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第1章 英雄と竜帝
第36話 勇者、勝利する。 ~そして、伝説へ~
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「……ん?ここは?」
ロアは見覚えのある場所で目覚めた。前にも同じようなことがあった気がする。
「気が付いたか?気分はどうじゃ?」
自分が寝ているベッドの側に一人の少女がいた。あれ?誰だったっけ?
「なんじゃ、まだ気分が悪いのか?」
まだ、頭がボーッとしていた。自分が何をしていたのか、思い出せない。
「これ!聴いておるのか!返事をせい!」
声を出そうにも、思うように言葉が出てこない。「ん?ああ?」
「まさか、記憶喪失にでもなったのか?」
言うなり突然、彼女は自らの額をロアの額にぶつけてきた。ほとんど頭突きに近い状態だった。
「むー?……なんじゃ、異常はないではないか!」
額をしばらく付けた後、離れてから異常はないことを悟ったようだ。似たようなことを前にもされたような……、
「思い出した!!ヴァルは!ヴァルはどうしたんだ!」
「何を言っておる。あやつはそなたが倒したであろうが。」
倒した?倒したのだろうか?まだ頭の中が混乱している。
「えーい!しっかりせい!このたわけがっ!!」
突如視界からサヨの姿が消える。頬が痛い。殴られたようだ。
「わーっ!思い出した、思い出した!」
向き直り、必死に無事をアピールする。しかし、サヨはすでに二発目の体勢に入っていた。
バチーン!!
為す術もなく、二撃目も食らった。
「だめだ。もう、これは死んだ。」
「もう、知らぬ!」
機嫌を損ねてしまったようだ。
「……ところで、あの二人はどこへ行ったんだ?」
「あの二人ならば、先代勇者を弔いに行ったぞ。」
先代勇者カレルのことだろう。ロアはあの後、簡易的に埋葬し、弔いはした。しかし、当時は名前すら知らない状態だったので、墓碑銘はなにもなかった。弔いにと言ったが、誰にも場所を教えていないはず。
「そなたが丸二日、寝込んでおる間に記憶を探って、 教えてやったのじゃ。場所の特定には苦労したぞ。」
合点がいった。サヨが記憶を探れるということを忘れていた。
「その後はクルセイダーズの本部まで戻ると言っておった。報告なり何なり、後処理があると言っておった。そなたには目が覚めたらよろしくとな。」
いろいろ話したいこともあったが、二人は忙しいのだろう。また会いたければ、本部に乗り込んでやればいい。
「それより、そなたはこれからどうするつもりなのじゃ?行く当てはあるのか?」
ない。何もなかった。もとより、行く当てのない旅だったのだ。目的地どころか、目的もない。
「では目的を与えてやろう。」
与える?与えるような目的が何かあるのだろうか?
「あのならず者、はぐれ竜、レギンを討伐するのじゃ。」
「へ?」
ロアは目が点になった。なんだか超難度クエストを与えられた気がする。
「そうだ!思い出した。あったんだよ!目的が!じゃ!早速行ってくる。」
ベッドから急に立ち上がり、部屋を後にしようとする。
「待てい。その目的とは〈逃げる〉ということではなかろうな?」
ロアは聞き終わる前に急いで飛び出した。何としてでも逃げなければ。
「嘘偽りがなければ、その頭の中を見せてみよ!」
しかし、まわりこまれた!突如、目の前にサヨがあらわれた!
「おや?どうなされました?」
しかし、かこまれた!部屋の出口にはクエレ・ブレがあらわれた!もはや〈にげる〉の選択肢はなくなっていた。
「私が悪うございました。」
できうる限りのきれいな土下座をした。
「左様か。引き受ける気になったか?すまんのう。」
サヨは満面の笑みを浮かべていた。こんな顔は初めて見た気がする。逆に怖い。
「悪いが、さっそく目的を変更させてもらうぞ。」
変更?一体何を変更するというのだろうか?
「妾の護衛をせよ!あの憎い性悪竜を成敗しにいくぞ!」
「サヨ様、いってらっしゃいませ。」
クエレは出口から離れ、二人に道を譲った。
「ちょ、クエレさん、サヨを行かせてもいいのか?」
「構わんぞ。クエレとは既に相談済みじゃ。復興や里の移転は任せた。妾は成敗に専念できるということじゃ。」
「えーっ!族長が職務放棄かよ!」
「罪人の処罰も職務のうちじゃ!ほれ、行くぞ!」
ロアはずるずると引きずられていく。無理矢理連行されているようだった。
「いやだー!行きたくない!」
「観念せい!そなたも勇者の職務を全うせい!」
《……これで勝ったと思わぬことだ……。》
突然、ロアの頭の中に語り掛ける者がいた。
(……??気のせいか?)
