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第3章 迷宮道中膝栗毛!!

第143話 魔法返し

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「フハハ!馬鹿め!自分自身の魔法で滅びるがいい!」


 跳ね返された風の刃がファルちゃんの方へ飛んでいく。かわせるのか?かわせないと死んでしまうぞ。


「……クソ、俺としたことが!」


 その言葉を最後にファルちゃんは真っ二つになった。……はずだった!


「フハ……!?何、馬鹿な!」


 さっきまでファルちゃんがいたところには、縦に真っ二つになったローブだけが残されていた。あれ?ファルちゃん、溶けたか?


「こっちだよ、バーカ!」


 突然、ファルちゃんが現れ、蹴りで忍者の足を払った。バランスを崩した忍者が堀に落下した。


(バシャーーン!!)

「ウツセミの術とか言ったか?見よう見マネだがうまくいったぜ。」


 マネしたのか、アレを!魔法返しにモノマネで対抗したワケか。一度見ただけでマネするとはな。


「……プハァ!おのれ!よくもやってくれたな!」

「フリージング・ブラスト!」

「あっ……!?」


 ホントに相手が「あっ」という間に堀の水ごと凍り漬けになってしまった。まだ、下半身が水に浸かっているから凍ったら動けなくなるはず。しかも、今はフンドシ一丁でウツヌケのなんたらも使えないだろう。今度こそ終わったな。


「これで終わりだ!」


 さっきまでよりもだいぶ小さな、真空の刃を飛ばして忍者の首をはねた。これで起き上がってきたら、正真正銘の化け物だ。


「だいぶ苦戦したな?」

「うるせえ!今までのが雑魚すぎたんだよ。」


 さすがに魔力を使い果たしたのか、ファルちゃんは肩で息をしていた。最後の一撃が最小限だったのも、そのせいだろう。


「魔術師殿の言うことはもっともだ。同じ迷宮の主でも差がありすぎる。あれほどの実力であれば拙者が相手をしたかったものだ。」

「やっかいな技ばっか持ってたのは確かだな。初見殺し上等な感じだったし。」

「お前らも人のこと言えるのかよ。とにかく、今は少し休ませてもらうぜ。」


 ファルちゃんは壁に寄りかかるようにして、座り込んだ。迷宮に入ってから、一回も休んでいなかったし、俺も休むか。


「まだまだ修練の間は続く。今は羽休めするが良かろう。」


 まだ続くんだろうか?いつまで続くんだよ?……って、待てよ?なんで続くっていうのがわかってるんだ?コイツ……まさか?


「次の迷宮では拙者が主と戦おう。その間に魔術師殿は休んでおれば良い。いざというときは、勇者殿もおる。」

「お、おう。」


 ますます、怪しさが加速してきたな、お侍さんよ。悪人というわけじゃないだろうけど、何か企んでいそうだな。
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