13 / 401
第1章 英雄と竜帝
第13話 勇者、傍観する。
しおりを挟む
目下には現実離れした光景が広がっていた。そこでは魔剣と竜帝の鱗がぶつかり合う、けたたましい大音響が洞穴内に響かせている。竜帝とヴァルがほぼ互角の戦いを繰り広げていた。さすがにヴァルがやや押されているようにも見える。
「……これ、本当に現実か?」
ヴァルがたった一人で竜帝の元に向かってしまったため、置き去りにされた討伐隊一行は後から追い付くまでに時間がかかった。そして、ようやく追い付いた先での光景がこれである。驚く他ない。
「夢ではないのは、確かでしょうね。」
ジュリアがロアの頬をつねりながら答える。
「いてて、何すんだよ。」
割りと強めにつねられたため、抗議する。
「さて、どうしたもんかな。」
眼前の状況を見たファルは何やら決めあぐねている。
「どうするって、どうしなくても良くない?コレ。」
今、下手なことをするとヴァルの邪魔になりかねない。かといって、加勢しなければ、ヴァルが負けてしまうかもしれない。
「やるしかない。援護するぞ。」
ファルはすかさず、ロアの剣に魔力を付与し、次なる魔術の準備に取りかかった。飛竜の時と同じ氷槍を使おうとしているようだ。
「アイスロック・ジャベリン!」
彼の手元に瞬く間に氷槍が形成されていく。投擲する体勢をとり、チャンスを伺っている。すると、その時、ヴァルが一旦後ろに飛び退いた。彼は目線だけでこちらに何か合図を送ってくる。恐らく察してくれたのだろう。すかさず、氷槍を竜帝に向けて投擲する。丁度、竜帝もはヴァルへの追撃を入れようとしているところだった。
「こいつを食らえ!」
氷槍は竜帝に向かって、吸い込まれるように飛んでいった。
「よし!いけるぞこれは」
まるで自分が放ったかのように、ロアは期待の声を上げる。氷槍はそのまま竜帝に命中し、その鱗へ深々と刺さっていった。
「おおっ!やった!」
ロアだけでなく、ほかのメンバーもその様子に歓喜の声を上げる。しかし、様子がおかしい。
「良く見ろ!」
ファルが注意を促す。一同が竜帝のほうを見ると、先程の氷槍が完全に消え失せ、霧散していた。竜帝の体に傷一つ付いていなかった。最初から突き刺さっていなかったかのように。
「これがバーニング・コートだ。生半可な武器や魔法など通用せぬよ。覚えておきたまえ。」
ヴァルが憎々しげに語る。そのまま、彼は竜帝との戦いへと身を投じた。
「へ?《馬場に行くコット》?なにそれ、おいしいの?」
「バーニング・コートだよ!馬鹿野郎。一種の防御障壁みたいなもんだ。上位の竜は魔術も使えるんだよ。」
「竜が魔法?嘘だろ、おい。」
最初に戦った飛竜は下位種であり、知能はそれほど高くはない。上位の竜、ドラゴン・ロードクラスともなれば、魔術を使うどころか知能は人間を遥かに凌駕しているものも多い。竜帝との遭遇前に思念波を送ってきたり、先程目の当たりにした防御障壁等、人間であれば高位の魔術師でなければ行使できない魔術をいとも簡単に行使できるのだ。
「半端ないじゃねえか。そんなやつにどうやって勝つんだよ!」
驚愕の事実を知らされ、ロアは半狂乱になって慌てふためく。
「それでも、何とかするんだよ。」
ファルは新たな魔術の準備に取りかかっている。
「つべこべ言っていないで、さっさとやるわよ!」
ジュリアも戦槌を手に竜帝へと向かっていく。他のメンバーも攻撃体勢に入っている。
「……どうすんだよこれ。」
ロアはただただ、途方に暮れるしかなかった。そこにはロアだけが取り残される形になった。
それからしばらく、竜帝との戦いは繰り広げられ、膠着状態から次第に討伐隊側がやや有利とも言える状況になってきていた。その戦いはほぼヴァルとジュリアが中心となって攻撃を繰り広げていた。ヴァルほどではないが、ジュリアも十分にひけをとらない戦いぶりであった。彼女の戦槌は相手に目につくような手傷を与えてはいないものの、命中時の衝撃は相手を怯ませるのには十分効果的であった。
ファルの方はひたすら援護に専念していた。相手の防御障壁がある関係上、大してダメージを与えることができないのは理解しているので、竜帝への牽制目的で大岩を生じさせ、それを放っている。戦槌と同様、熱の防御障壁では防ぐことができないようで、怯ませることは可能なようだった。これはロック・インパクトと呼ばれる魔術のようである。
「俺、別に要らないじゃん。」
激戦が繰り広げられるその一方で、ロアはいつまでたっても加勢できずにいた。挙げ句の果てに、自分はいなくても大丈夫なのではないかとさえ思っていた。
度重なる連携攻撃の前に、ついに竜帝は大きく怯んだ。その隙を逃がさず、ヴァルは魔剣をおおきく抱えあげ、竜帝へと飛びかかっていった。
「これで終わりだ!」
その瞬間、竜帝は首をもたげ大きな口をヴァルへと向けた。
《バカめ!かかりおったわ!》
その声とともに、口からは閃光が放たれたのだった。一瞬にしてヴァルの体はその閃光に包まれた。そのままヴァルの体は吹き飛ばされ、洞穴の壁に叩きつけられた。その体は完全に真っ黒焦げになっていた。
「ヴァル!」
討伐隊一同が一斉に声を上げる。その声にヴァルはピクリとも反応しない。たった一瞬のうちに一同は絶望の縁へと叩きつけられた。
《人間風情が!身の程を知るが良い!》
「……これ、本当に現実か?」
ヴァルがたった一人で竜帝の元に向かってしまったため、置き去りにされた討伐隊一行は後から追い付くまでに時間がかかった。そして、ようやく追い付いた先での光景がこれである。驚く他ない。
「夢ではないのは、確かでしょうね。」
ジュリアがロアの頬をつねりながら答える。
「いてて、何すんだよ。」
割りと強めにつねられたため、抗議する。
「さて、どうしたもんかな。」
眼前の状況を見たファルは何やら決めあぐねている。
「どうするって、どうしなくても良くない?コレ。」
今、下手なことをするとヴァルの邪魔になりかねない。かといって、加勢しなければ、ヴァルが負けてしまうかもしれない。
「やるしかない。援護するぞ。」
ファルはすかさず、ロアの剣に魔力を付与し、次なる魔術の準備に取りかかった。飛竜の時と同じ氷槍を使おうとしているようだ。
「アイスロック・ジャベリン!」
彼の手元に瞬く間に氷槍が形成されていく。投擲する体勢をとり、チャンスを伺っている。すると、その時、ヴァルが一旦後ろに飛び退いた。彼は目線だけでこちらに何か合図を送ってくる。恐らく察してくれたのだろう。すかさず、氷槍を竜帝に向けて投擲する。丁度、竜帝もはヴァルへの追撃を入れようとしているところだった。
「こいつを食らえ!」
氷槍は竜帝に向かって、吸い込まれるように飛んでいった。
「よし!いけるぞこれは」
まるで自分が放ったかのように、ロアは期待の声を上げる。氷槍はそのまま竜帝に命中し、その鱗へ深々と刺さっていった。
「おおっ!やった!」
ロアだけでなく、ほかのメンバーもその様子に歓喜の声を上げる。しかし、様子がおかしい。
「良く見ろ!」
ファルが注意を促す。一同が竜帝のほうを見ると、先程の氷槍が完全に消え失せ、霧散していた。竜帝の体に傷一つ付いていなかった。最初から突き刺さっていなかったかのように。
「これがバーニング・コートだ。生半可な武器や魔法など通用せぬよ。覚えておきたまえ。」
ヴァルが憎々しげに語る。そのまま、彼は竜帝との戦いへと身を投じた。
「へ?《馬場に行くコット》?なにそれ、おいしいの?」
「バーニング・コートだよ!馬鹿野郎。一種の防御障壁みたいなもんだ。上位の竜は魔術も使えるんだよ。」
「竜が魔法?嘘だろ、おい。」
最初に戦った飛竜は下位種であり、知能はそれほど高くはない。上位の竜、ドラゴン・ロードクラスともなれば、魔術を使うどころか知能は人間を遥かに凌駕しているものも多い。竜帝との遭遇前に思念波を送ってきたり、先程目の当たりにした防御障壁等、人間であれば高位の魔術師でなければ行使できない魔術をいとも簡単に行使できるのだ。
「半端ないじゃねえか。そんなやつにどうやって勝つんだよ!」
驚愕の事実を知らされ、ロアは半狂乱になって慌てふためく。
「それでも、何とかするんだよ。」
ファルは新たな魔術の準備に取りかかっている。
「つべこべ言っていないで、さっさとやるわよ!」
ジュリアも戦槌を手に竜帝へと向かっていく。他のメンバーも攻撃体勢に入っている。
「……どうすんだよこれ。」
ロアはただただ、途方に暮れるしかなかった。そこにはロアだけが取り残される形になった。
それからしばらく、竜帝との戦いは繰り広げられ、膠着状態から次第に討伐隊側がやや有利とも言える状況になってきていた。その戦いはほぼヴァルとジュリアが中心となって攻撃を繰り広げていた。ヴァルほどではないが、ジュリアも十分にひけをとらない戦いぶりであった。彼女の戦槌は相手に目につくような手傷を与えてはいないものの、命中時の衝撃は相手を怯ませるのには十分効果的であった。
ファルの方はひたすら援護に専念していた。相手の防御障壁がある関係上、大してダメージを与えることができないのは理解しているので、竜帝への牽制目的で大岩を生じさせ、それを放っている。戦槌と同様、熱の防御障壁では防ぐことができないようで、怯ませることは可能なようだった。これはロック・インパクトと呼ばれる魔術のようである。
「俺、別に要らないじゃん。」
激戦が繰り広げられるその一方で、ロアはいつまでたっても加勢できずにいた。挙げ句の果てに、自分はいなくても大丈夫なのではないかとさえ思っていた。
度重なる連携攻撃の前に、ついに竜帝は大きく怯んだ。その隙を逃がさず、ヴァルは魔剣をおおきく抱えあげ、竜帝へと飛びかかっていった。
「これで終わりだ!」
その瞬間、竜帝は首をもたげ大きな口をヴァルへと向けた。
《バカめ!かかりおったわ!》
その声とともに、口からは閃光が放たれたのだった。一瞬にしてヴァルの体はその閃光に包まれた。そのままヴァルの体は吹き飛ばされ、洞穴の壁に叩きつけられた。その体は完全に真っ黒焦げになっていた。
「ヴァル!」
討伐隊一同が一斉に声を上げる。その声にヴァルはピクリとも反応しない。たった一瞬のうちに一同は絶望の縁へと叩きつけられた。
《人間風情が!身の程を知るが良い!》
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~
枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。
同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。
仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。
─────────────
※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。
※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。
※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる