83 / 401
第2章 黒騎士と魔王
第83話 さらば友よ!また逢う日まで!!
しおりを挟む
「いやあ、ギルド長にあんな過去があったなんてなあ!」
祝賀会ムードに包まれた冒険者ギルドを後にしながら余韻に浸っていた。主に、ギルド長の武勇伝の、だけど。
「もう、やめましょうよ。ギルド長がかわいそうです。」
「そう言うエルちゃんこそ、大笑いしてたじゃないか。」
「うう。見てたんですね。だって……もう、何年も笑った事なんてなかったから……。」
そうか。エルちゃんの境遇からすると、そういうことになるのか。でも、笑えるような環境になってよかったね!
「それにみんな笑ってるだけじゃありませんでしたよ?自分もギルド長ほどではないけど、似たような経験があるって。ギルド長に親近感が湧いた、ってみんな励ましてました。」
みんな、多かれ少なかれ、失敗ぐらいはしてるんだな。自分だけではなかったんだ。
「おっ!あれがクルセイダーズの支部所か!」
次はクルセイダーズの支部所に用事があった。用事と言っても、今回、世話になった人たちに別れの挨拶をしにきたんだ。エドワードがメンバーを待機させているとのことだ。
「よう、相変わらず元気そうじゃねえか?」
建物の前にはウネグがいた。向こうも相変わらず、ふてぶてしさ全開だった。
「おめえと別れる前に最後の挨拶をしておきたかったンだよ。あ、それと宣戦布告な!」
「宣戦布告!?」
いきなり喧嘩売られたあ!よりにもよって、一番相手にしたくない人に!
「俺ァ、最初おめえのことをとんでもねえヘタレだと思ってたんだがよ。結局、蓋を開けてみれば、どうだ?そんなタマじゃなかったンだってことがわかったワケよ!」
うう、やっぱ、なんでもかんでもハッキリ言いたいことを言う人だな。なんか目を付けられているらしいことはよくわかった。
「なんたって、魔王やエドの旦那とタイマン張りやがった!しかも、魔王を自分の女にしちまった上に、旦那に手加減して勝ちやがった!そんなヤツぁ、今まで俺は見たことがねえ!」
随分、熱っぽく語るな。そんだけ、俺を評価してくれてるっってことか。……でも、ちょっと待って。エルちゃんはまだ俺の彼女ではない。そう見えるなら、嬉しいけど。
「そこでだ!俺とタイマンしようぜ!」
なっ!?タイマン?無理無理!絶対無理!今の勢いで来られたら絶対負ける。
「……冗談だよ!本気にしてんじゃねえよ!どうせヤッても、俺は勝てねえ。今はな!」
よかった。ホントにどうしようかと思った。
「今度会ったときは勝ってみせるぜ!そんときまで誰にも負けんじゃねえぞ!俺が勝つ価値がなくなっちまうからな。」
結局、いつかは対決するハメになるのか。どうにかして会わなくてもいい方法を探さないと。
「それと最後に俺の舎弟を紹介しておこうと思ってよ。……おっ、ちょうど、ヤツがきたみてえだ。」
誰だ?後ろを振り向くと、見覚えのあるヤツがいた。馬に乗った力士がそこにいた。ヴォルフ!ていうか今はスモウ・ライダーじゃねえか!
「顔はもう知ってるだろうがよ、コイツは俺と故郷が同じなンだよ。名前はチョンだ。お前らにはヴォルフって名乗ってるだろうけど、意味は同じでオオカミだ。」
見た目と名前のイメージが違う。どちらかというと熊みたいなんだが。
「先輩、ウス!」
馬から下りてきた力士はウネグの前まで行き、かしこまった様子で挨拶した。
「聞いたぜ?おめえ、コイツを一撃で倒したそうじゃねえか?コイツぁ、俺の舎弟の中じゃ一番タフなんだぜ?それを倒しちまうンだからよ。対したもンだぜ!」
「ウス!勇者ドンは強かったでゴワス!」
「おめえも強くなりたかったら、コイツを見習いな!おめえも東国で修行してきたみてえだけど、まだまだ強えヤツは山ほどいるからな。」
「ウス!!」
様子を見てるとホントに仲のいい先輩、後輩のようだ。
「おっと、挨拶はこれぐらいにしとくか。後ろもつっかえてるしよ。俺らは旦那とは別れて、コイツの初陣がてら、一稼ぎしてくるつもりだ!」
と言って、馬に飛び乗った。彼の馬はすごい派手な装飾の付いた馬具が取り付けられている。これなら遠目に見ても、彼だとわかりそうだ。
「じゃあな、アバヨ!!」
「うす!!先輩!」
「そなたまで、力士と同じ口調になってどうするのじゃ!」
つい、つられてしまった。彼はそのまま、颯爽と走り去っていった。スモウ・ライダーと共に……。
「さて、次はジェイの番ニャ!」
次は猫の人がやってきた。この人とはあまりからみがなかったが、見ていてすごい強いのがわかった。ウネグと同じぐらい敵に回したくない人だ。
「今回の任務は色々あったけど、楽しかったニャ。また、機会があればご一緒したいニャ。」
と言って握手してきた。肉球の弾力がすごい!
