永遠の命を持つ者~不老不死は幸せですか?~

夢野彩華

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6話 : 水の能力者

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自習室から逃げ出した私は外のベンチに腰を下ろした。心臓がずっとドキドキしてる…
初めて人からあんな目を向けられた。
ヒドラ族は、ずっとあんな目にさらされながらずっと生きてきたんだ…ずっとヒドラ族を理解しているつもりになっていた自分が馬鹿馬鹿しい。
ずっと頑張ってきた勉強も、夢も、希望もすべて無意味なものに思えた。
重いため息をつき、うなだれていると頭に温かいものが触れた。
「!?」
驚いて顔を上げると、美和の家で会った無愛想な印象を受けた一ノ瀬亜矢。確か…本名はセレン。亜矢は持っていた紅茶が入ったペットボトルを私に差し出した。
「あ、ありがとう…」
さっき頭に触れたのは紅茶だったのか…
亜矢は何も言わず隣に座って自分の紅茶を飲んだ。私も同じように亜矢がくれた紅茶を口に運んだ。相変わらず亜矢は無言だったけどこうして並んで座っているだけでほっとした。自分の存在が否定されていないような気がしたから。
ふいに亜矢が口を開いた。
「あんた、ヒドラ族だったんだね」
「あ、うん…。ねぇ、一ノ瀬さん。どうしてここに?」
「ここの大学の事務で今は働いてるだけよ。自販機で紅茶を買おうと思って来てみたらあんたがすごく怖い顔してたから」
「みんな、私がヒドラ族だって気づいたみたいで…」
「…だから何?」
「え…」
無神経な言い方にかっとした。亜矢は他人に興味がないの?しかし、返って来た言葉は意外だった。
「ばれて避けられるようになったから全部諦めるの?ずっと逃げ続けて傷つきたいの?私は嫌よ。そんなの」
「じゃあ…どうしろって言うのよ…あんな目を向けられながら生きるのは嫌。ヒドラ族ってだけでなんで…」
思わず本音が出た。
「あんたが人間だと思っていた時、ヒドラ族のことどう思ってた?」
「………」
何も言えなかった。ヒドラ族の事を理屈で考えていただけで、いざ自分がその立場になったらなんて考えたこともない。今思うと…私がしていたことは結局ただの同情に過ぎなかったのだ。
亜矢は、考え込んだ私を見た。
「私は、あんたのこと偽善者だと思った。」
「だろうね、今思うとすごく馬鹿馬鹿しい。」
「人間の癖に私達の何が分かるんだよって思った。」
「………」
亜矢の言う通りだ。
亜矢は相変わらず無愛想だったけどそんなに嫌だとは思わなかった。
「でも、」
と、突然亜矢がつぶやいた。
「あんたのこと別に嫌いってわけじゃないよ。実際会ったばかりだし。一緒にいる時間も増えるだろうし。」
「………え?」
「だからっ、あんたとなら仲良く出来るんじゃないかって思っただけ。いちいち言わせないでよ」
そう言うと亜矢はそっぽをむいた。
私は思わず笑った。
「何で笑ってるの…」
亜矢は呆れて言った。
私は勢いよく立ち上がった。
「ありがとう。なんだか元気でた。私もね亜矢さんと仲良くなりたいな。」
「セレンでいいよ。麻衣」
「じゃあセレン。私のことはレイアって呼んで」
「分かった。」
そう言って亜矢は軽く微笑んだ。
はじめて亜矢の笑顔を見た…
「そろそろ行くね。セレンも忙しいだろうし」
「……」
亜矢は何も言わなかった。やっぱり無口だなぁと思いながら歩き出そうとすると
「レイア。」
ふいに亜矢に呼び止められた。
「どうしたの?」
「どうしても辛いんなら、私達と一緒に旅する?」
「え…」
「私とミューズとカーミラは3人で旅しながら暮らしてるの。」
「………」
「別に今すぐとは言わないから、私達がこの街を出るまでには返事がほしい。」
「……いつ出るの?」
「今年中には。」
「今年中って…あと4ヶ月くらい…」
「ただ、私達と来るなら家族や友達とは別れることになるけど、ヒドラ族にとってはこれが一番傷つかない道だよ」
そっか…亜矢も過去に何かあったんだ…だから私のこと心配してくれている…
でも…
「まだ…分からない。ここには家族とか、大事な友達もいるし…」
「大切だと思ってるものの中身をちゃんと見てみな。半分くらい偽物だから」
「そんなのまだ分からないじゃん。セレンがそうだったってことでしょ」
「想像に任せる。じゃあね。」
そう言うと亜矢は行ってしまった。
「もう……」
やっぱりセレンは話づらい…


次の日。
いつものように大学へ行った。
いつも一緒にいる友達は相変わらず一緒にいてくれたから内心ほっとしたけれど、周りのみんながずっと私を見ている。大学中に私の噂が広まったようだ。
痛い視線を向けられると本当に惨めになる。

それにしても…どうしてばれたんだろう…

全く心当たりがなかった。そもそも私がヒドラ族だって知ったのは一昨日のことなのに…
まさか…美和との話を聞かれた…?でもそんな偶然…。

昼、今日は弁当にした。あんな目を向けられながら食堂で食べるなんて気が引ける。
真由美達は食堂で食べるらしい。
誰もいない場所に来るとほっとした。
食べようとした時、3人の男子がやってきた。場所を変えようかとも思ったけれど、逃げるのも嫌だったから諦めた。
すると、3人のうちの1人が話かけてきた。
「なぁ、お前ってヒドラ族なんだろ?」
「……関係ないでしょ。そんなの」
私は相手にせず立ち去ろうとしたが、
「変な力持ってるんだろ。見せてみろよ」
「………は?」
隣にいた2人も話に入ってきた。
「ヒドラ族って不老不死だろ。気持ち悪っ」
「何も言わないのかよ。ちょっと傷つけたら分かるんじゃね」
「不老不死だったら人に命分けられるとか?」
無神経な言い方にかっとした。
「さっきからヒドラ族ヒドラ族って…馬鹿にしてるの?ヒドラ族だから悪いなんてありえないでしょ。そんなことも分からないの?」
「ヒドラ族がいいやつな訳ないだろ」
「自分がヒドラ族だから庇いたいだけだろ」
「お前が人間だったらヒドラ族馬鹿にしていただろうな」
私はだんだん自分の感情が制御出来なくなってきた。
「馬鹿にしないで!ヒドラ族だって感情や知識もある。同じ人間よ!」
その時、私の背後から突然激しい水が波となって3人に押し寄せた。
「うわっ!」
「流されるぞ、逃げろ!」
「冗談じゃねえよ。こんなとこに水とかっ」
なんて騒ぎながら3人は駆けて行った。
私は波を消した。

「……私の能力は……水だ。」
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