転生したので冒険者になります!

瑞靏

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1話

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緑の国、リスフィア王国。

私が転生して15年間暮らしてきた国だ。
小国だが国の真ん中に大きな湖があって水不足とは縁遠く、資源が豊富でとても暮らしやすい国である。

しかし、困ったところが2つある。

1つ目は、魔王領と呼ばれる魔物や魔獣、魔人がいる領域と密接していること。
魔王領の奥にある城にいる魔王軍とは友好条約を結んでいるため、危険はないが、魔王軍に属していない魔物や魔獣、魔人は人を襲う。

2つ目は、リスフィアは魔王領と隣国に挟まれるような形で存在しているのだが、その隣国が雪国であることだ。

大昔、リスフィアにオルガロスという超巨大な蛇型の魔物が出現した。その魔物はとても凶暴で、町や村を襲い、壊滅させていった。

Aランクの冒険者では歯が立たず、Sランクの冒険者でも手に余るほど。友好関係を結んでいる国からの救援も、周りの魔王領や雪国で足止めされ、リスフィアは殆ど壊滅状態だった。


リスフィア国内で、危険があった時、周りの国からの速やかな救助は望めない。隣国はほぼ鎖国していて、友好も何もない。

この2つの理由により、リスフィアは他の小国と比べ、冒険者ギルドが多い。
冒険者と言っても、リスフィアでは多種多様な仕事をする。魔物の駆除や討伐、薬草や鉄などの採集はもちろん、災害等が起こった時に対処をしたり、他国へ救援しに行ったりもする。リスフィアにおける冒険者は、日本でいう自衛隊のようなものになっている。

因みに、この時オルガロスを倒したのは突如現れたテュールと名乗った男だ。その男は勇者と褒め称えられ、今では有名な寝物語として子供たちに聞かせられている。

ギルドの人手が足りなくなると困るため、冒険者に定員はなく、採用試験も難しくはない。しかし、緊急時を除き、低ランクの冒険者には給金がある訳では無いから、冒険者一筋の人はそう多くない。感覚的には稼げるアルバイトに近い。それでも身の危険のあるクエストを受ければ国からそれに見合った分の保険金が出る。プラスして報酬もつくため、それ目当てで冒険者になる人も多いのだ。高ランクになれば国から給金が出るため、そういった人達は冒険者一筋で生きているのだろうが。

私の家は少し前の先祖様が莫大な借金を残してくれたおかげで貧乏だ。その上、兄2人に姉1人。弟3人に、妹2人という9人兄弟で、両親2人と祖父母という大家族。さらに家族全員がよく食べるせいで、食費が馬鹿にならない。

兄や姉は稼ぎのいい冒険者や官吏になって仕送りをし、両親と弟妹はここ、リセールで農業を営んでいる。それでもとんでもない額の借金は消えず、いつまでたっても質素な生活を送っている。

今回、私が冒険者になると言ったらなけなしのお金をかき集めて大急ぎで装備を整えてくれたのだ。

感謝してもしきれない。

「おい、ミリア。ギルドに行くんじゃないのか」

じっと川に映り込む自分の姿を見ながら考え事をしていると、少し遠くにいる艶やかな黒髪で、クールな印象を持つの幼馴染の男の子、アラン・シュリングから声をかけられた。その後ろには同じく幼馴染の綺麗な金髪で、長髪の華麗な女の子、シャルロット・マーチェスがいる。

アランはここら辺で有名な商人の家の次男坊で、シャル(愛称)は元傭兵一家の貴族の一人娘。2人の家は農家と比べるとお金もあるし、冒険者にならなくても暮らしていけるのだが、2人とも冒険者になりたいらしく、親から許可をもぎ取ったそうだ。

「うん、行こう」

軽く返事をしてギルドへ一緒に向かう。
リスフィアの南にあるこの町、リセールは、魔王領に近い辺境である。魔王領に近いゆえにギルドが幾つかあるが、新人を募集し、育成してるギルドはひとつだけ。上級冒険者が在中しているギルドが殆どだ。

冒険者にはSからEまでのランクがある。Sは様々なクエストをこなしてきた熟練の冒険者で、Eは新人ひよっこの冒険者。

冒険者ランクを上げるには魔物の駆除や討伐のクエストをこなすのが手っ取り早い。
Eランクでは、殆ど採集クエストばっかで貰えるお金も少ない。だから、魔物駆除、討伐をメインとして活動していこうとギルドに来る前から決めていた。

わたくし、ミリアはそこまで運動神経が良くありませんので、後衛がいいかと思うのですけれど」

顎に手を当ててシャルは言った。

いやいや、私、運動神経が悪いわけじゃないからね。2人が化け物並みに良すぎるだけで、前世よりも運動神経いいからね、私。

「ああ。ミリアは後衛で、シャルは中衛か前衛。俺は前衛だろう」 

まあ、この2人とパーティを組む時点で予想はしてたからいいけど。
2人が圧倒的に強すぎるだけだから。

シャルは、最年少でSランク冒険者になったというシャルのお祖父さんから訓練を受けていたため、戦闘能力がとても高い。アランもその訓練に時折混ぜてもらっていたらしいから、普通の少年より断然強いと思う。

私は、まあ。家が貧乏で働いてたから。腕力と足腰の強さと弓なら負けない。

「なら私は弓かな」

私の家は農家だ。しかし、冬は全くと言っていいほど作物が採れない。リスフィアには、寒さに強い作物が少ないのだ。

だから、弓を使って森で兎や鹿、狐などを狩る。たまにはぐれた魔物や魔獣を仕留めることもあった。その為、少しは弓の扱いには慣れていると思う。

前世から弓に興味を持っていた私は、獲物を捕るために一生懸命練習した。そのおかげで、家族の中で1番命中率がいい。的や動いていない動物なら百発百中だし、素早く動いている動物でも矢を当てられるようになった。

「ええ。ミリアの弓の腕は素晴らしいとおじい様とも仰っていましたし、それで良いのではないでしょうか」

思案顔でシャルが言った。

以前、アランに連れられ、シャルのお爺さんに私の弓の腕を披露したことがあった。その時、私の弓の腕を絶賛し、執拗に冒険者ならないかと聞いてきたのだ。まあ、半分くらいお世辞だと思っている。それでも褒めてくれたことは嬉しいので歓喜狂乱したが。

ふと、シャルの腰に携わっている剣に目がついた。刃の部分が細い。

「シャルはレイピアとか細身の剣が得意なの?」
「はい。こういった剣は軽いので折れやすいのですが、素早く急所を狙いやすく、アランのような筋力がない私に合っているのです」

シャルは腰に携えている細身の剣を撫でながら言った。
剣には上品な装飾が施されていて、高級感を漂わせている。

「おじい様が私に見繕ってくださったのです……あ、そうでした」

そう言ってシャルは持ってきていた鞄をあさり始めた。
ごそごそと鞄の中を探り、目当てのものを見つけたのか、引っ張り出した。

「これを、ミリアにと」

それは、弓だった。

「え、待って。その小さい鞄からどうして弓が?」

「ああ、この鞄には拡張と軽量化の魔法がかけられているのです。私には仕組みはわかりませんが」

そんな某児童向けのファンタジーな本みたいに……。便利そうでいいな。

「荷物がある時は私に言ってくださいな。持ちますので」
「あ、ありがとう」

ううん、天然も混じってるのかな。可愛い。
シャルが渡してきた弓は、ファンタジーでありそうな弓の形をしていた。聖なる弓、みたいな。

「この弓の攻撃はほんの僅かでも魔力を込めると、光属性が付与エンチャントされるそうです。貰い物ですので、どうぞお気になさらず使ってください」
「え、ありがとう……?」

武器を買うお金がないのでありがたいが、いいのだろうか。この強そうな弓、高そうなんだが。

「ちなみに、それは伸縮可能な素材で作られたそうで、小さくして持ち運びも楽にできますよ」

弓をぐっと縮めるように押すと、小さくなった。
逆に引っ張ってみると、元のサイズに戻る。
なんの素材が使われているのだろう。不思議だ。謎すぎる。

「そろそろ着くぞ」

アランの声でギルドの屋根が見えていることにに気がつくいた。人が集まるだけあって、めちゃくちゃ大きい。

ギルドの新人募集解禁日の今日、リセールやその周辺の町から冒険者になるためやってくる人がたくさんいる。隣町に住んでいる従兄弟もいた。

ギルド入り口で人が集まり、何かを行っているようだ。

「何だろあれ……」
「ああ、あれは新人募集の受付さ。パーティを組んで冒険者と模擬戦するか、1人でするかを決めて名前を書くんだ」

疑問をそのまま口にすると、近くにいた若めのお兄さんが教えてくれた。冒険者なのだろうか。

列が進み、私たちの番が来た。
用意されている紙に名前と使用する道具を書く。道具や武器は各持参してきた物でも、ギルドの備品でも良いそうだ。

順番に訓練所へ向かっていき、そこでギルドの冒険者と模擬戦をする。
その結果次第で合否と、ランクが決まるらしい。

なら頑張らなくては。お金を稼ぐために、できるだけ高いランクを狙いたい。

「お次のミリア・レーヴェル様、シャルロット・マーチェス様、アラン・シュリング様。訓練所A-1までお越しください」

ギルドのロビーで座って待っているとアナウンスされた。
ロビーの奥にあるクエスト受付のところで放送しているのだろう。受付嬢がマイクを使っているのを先程見た。

訓練所A-1ということは、訓練所Bとか、訓練所Cがあって、さらにそれが複数あるということなのだろうか。

流石はリスフィアでも有数のギルドだ。
ここのギルドはリスフィアの王都に本部を置き、全国各地に支部がある。リセール支部は魔物領と隣接しているため支部の中でも大きい方であり、設備も整っている。

立ち上がり、2人とともに訓練所A-1へと向かった。
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