「君みたいなヒーローは初めて見たニャ!子供達にあわせてあげたら、すごい喜びそうニャ!」
「え?子供がいるんすか?」
この人のということは、間違いなく同じ猫人なんだろうけど、子猫ってことになるよな。想像しただけで、すごいかわいいだろうな、とは思う。
「この中では唯一の既婚者なのニャ。これから家に帰って休養を取るつもりニャ。」
これから一稼ぎするウネグとは対照的だな。まあ、それは傭兵でも人それぞれってことか。
「では。さらばなのニャ!」
「バイバイにゃ!」
「だから、そなたまで同じになってどうする!」
猫の人は去って行った。
「彼らも貴公のことを気に入ってしまったようだな。」
「ていうか、一名、喧嘩を売ってきたんだが?」
「ハハハ、彼なりの讃辞だと思っておきたまえ。彼らほどの実力者に認められたのだ。これほど、最大級の栄誉は他にない。」
自分と同じ新人達からも慕われ、ベテランからも認められた。素直に嬉しい。とはいえ、その期待に負けないように、勇者としてがんばっていかなきゃいけない。
「エドワードはこれからどうするんだ?」
「私とクロエはこれから新たなる任務に付く予定だ。生憎、基本的に私には休みなどないのだよ。」
「大変だな。でもあんまり無理すんなよ。」
「ああ。次の目的地は遠い。その旅路で休息を取りながら向かうつもりだ。」
忙しいなりにも、休み方をしっかりか考えているんだな。これがプロフェッショナルというやつか。
「それから、私の呼び方について。貴公と私の仲だ。これからはエドで構わんよ。」
「わかった。じゃあ、俺の方もロアって呼んでくれ。」
「そうだな。そうさせてもらおう。」
「最後に。君に一つ伝言がある。」
「へ?誰から?」
俺からしたら、故郷を離れた以上、知り合いなんて数えるほどしかいない。誰からだ?まさか……、
「風刃の魔術師からだ。手が空いたら、ノウザン・ウェルまで来い、とのことだ。」
ファルからだと?アイツからお声がかかるとは。というかそれ以前に、ノウザン。ウェルってどこ?俺、土地勘ないからわかんない。
「ノウザン・ウェルじゃと!あんな場所に呼び出すとは、ダンジョン攻略でもするつもりか?」
「ダンジョン!?」
実在したんだ!本とかの資料でしか見たことがないシロモノだ。なんでも地下迷宮に入って、魔王なりドラゴンなりを倒して、お宝をゲットする話はよく見かけた。
「ダンジョンを甘く見ない方がよいぞ。特にお前のような駆け出しの冒険者はな。ベテランじゃろうと一歩間違えれば、即、死じゃ!」
なんかまた、やっかい事に巻き込まれそうな予感がしてきた。今度は強敵を倒すとかじゃない。罠とかその他恐ろしい何かを相手にしなきゃならないのか。
「詳細は到着してから話す、とのことだ。あとは、覚悟を決めてから来い、とも言っていた。君なら問題ないだろう。」
いやいやいや!問題あるって!未知の脅威が待ち受けてるのに。俺の奥義じゃ、アクシデントに対抗できないぞ。
「魔術師殿が無策で待っているとは思えん。その道のプロを雇っている可能性はある。胸を借りて、手取り足取り教えてもらうと良い。」
その道のプロ、ダンジョンのプロがいるんだ?水先案内人みたいなもんか。
「何はともあれ、互いに行き先は違うが、健闘を祈ろうではないか!」
「ああ!そうだな!そっちも死ぬなよ!」
「君が石と一体化しないことを祈ろう!」
「なにそれ?どういう意味?」
「地下迷宮に挑むものにとってのお約束のようなもんじゃ。意味合い的には一寸先の闇に気を付けろ、という格言に似ておる。」
「……?」
「ハハハ!行けば、イヤというほど実感することになるさ!」
意味を知らない俺にとってはなんのことやら、ちんぷんかんぷんだ。業界用語みたいなの言われてもわからん!でも、怖いな。「石と一体化」って何の意味があるというのか。
「では、また会おう!勇者ロア!」
「じゃあな!エド!」
エドは背を向けて、去って行った。と見ていたところで誰かの視線を感じた。クロエだ。
「あなたに言っておきたいことがあります。」
あいかわらず、冷ややかな目で俺を見ている。こわい。ヴァルとか圧倒的に強い奴らとはまた別の怖さがある。
「あなたのことはある程度、見直しました。イグレス様に勝ったことは認めてあげます。ですが次はイグレス様が絶対に勝ちます。それだけはお忘れなきよう。」
「んん、ああ、ハイ。」
「それと……、」
クロエの目線の先にはエルちゃんがいた。なんか俺に対しての目つきとは明らかに変化させている。珍しく、優しそうな目で見ている。
「確か、エルという名前でしたね?あの娘を大切にしてあげなさい。心から支えてあげるのですよ。」
そうか。エルちゃんに対して何も言ってなかったからわからなかったけど、この人なりに気遣ってくれてたのか。
「……返事は?」
「ハ、ハイ!もちろんですとも!」
「ワタクシにはそれが気がかりなのです。あなたにそれが全うできるかどうかが。……かつて、エドが私にそうしてくれたように……。」
最後のほうは聞き取りづらかったな。もしかして、この人自身のことを言っているのか?
「何でもありません。最後の方は聞かなかったことにしておいて下さい。では、お達者で。」
彼女は駆け足でエドの後を追いかけていった。
「フフ、なかなか味なことをしおるわ、あの女。そなたらはあの二人を見習うがよい。良い手本じゃ。」
手本ねえ?見習えとかいわれても、なあ?エルちゃんはともかく、俺はエドとキャラが違いすぎる。俺は、あんなイケメンとは違う。俺みたいなブサメンじゃアイツみたいにはなれそうにない。でも……俺なりに強くなってみせるさ!
「じゃあ、次の目的地も決まったことだし、支度しに行こうぜ。」
祝賀会ムードに包まれた冒険者ギルドを後にしながら余韻に浸っていた。主に、ギルド長の武勇伝の、だけど。
「もう、やめましょうよ。ギルド長がかわいそうです。」
「そう言うエルちゃんこそ、大笑いしてたじゃないか。」
「うう。見てたんですね。だって……もう、何年も笑った事なんてなかったから……。」
そうか。エルちゃんの境遇からすると、そういうことになるのか。でも、笑えるような環境になってよかったね!
「それにみんな笑ってるだけじゃありませんでしたよ?自分もギルド長ほどではないけど、似たような経験があるって。ギルド長に親近感が湧いた、ってみんな励ましてました。」
みんな、多かれ少なかれ、失敗ぐらいはしてるんだな。自分だけではなかったんだ。
「おっ!あれがクルセイダーズの支部所か!」
次はクルセイダーズの支部所に用事があった。用事と言っても、今回、世話になった人たちに別れの挨拶をしにきたんだ。エドワードがメンバーを待機させているとのことだ。
「よう、相変わらず元気そうじゃねえか?」
建物の前にはウネグがいた。向こうも相変わらず、ふてぶてしさ全開だった。
「おめえと別れる前に最後の挨拶をしておきたかったンだよ。あ、それと宣戦布告な!」
「宣戦布告!?」
いきなり喧嘩売られたあ!よりにもよって、一番相手にしたくない人に!
「俺ァ、最初おめえのことをとんでもねえヘタレだと思ってたんだがよ。結局、蓋を開けてみれば、どうだ?そんなタマじゃなかったンだってことがわかったワケよ!」
うう、やっぱ、なんでもかんでもハッキリ言いたいことを言う人だな。なんか目を付けられているらしいことはよくわかった。
「なんたって、魔王やエドの旦那とタイマン張りやがった!しかも、魔王を自分の女にしちまった上に、旦那に手加減して勝ちやがった!そんなヤツぁ、今まで俺は見たことがねえ!」
随分、熱っぽく語るな。そんだけ、俺を評価してくれてるっってことか。……でも、ちょっと待って。エルちゃんはまだ俺の彼女ではない。そう見えるなら、嬉しいけど。
「そこでだ!俺とタイマンしようぜ!」
なっ!?タイマン?無理無理!絶対無理!今の勢いで来られたら絶対負ける。
「……冗談だよ!本気にしてんじゃねえよ!どうせヤッても、俺は勝てねえ。今はな!」
よかった。ホントにどうしようかと思った。
「今度会ったときは勝ってみせるぜ!そんときまで誰にも負けんじゃねえぞ!俺が勝つ価値がなくなっちまうからな。」
結局、いつかは対決するハメになるのか。どうにかして会わなくてもいい方法を探さないと。
「それと最後に俺の舎弟を紹介しておこうと思ってよ。……おっ、ちょうど、ヤツがきたみてえだ。」
誰だ?後ろを振り向くと、見覚えのあるヤツがいた。馬に乗った力士がそこにいた。ヴォルフ!ていうか今はスモウ・ライダーじゃねえか!
「顔はもう知ってるだろうがよ、コイツは俺と故郷が同じなンだよ。名前はチョンだ。お前らにはヴォルフって名乗ってるだろうけど、意味は同じでオオカミだ。」
見た目と名前のイメージが違う。どちらかというと熊みたいなんだが。
「先輩、ウス!」
馬から下りてきた力士はウネグの前まで行き、かしこまった様子で挨拶した。
「聞いたぜ?おめえ、コイツを一撃で倒したそうじゃねえか?コイツぁ、俺の舎弟の中じゃ一番タフなんだぜ?それを倒しちまうンだからよ。対したもンだぜ!」
「ウス!勇者ドンは強かったでゴワス!」
「おめえも強くなりたかったら、コイツを見習いな!おめえも東国で修行してきたみてえだけど、まだまだ強えヤツは山ほどいるからな。」
「ウス!!」
様子を見てるとホントに仲のいい先輩、後輩のようだ。
「おっと、挨拶はこれぐらいにしとくか。後ろもつっかえてるしよ。俺らは旦那とは別れて、コイツの初陣がてら、一稼ぎしてくるつもりだ!」
と言って、馬に飛び乗った。彼の馬はすごい派手な装飾の付いた馬具が取り付けられている。これなら遠目に見ても、彼だとわかりそうだ。
「じゃあな、アバヨ!!」
「うす!!先輩!」
「そなたまで、力士と同じ口調になってどうするのじゃ!」
つい、つられてしまった。彼はそのまま、颯爽と走り去っていった。スモウ・ライダーと共に……。
「さて、次はジェイの番ニャ!」
次は猫の人がやってきた。この人とはあまりからみがなかったが、見ていてすごい強いのがわかった。ウネグと同じぐらい敵に回したくない人だ。
「今回の任務は色々あったけど、楽しかったニャ。また、機会があればご一緒したいニャ。」
と言って握手してきた。肉球の弾力がすごい!
「君みたいなヒーローは初めて見たニャ!子供達にあわせてあげたら、すごい喜びそうニャ!」
「え?子供がいるんすか?」
この人のということは、間違いなく同じ猫人なんだろうけど、子猫ってことになるよな。想像しただけで、すごいかわいいだろうな、とは思う。
「この中では唯一の既婚者なのニャ。これから家に帰って休養を取るつもりニャ。」
これから一稼ぎするウネグとは対照的だな。まあ、それは傭兵でも人それぞれってことか。
「では。さらばなのニャ!」
「バイバイにゃ!」
「だから、そなたまで同じになってどうする!」
猫の人は去って行った。
「彼らも貴公のことを気に入ってしまったようだな。」
「ていうか、一名、喧嘩を売ってきたんだが?」
「ハハハ、彼なりの讃辞だと思っておきたまえ。彼らほどの実力者に認められたのだ。これほど、最大級の栄誉は他にない。」
自分と同じ新人達からも慕われ、ベテランからも認められた。素直に嬉しい。とはいえ、その期待に負けないように、勇者としてがんばっていかなきゃいけない。
「エドワードはこれからどうするんだ?」
「私とクロエはこれから新たなる任務に付く予定だ。生憎、基本的に私には休みなどないのだよ。」
「大変だな。でもあんまり無理すんなよ。」
「ああ。次の目的地は遠い。その旅路で休息を取りながら向かうつもりだ。」
忙しいなりにも、休み方をしっかりか考えているんだな。これがプロフェッショナルというやつか。
「それから、私の呼び方について。貴公と私の仲だ。これからはエドで構わんよ。」
「わかった。じゃあ、俺の方もロアって呼んでくれ。」
「そうだな。そうさせてもらおう。」
「最後に。君に一つ伝言がある。」
「へ?誰から?」
俺からしたら、故郷を離れた以上、知り合いなんて数えるほどしかいない。誰からだ?まさか……、
「風刃の魔術師からだ。手が空いたら、ノウザン・ウェルまで来い、とのことだ。」
ファルからだと?アイツからお声がかかるとは。というかそれ以前に、ノウザン。ウェルってどこ?俺、土地勘ないからわかんない。
「ノウザン・ウェルじゃと!あんな場所に呼び出すとは、ダンジョン攻略でもするつもりか?」
「ダンジョン!?」
実在したんだ!本とかの資料でしか見たことがないシロモノだ。なんでも地下迷宮に入って、魔王なりドラゴンなりを倒して、お宝をゲットする話はよく見かけた。
「ダンジョンを甘く見ない方がよいぞ。特にお前のような駆け出しの冒険者はな。ベテランじゃろうと一歩間違えれば、即、死じゃ!」
なんかまた、やっかい事に巻き込まれそうな予感がしてきた。今度は強敵を倒すとかじゃない。罠とかその他恐ろしい何かを相手にしなきゃならないのか。
「詳細は到着してから話す、とのことだ。あとは、覚悟を決めてから来い、とも言っていた。君なら問題ないだろう。」
いやいやいや!問題あるって!未知の脅威が待ち受けてるのに。俺の奥義じゃ、アクシデントに対抗できないぞ。
「魔術師殿が無策で待っているとは思えん。その道のプロを雇っている可能性はある。胸を借りて、手取り足取り教えてもらうと良い。」
その道のプロ、ダンジョンのプロがいるんだ?水先案内人みたいなもんか。
「何はともあれ、互いに行き先は違うが、健闘を祈ろうではないか!」
「ああ!そうだな!そっちも死ぬなよ!」
「君が石と一体化しないことを祈ろう!」
「なにそれ?どういう意味?」
「地下迷宮に挑むものにとってのお約束のようなもんじゃ。意味合い的には一寸先の闇に気を付けろ、という格言に似ておる。」
「……?」
「ハハハ!行けば、イヤというほど実感することになるさ!」
意味を知らない俺にとってはなんのことやら、ちんぷんかんぷんだ。業界用語みたいなの言われてもわからん!でも、怖いな。「石と一体化」って何の意味があるというのか。
「では、また会おう!勇者ロア!」
「じゃあな!エド!」
エドは背を向けて、去って行った。と見ていたところで誰かの視線を感じた。クロエだ。
「あなたに言っておきたいことがあります。」
あいかわらず、冷ややかな目で俺を見ている。こわい。ヴァルとか圧倒的に強い奴らとはまた別の怖さがある。
「あなたのことはある程度、見直しました。イグレス様に勝ったことは認めてあげます。ですが次はイグレス様が絶対に勝ちます。それだけはお忘れなきよう。」
「んん、ああ、ハイ。」
「それと……、」
クロエの目線の先にはエルちゃんがいた。なんか俺に対しての目つきとは明らかに変化させている。珍しく、優しそうな目で見ている。
「確か、エルという名前でしたね?あの娘を大切にしてあげなさい。心から支えてあげるのですよ。」
そうか。エルちゃんに対して何も言ってなかったからわからなかったけど、この人なりに気遣ってくれてたのか。
「……返事は?」
「ハ、ハイ!もちろんですとも!」
「ワタクシにはそれが気がかりなのです。あなたにそれが全うできるかどうかが。……かつて、エドが私にそうしてくれたように……。」
最後のほうは聞き取りづらかったな。もしかして、この人自身のことを言っているのか?
「何でもありません。最後の方は聞かなかったことにしておいて下さい。では、お達者で。」
彼女は駆け足でエドの後を追いかけていった。
「フフ、なかなか味なことをしおるわ、あの女。そなたらはあの二人を見習うがよい。良い手本じゃ。」
手本ねえ?見習えとかいわれても、なあ?エルちゃんはともかく、俺はエドとキャラが違いすぎる。俺は、あんなイケメンとは違う。俺みたいなブサメンじゃアイツみたいにはなれそうにない。でも……俺なりに強くなってみせるさ!
「じゃあ、次の目的地も決まったことだし、支度しに行こうぜ。」
0
あなたにおすすめの小説
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜
ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。
アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった
騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。
今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。
しかし、この賭けは罠であった。
アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。
賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。
アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。
小説家になろうにも投稿しています。
なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる