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第3章 迷宮道中膝栗毛!!

第144話 皆の者、覚悟は良いな?

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「おお、コレや!ここに隠し通路がありおるわ!」


 隠し通路は巧妙に隠されていた。玉座の間には何カ所か怪しい仕掛けがあった。どれもこれも単独で作動させてみても、変化が起きなかった。石像の向き等を一定の法則性を以て作動させたら仕掛けが作動した。


「こんなんヒントも無しに探し出せるわけありまへんで。狐の兄さんがおらへんかったら、わからへんかったで。」

「まさか、西洋の迷宮に我らが四神を使った仕掛けがあるとは思わなかった。お役に立てて光栄だ。」


 東洋の伝説の聖獣を象った石像が設置されていた。ヘイフゥさんがその正体に気付いて、それぞれの守護している方角に向きを変えてみたら、仕掛けが解けた。


「少し捻った題材を持ってくるとは、やはり迷宮の主はとんだ偏屈者に違いなさそうじゃな。同じく東洋の侍、忍者であればわかったのかもしれぬが。」


 都市伝説の話題でも侍と忍者のことは話題にも上がっていたし、隠しダンジョンの噂はそういう人たちから広がっていったのかも。


「では、行くぞ。まだ、これから隠しダンジョンの入り口を探さねばならんのだからな。」



 私たち一行は地下11Fに降り立った。当然、罠と魔物達が数多く待ち構えていた。でも、魔物達は今までとは打って変わって、ゴーレム等の魔法生物ばかりだった。


「やはり、ここは隔絶された空間のようじゃのう。魔物が全て非生物じゃ。上の階の魔物は疎か、魔王ですらこの場所には気付いておらんかったのじゃろうな。」


 本当に長い間、誰にも知られることなく、ひっそりと存在していたんだ。選ばれた人だけがこの場所に入ることが出来る。でも、その先に待っているのは何なんだろう?


「む?あれはまさか?」


 サヨさんが何かの設備らしい物を見つけた。石造りの門の様な物があって、左右には獰猛そうな一対の獣の石像が置かれていた。門とはいっても扉があるわけでもなく、門の先には壁があるだけだった。


「おそらくは転送門じゃろうな。」

「噂の信憑性が増してきたっちゅうことやな。」

「ちょっと待て。一応、転送魔法の解析だけはしておかねばならん。」


 サヨさんは魔法の解析を始めた。この解析魔法自体もかなり高度なものなので、自分には真似できるものじゃない。彼女くらい高位の魔術師じゃないと使いこなせない魔法だ。


「解析は出来た。宝箱の転送罠と作り手は同じのようじゃ。これ自体には転送する相手の仕分け機能は付けていないようじゃな。」

「つまりは確実に全員狙った場所に行ける、いうことやな?」

「そういうことじゃ。」

 宝箱の転送罠を使うことも最初は検討していたけど、私たちの時の例があるので、迷宮側の転送門を探してからにしようという話になった。そして、その試みは正しかったみたい。


「これから転送門に入ることになるが、皆の者、覚悟は良いな?この先は戻ってこれるかどうか、妾にも保証は出来ん。断るのであれば今のうちじゃぞ?」

「それでも私は行きます。勇者様を助けないといけないですから。」

「私もファルさんのためなら……。」

「無論、同行する。彼らを助けに来たのだからな。」

「兄ィちゃんを助けたらなあかんしな。行くで。隠しダンジョンに興味がないかちゅうたら、そうでもないけどな。」

「ホントは妙な所には行くのは反対だけど、かわいい後輩はほっとけないし。あのバカ二人もだけど。」


 みんなそれぞれ表現は違うけど、勇者様達を助けたいのは同じだった。サヨさんはみんなを見て、笑みがこぼれている。


「行くぞ、皆の者!」


 サヨさんは転送門を作動させ、真っ先に入っていった。私たちもその後に続いた。
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