気のせいだろうか?とにかく今はそう思うことにした。
二人の旅路は始まった。これからも幾重もの困難が待ち受けていることだろう。そして、二人の旅はいずれ伝説となるだろう。
ロアは見覚えのある場所で目覚めた。前にも同じようなことがあった気がする。
「気が付いたか?気分はどうじゃ?」
自分が寝ているベッドの側に一人の少女がいた。あれ?誰だったっけ?
「なんじゃ、まだ気分が悪いのか?」
まだ、頭がボーッとしていた。自分が何をしていたのか、思い出せない。
「これ!聴いておるのか!返事をせい!」
声を出そうにも、思うように言葉が出てこない。「ん?ああ?」
「まさか、記憶喪失にでもなったのか?」
言うなり突然、彼女は自らの額をロアの額にぶつけてきた。ほとんど頭突きに近い状態だった。
「むー?……なんじゃ、異常はないではないか!」
額をしばらく付けた後、離れてから異常はないことを悟ったようだ。似たようなことを前にもされたような……、
「思い出した!!ヴァルは!ヴァルはどうしたんだ!」
「何を言っておる。あやつはそなたが倒したであろうが。」
倒した?倒したのだろうか?まだ頭の中が混乱している。
「えーい!しっかりせい!このたわけがっ!!」
突如視界からサヨの姿が消える。頬が痛い。殴られたようだ。
「わーっ!思い出した、思い出した!」
向き直り、必死に無事をアピールする。しかし、サヨはすでに二発目の体勢に入っていた。
バチーン!!
為す術もなく、二撃目も食らった。
「だめだ。もう、これは死んだ。」
「もう、知らぬ!」
機嫌を損ねてしまったようだ。
「……ところで、あの二人はどこへ行ったんだ?」
「あの二人ならば、先代勇者を弔いに行ったぞ。」
先代勇者カレルのことだろう。ロアはあの後、簡易的に埋葬し、弔いはした。しかし、当時は名前すら知らない状態だったので、墓碑銘はなにもなかった。弔いにと言ったが、誰にも場所を教えていないはず。
「そなたが丸二日、寝込んでおる間に記憶を探って、 教えてやったのじゃ。場所の特定には苦労したぞ。」
合点がいった。サヨが記憶を探れるということを忘れていた。
「その後はクルセイダーズの本部まで戻ると言っておった。報告なり何なり、後処理があると言っておった。そなたには目が覚めたらよろしくとな。」
いろいろ話したいこともあったが、二人は忙しいのだろう。また会いたければ、本部に乗り込んでやればいい。
「それより、そなたはこれからどうするつもりなのじゃ?行く当てはあるのか?」
ない。何もなかった。もとより、行く当てのない旅だったのだ。目的地どころか、目的もない。
「では目的を与えてやろう。」
与える?与えるような目的が何かあるのだろうか?
「あのならず者、はぐれ竜、レギンを討伐するのじゃ。」
「へ?」
ロアは目が点になった。なんだか超難度クエストを与えられた気がする。
「そうだ!思い出した。あったんだよ!目的が!じゃ!早速行ってくる。」
ベッドから急に立ち上がり、部屋を後にしようとする。
「待てい。その目的とは〈逃げる〉ということではなかろうな?」
ロアは聞き終わる前に急いで飛び出した。何としてでも逃げなければ。
「嘘偽りがなければ、その頭の中を見せてみよ!」
しかし、まわりこまれた!突如、目の前にサヨがあらわれた!
「おや?どうなされました?」
しかし、かこまれた!部屋の出口にはクエレ・ブレがあらわれた!もはや〈にげる〉の選択肢はなくなっていた。
「私が悪うございました。」
できうる限りのきれいな土下座をした。
「左様か。引き受ける気になったか?すまんのう。」
サヨは満面の笑みを浮かべていた。こんな顔は初めて見た気がする。逆に怖い。
「悪いが、さっそく目的を変更させてもらうぞ。」
変更?一体何を変更するというのだろうか?
「妾の護衛をせよ!あの憎い性悪竜を成敗しにいくぞ!」
「サヨ様、いってらっしゃいませ。」
クエレは出口から離れ、二人に道を譲った。
「ちょ、クエレさん、サヨを行かせてもいいのか?」
「構わんぞ。クエレとは既に相談済みじゃ。復興や里の移転は任せた。妾は成敗に専念できるということじゃ。」
「えーっ!族長が職務放棄かよ!」
「罪人の処罰も職務のうちじゃ!ほれ、行くぞ!」
ロアはずるずると引きずられていく。無理矢理連行されているようだった。
「いやだー!行きたくない!」
「観念せい!そなたも勇者の職務を全うせい!」
《……これで勝ったと思わぬことだ……。》
突然、ロアの頭の中に語り掛ける者がいた。
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