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第3章 迷宮道中膝栗毛!!

第142話 迷宮の謎についての考察

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「ええっ!あの人達は転送罠を使って迷宮を出入りしていたんですか?」


 私やメイちゃんをテレポーターの罠で転送した人たちの事を聞いていた。転送制御のマジックアイテムを持っていたなんて。作るのには相当な技術が必要なはず。


「そういうことじゃ。裏で彼奴らに協力している者がおるのじゃ。あの、ドラゴンズ・ヘブンが関与しておる。」


 迷宮にまで手を伸ばしていた?この迷宮にはやっぱり何か秘密があるのは間違いなさそう。


「おそらく、そなたの手にしておる、それも狙っておったようじゃ。まさか、そなたが先に手にしてしまうとはな。じゃが、問題はそれ以外にある。」


 ヘイフゥさんの言っていた、迷宮の奥底にある謎と関係あるのかな。


「古代の遺産が迷宮に隠されている、いや、この迷宮自体がその入り口になっている可能性がある。」


 それはこの迷宮の存在が囮とかダミーのような役割をしている?まさか魔王ですら、そのことに利用されていた?


「ここへ来る前にいくつか古い文献を漁ってみた。それらによると、魔王が現れる前は修練の迷宮と呼ばれていたそうじゃ。」

「修練の迷宮?」


 その場にいた何人かが、同じ声を上げた。他の人には話していなかったのかな。


「古くから、この迷宮は冒険者の腕試しに使われておった。今よりも多種多様な魔物に加え、様々なトラップ、珍しい財宝等、おのれの腕を試すにはもってこいの場所じゃった。」

「ワシも聞いたことあるわ。ノウザン・ウェルがでっかくなったんはこのダンジョンのおかげやったらしいな。他のダンジョンはオマケ程度の価値やったいうこっちゃ。」


 この迷宮の様子が今と昔では違っていたなんて。魔王が現れる前は迷宮のイメージも悪くなかったんだ。


「肝心の本題はここからじゃ。熟練の冒険者の間で、ある噂が流れ始めた。表向きは地下10Fまでじゃが、実は地下11Fまであるとな。しかも、話はそれだけでは終わらぬ。その先に修練の間なる迷宮があるそうじゃ。」


 地下11Fが隠されている?もしかしたら、勇者様達はそこにいるのかな。でも、宝箱の転送罠との関係性がわからないよ。


「それについてはこの後、探せば良い。宝箱の転送罠についてもわかったことがある。あれが作られたのはおそらく、80~100年程前じゃ。そして、仕掛けられた転送魔法は……おそらく古代魔法じゃ。」

「作られたのが100年前程度なのに、古代魔法が使われているんでしょうか?」

「作った者が古代魔法の使い手じゃ。おそらく迷宮の主で、今もまだ健在なのじゃろう。転送魔法には相手の強さに応じて転送先を変更する細工がしてあった。そなたらとロア達とで転送先が異なるのはそういう仕組みじゃ。これは決して偶然の産物ではない。」

「転送罠って普通は転送先の指定なんてしてへんのやけどな。罠ごときに手間かけてられへんっていう理由もあるやろうけど、できるんやったら、全部石の中にしとくやろうしな。」

「熟練の魔術師でも時間と魔力を消費するのじゃ。こんな物を作れるのは膨大な魔力を持て余した、偏屈者じゃろう。」

「いったい、何者なんでしょうか?」

「妾が生まれる前の時代の者なのは確実じゃ。古代魔法は妾の生まれた時代ですら、古代の遺物じゃったからのう。当然、迷宮の主の正体には見当がついておらぬ。」

「姐さんがそんなん言うんやったら、神話とかおとぎ話に出てくるようなヤツがおるんかもしれんなあ。候補やったら、魔法王とか金剛石の王、狂気の王、あげだしたらキリがあらへん。」


 途方もない話だった。そんなとんでもない人がいるなんて思いもしなかった。そんな話を聞いていたら、勇者様が無事かどうか不安になってきた。どうか、本当に無事でいてほしい……。
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