

「良かった。
断られたらどうしようかと悩んで、昨日の晩は眠れなかったんだ」

 アランはホッとしたような声でそう言うと、大きな手で私の髪を何度も優しくなでてくれた。

 きっと私達はこの夜の出来事を一生忘れないだろう。

 



 

 
 
 
 
 

 

 

 









 
 
 
 
 

 



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