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3話
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「貴方、公国の暗殺者ですね」
シャルは疑問形ではなく、断言した。
「その足の運び方や攻撃の避け方。その剣術は公国出身の暗殺者独特のものです。なぜ貴方のような者がこの国に?」
私やアランには分からなかったが、シャルには分かったようだ。お祖父さんから教わったのかな。
シャルの言葉にアランは警戒して、私を後ろに追いやった。
公国は世界有数の大国であり、領土が広く、文明も発達している。しかし、それらは度重なる戦争によって勝ち取って来たものであり、自ら発展してきた訳では無い。今現在も軍の整備に励み、暗殺者や、スパイを育てている。いつしか、またどこかの国に戦争を仕掛けるのだろう。
そんな公国の暗殺者がこのリスフィアにいるはおかしい。確かにこの国は資源が豊かではあるが、公国とは遠く、隣が魔王領と雪国なため、乗っ取ったとしてもあまり旨味はない。
「はは、よく知ってるなァ。こっちで知ってるヤツはいないと思ったんだが」
カラカラとガウは笑った。
「誰かに教えて貰ったのかい。……ああ、マーチェスにはあの爺さんがいたか」
ガウは眉を顰める。
シャルのお祖父さんにいい思い出がないのだろうか。そもそも知り合いなのだろうか。
「御託はいい。なぜここにいる」
警戒心むき出しのままアランは言った。手は大剣にかけられている。
ビリビリとした、触れれば切れるような空気を醸し出している。
「そんな警戒しないでくれ。別に悪さをしに来た訳じゃない。簡単に言うと、オレは公国から逃げてきたのさ」
逃げる。公国から、逃げてきた。
それは、一体どういう………?
「くく、ガウとそこまで戦えるとはな」
突如、訓練所の入口から渋い男の人の声が聞こえた。
振り返って見ると、厳つく、顔に大きな傷のある男性がいた。誰だこのおっさん。
「マスター……!」
ガウは驚き、その男性に駆け寄った。
って、え?マスターって……ギルドマスターのこと?なんでこんなところに。
「俺はこのギルドのマスター、ドゼルだ。こいつの素性が気になっていたようだな」
ドゼルは2人に向かって言った。まあ、公国の関係者だと言われると怪しく感じるのは事実である。私も気にはなっていた。
「こいつは公国の任務で失敗してな。機密の情報やら公国の情勢やらを脳内から消され国外追放された。こいつの素性は俺が保証している」
ギルドマスターは、潔白で、誠実で、剛健で、冒険者や職員からの信頼がなければなることは出来ない。ギルドは、冒険者や職員からの信頼はもちろん、その地に住む住人などからの信頼があってこそ成り立っているのだ。
つまり、ギルドマスターの言葉は信頼出来るってこと。
ギルドマスターの説得(?)の甲斐あって2人はビリビリとした雰囲気を鎮めた。
「で、だ。3人とも合格だ。Cランクが妥当か。登録しておけ」
ドゼルは職員に向かって言い、職員は手元にある機械を弄る。微かな機械音のあと、3枚のカードが出てきた。
「これは冒険者だということを証明するカードです。個人情報が登録されています」
職員がそう言って渡してきたカードは銀色で真ん中に模様があるだけだった。個人情報なんてどこにも書かれていない。一見、ただのカードだ。
「カードの中央にある模様に触れますと、情報が浮かび上がる、という仕組みになっています。今触れたことで指紋の情報が登録されたため、これ以降は本人でしか起動できません」
職員の言葉のとおりに模様を触ると、私の名前とランクが表示された。タッチパネルなのか。
それにしても指紋認証か!めちゃくちゃ進んでるな!
「ランクや個人情報の他にも、クエスト成功率や成績が表示されます」
よく出来てるな、このカード。一体どんな技術で出来ているのだろう。
「こちらがケースとなります。特別な鉱物で作られており頑丈ですので、多少の衝撃ならば緩和されます」
大きめの革のケースが渡された。カードの他にも色々と入りそうだな……。
こちらの世界に来て初めて見る技術。それに目を輝かせていたのだろうか。アランが笑う気配がした。美人の笑顔って、破壊力抜群で、目に悪いよね。
「ミリア、すごい嬉しそうですね」
顔をふっと緩ませてシャルは笑った。あー眩しい。美人の笑顔は眩しい。
目に見えて分かるような感じだったのか。少し恥ずかしい。精神年齢では2人よりもだいぶ上の筈なのに。
「まァ最初は誰しもそうなる」
ガウはガハハと笑って、私の頭を強く撫でた。豪快な人だな。ていうか力強い。首もげる。
シャルは疑問形ではなく、断言した。
「その足の運び方や攻撃の避け方。その剣術は公国出身の暗殺者独特のものです。なぜ貴方のような者がこの国に?」
私やアランには分からなかったが、シャルには分かったようだ。お祖父さんから教わったのかな。
シャルの言葉にアランは警戒して、私を後ろに追いやった。
公国は世界有数の大国であり、領土が広く、文明も発達している。しかし、それらは度重なる戦争によって勝ち取って来たものであり、自ら発展してきた訳では無い。今現在も軍の整備に励み、暗殺者や、スパイを育てている。いつしか、またどこかの国に戦争を仕掛けるのだろう。
そんな公国の暗殺者がこのリスフィアにいるはおかしい。確かにこの国は資源が豊かではあるが、公国とは遠く、隣が魔王領と雪国なため、乗っ取ったとしてもあまり旨味はない。
「はは、よく知ってるなァ。こっちで知ってるヤツはいないと思ったんだが」
カラカラとガウは笑った。
「誰かに教えて貰ったのかい。……ああ、マーチェスにはあの爺さんがいたか」
ガウは眉を顰める。
シャルのお祖父さんにいい思い出がないのだろうか。そもそも知り合いなのだろうか。
「御託はいい。なぜここにいる」
警戒心むき出しのままアランは言った。手は大剣にかけられている。
ビリビリとした、触れれば切れるような空気を醸し出している。
「そんな警戒しないでくれ。別に悪さをしに来た訳じゃない。簡単に言うと、オレは公国から逃げてきたのさ」
逃げる。公国から、逃げてきた。
それは、一体どういう………?
「くく、ガウとそこまで戦えるとはな」
突如、訓練所の入口から渋い男の人の声が聞こえた。
振り返って見ると、厳つく、顔に大きな傷のある男性がいた。誰だこのおっさん。
「マスター……!」
ガウは驚き、その男性に駆け寄った。
って、え?マスターって……ギルドマスターのこと?なんでこんなところに。
「俺はこのギルドのマスター、ドゼルだ。こいつの素性が気になっていたようだな」
ドゼルは2人に向かって言った。まあ、公国の関係者だと言われると怪しく感じるのは事実である。私も気にはなっていた。
「こいつは公国の任務で失敗してな。機密の情報やら公国の情勢やらを脳内から消され国外追放された。こいつの素性は俺が保証している」
ギルドマスターは、潔白で、誠実で、剛健で、冒険者や職員からの信頼がなければなることは出来ない。ギルドは、冒険者や職員からの信頼はもちろん、その地に住む住人などからの信頼があってこそ成り立っているのだ。
つまり、ギルドマスターの言葉は信頼出来るってこと。
ギルドマスターの説得(?)の甲斐あって2人はビリビリとした雰囲気を鎮めた。
「で、だ。3人とも合格だ。Cランクが妥当か。登録しておけ」
ドゼルは職員に向かって言い、職員は手元にある機械を弄る。微かな機械音のあと、3枚のカードが出てきた。
「これは冒険者だということを証明するカードです。個人情報が登録されています」
職員がそう言って渡してきたカードは銀色で真ん中に模様があるだけだった。個人情報なんてどこにも書かれていない。一見、ただのカードだ。
「カードの中央にある模様に触れますと、情報が浮かび上がる、という仕組みになっています。今触れたことで指紋の情報が登録されたため、これ以降は本人でしか起動できません」
職員の言葉のとおりに模様を触ると、私の名前とランクが表示された。タッチパネルなのか。
それにしても指紋認証か!めちゃくちゃ進んでるな!
「ランクや個人情報の他にも、クエスト成功率や成績が表示されます」
よく出来てるな、このカード。一体どんな技術で出来ているのだろう。
「こちらがケースとなります。特別な鉱物で作られており頑丈ですので、多少の衝撃ならば緩和されます」
大きめの革のケースが渡された。カードの他にも色々と入りそうだな……。
こちらの世界に来て初めて見る技術。それに目を輝かせていたのだろうか。アランが笑う気配がした。美人の笑顔って、破壊力抜群で、目に悪いよね。
「ミリア、すごい嬉しそうですね」
顔をふっと緩ませてシャルは笑った。あー眩しい。美人の笑顔は眩しい。
目に見えて分かるような感じだったのか。少し恥ずかしい。精神年齢では2人よりもだいぶ上の筈なのに。
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