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第3章 迷宮道中膝栗毛!!
第139話 賢者と黒狐の問答~ロアに対しての見解~
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「何?流派梁山泊、槍覇のヘイフゥじゃと?」
サヨさんはヘイフゥさんの名乗りに驚きを隠せていなかった。勇者様と同じ流派の人が現れたのだから当然かもしれない。
「へぇー?実在したんだ、あの流派。」
「アンタ、疑っとったんかいな。」
「聞いたことなかったし、第一、うさんくさかっただもん。」
「うさんくさい……。その流派の人間の前でそんなことよう言うわ。あんた、正直すぎや。」
勇者様、疑われてたんだ……。ジュリアさんは色々ハッキリと思っていることを口に出す人だとは思っていたけど、ここまで正直に言うなんて。
「槍覇程の立場の者が何用で彼奴を追っておるのじゃ?破門された彼奴を見守る必要があるのか?実は彼奴を始末するつもりで追っておるのではないか。」
そんなはずない!私は彼から理由を聞いていたので、そのことをサヨさんに告げようとした。
「それは……、」
「いや、いい。私自身が説明しよう。」
言おうとする私を制して、ヘイフゥさんはサヨさんと向き合った。
「では、弁明を聞こうか?」
「まずは立場上の話をさせてもらおう。そういう意味では、貴殿の推測は正しい。破門し追放された人間は密かに刺客によって抹殺される定めにある。門外不出、半端者を生かしてはおけない。それが我が流派の掟だ。」
勇者様は命を狙われている!破門されたら殺されるなんて。あまりにも情け容赦ない掟だと思った。
「だが、現に彼奴はまだ生きておる。何故じゃ?」
「私は彼に対しての刺客に命ぜられた。私が彼の師と友人であることを知っていたからこそ、流派への忠義と、友人の弟子への情のどちらを取るか、試すつもりなのだ。私と彼の師は宗家と方針の違いから対立する立場にあった。今の状況を利用して私をも処分するつもりなのだろう。」
「ほう。ではそなたも流派に狙われる立場になってしまったわけじゃな。何故、そうまでして彼奴を庇う?」
ヘイフゥさんも流派から命を狙われているなんて。でも、そうまでして、勇者様を庇ったのは何か特別な理由があったんだと思いたい。
「彼が腑抜けなままなら殺すつもりだった。彼の様子を窺う中で、何の縁かはわからぬが勇者となってしまった。そして、彼は曲がりなりにも奥義を体現し、竜食いの男を倒した。以降の戦績は言わずもがなだ。」
「未だに、そなたの話の結末が見えてこぬな。まだ、妾の質問に答えておらぬぞ。」
「すまぬ。貴殿の問いに誠実に答えようとするあまり、前提が長くなってしまった。最大の理由は彼の師の言葉にある。」
「その言葉とは?」
「彼はいずれ流派奥義の神髄に到達するだろう、と予言めいた言葉を残していた。彼に出会った時に直感めいた物を彼から感じたのだそうだ。ただの一介の農夫にすぎなかった彼をだ。実は彼から志願してきたわけではないのだ。師によって、その才能を見いだされたのだ。」
勇者様は元々農夫だった?そんな話は知らなかった。勇者様は一度も話してくれたことがなかった。もっと、そういう話を聞いてみたい。
「なるほど、妾が見た彼奴の力の根源を師も、直感という形で認識しておったのじゃな。その目に狂いはなかったということじゃ。」
「私は以前は疑っていた。だが、実際に彼の戦いぶりを見て信じてみたくなった。それが貴殿の質問に対しての答えだ。」
「随分と回り道をしてくれたものじゃな。じゃが、妾は納得した。そなたのことは信頼するとしよう。」
よかった。二人が納得してくれて。これで勇者様の捜索を協力しあえそう。
「勇者の兄ィちゃんの話は決着ついたかもしれへんけど、ワシもアンタに聞きたいことがあるねん。」
続いてゲンコツさんが質問をヘイフゥさんに投げかけた。
「ここは封印されとって入れへんかったはずや。封印を壊したんは、アンタの仕業か?」
「その認識で間違いない。やはり、許可を取る必要があったか?」
「ホンマのこと言うたらせやねんけど、人命優先でここへ入ったのは事実でっしゃろ?……まあ、なんとかワシらより先に入ったのは誰もおらんかった、って報告しとくわ。」
「すまぬ、気を遣ってもらってかたじけない。」
ヘイフゥさんは胸の前で左手の拳を右手の平で押さえる仕草をした。東の国の礼儀作法なのかな?
「かまへん、かまへん!頭カチカチの迷宮管理委員会なんかの相手する必要なんかあらへん。」
立ち入り禁止区域の封印を勝手に破ってしまった場合は、犯罪になってしまうはず。そして、結構罪は重かったと思う。罰金ぐらいではすまないはず。ゲンコツさんはそのことを承知で見逃してくれたんだと思う。私たちのために……。
「さて、妾達も休息をとらねば。本当にやっかいなのはこの先にあるものじゃからな。備えだけはしっかりとな。」
やっぱり、サヨさん達もこの迷宮に隠された謎を解き明かすつもりなんだ。その先には……きっと勇者様がいることを信じて……。
サヨさんはヘイフゥさんの名乗りに驚きを隠せていなかった。勇者様と同じ流派の人が現れたのだから当然かもしれない。
「へぇー?実在したんだ、あの流派。」
「アンタ、疑っとったんかいな。」
「聞いたことなかったし、第一、うさんくさかっただもん。」
「うさんくさい……。その流派の人間の前でそんなことよう言うわ。あんた、正直すぎや。」
勇者様、疑われてたんだ……。ジュリアさんは色々ハッキリと思っていることを口に出す人だとは思っていたけど、ここまで正直に言うなんて。
「槍覇程の立場の者が何用で彼奴を追っておるのじゃ?破門された彼奴を見守る必要があるのか?実は彼奴を始末するつもりで追っておるのではないか。」
そんなはずない!私は彼から理由を聞いていたので、そのことをサヨさんに告げようとした。
「それは……、」
「いや、いい。私自身が説明しよう。」
言おうとする私を制して、ヘイフゥさんはサヨさんと向き合った。
「では、弁明を聞こうか?」
「まずは立場上の話をさせてもらおう。そういう意味では、貴殿の推測は正しい。破門し追放された人間は密かに刺客によって抹殺される定めにある。門外不出、半端者を生かしてはおけない。それが我が流派の掟だ。」
勇者様は命を狙われている!破門されたら殺されるなんて。あまりにも情け容赦ない掟だと思った。
「だが、現に彼奴はまだ生きておる。何故じゃ?」
「私は彼に対しての刺客に命ぜられた。私が彼の師と友人であることを知っていたからこそ、流派への忠義と、友人の弟子への情のどちらを取るか、試すつもりなのだ。私と彼の師は宗家と方針の違いから対立する立場にあった。今の状況を利用して私をも処分するつもりなのだろう。」
「ほう。ではそなたも流派に狙われる立場になってしまったわけじゃな。何故、そうまでして彼奴を庇う?」
ヘイフゥさんも流派から命を狙われているなんて。でも、そうまでして、勇者様を庇ったのは何か特別な理由があったんだと思いたい。
「彼が腑抜けなままなら殺すつもりだった。彼の様子を窺う中で、何の縁かはわからぬが勇者となってしまった。そして、彼は曲がりなりにも奥義を体現し、竜食いの男を倒した。以降の戦績は言わずもがなだ。」
「未だに、そなたの話の結末が見えてこぬな。まだ、妾の質問に答えておらぬぞ。」
「すまぬ。貴殿の問いに誠実に答えようとするあまり、前提が長くなってしまった。最大の理由は彼の師の言葉にある。」
「その言葉とは?」
「彼はいずれ流派奥義の神髄に到達するだろう、と予言めいた言葉を残していた。彼に出会った時に直感めいた物を彼から感じたのだそうだ。ただの一介の農夫にすぎなかった彼をだ。実は彼から志願してきたわけではないのだ。師によって、その才能を見いだされたのだ。」
勇者様は元々農夫だった?そんな話は知らなかった。勇者様は一度も話してくれたことがなかった。もっと、そういう話を聞いてみたい。
「なるほど、妾が見た彼奴の力の根源を師も、直感という形で認識しておったのじゃな。その目に狂いはなかったということじゃ。」
「私は以前は疑っていた。だが、実際に彼の戦いぶりを見て信じてみたくなった。それが貴殿の質問に対しての答えだ。」
「随分と回り道をしてくれたものじゃな。じゃが、妾は納得した。そなたのことは信頼するとしよう。」
よかった。二人が納得してくれて。これで勇者様の捜索を協力しあえそう。
「勇者の兄ィちゃんの話は決着ついたかもしれへんけど、ワシもアンタに聞きたいことがあるねん。」
続いてゲンコツさんが質問をヘイフゥさんに投げかけた。
「ここは封印されとって入れへんかったはずや。封印を壊したんは、アンタの仕業か?」
「その認識で間違いない。やはり、許可を取る必要があったか?」
「ホンマのこと言うたらせやねんけど、人命優先でここへ入ったのは事実でっしゃろ?……まあ、なんとかワシらより先に入ったのは誰もおらんかった、って報告しとくわ。」
「すまぬ、気を遣ってもらってかたじけない。」
ヘイフゥさんは胸の前で左手の拳を右手の平で押さえる仕草をした。東の国の礼儀作法なのかな?
「かまへん、かまへん!頭カチカチの迷宮管理委員会なんかの相手する必要なんかあらへん。」
立ち入り禁止区域の封印を勝手に破ってしまった場合は、犯罪になってしまうはず。そして、結構罪は重かったと思う。罰金ぐらいではすまないはず。ゲンコツさんはそのことを承知で見逃してくれたんだと思う。私たちのために……。
「さて、妾達も休息をとらねば。本当にやっかいなのはこの先にあるものじゃからな。備えだけはしっかりとな。」
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