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第3章 迷宮道中膝栗毛!!

第162話 勝てばよかろうなのだァァァァッ!!

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「ダイヤモンド・ドレイクだとぉ!」


 なりふり構わないとか言い出したのはこういうことだったのか。竜帝をバカにしてたくせに、その姿になるとは。


「不本意だが、勝たなくては意味がない!勝てばよかろうなのだ!」

「姿を借りただけで強くなれると思うな!」


 サヨちゃんが再び竜の姿になった。大きさは敵とほぼ同じだった。ホントにただ姿をコピーしただけじゃないか。


「忘れたか?この体が魔光結晶で出来ているということを!」


 ダイヤ竜とサヨちゃんが取っ組み合いになった。単純な力比べを始めた。竜同士の戦いなんて初めて見た。スゴいド迫力だ。


「力の差を思い知らせてやる!」


 最初は互角かと思われたが、徐々にサヨちゃんの体勢が苦しげになってきた。持ちこたえるだけで精一杯のようだ。


「霽月八刃!」


 そんな様子を見てたまらなくなった俺は、ダイヤ竜に攻撃を加えた。ダイヤ野郎の倍以上もある腕を切り落とす。


「ぐうう!やってくれる!」


 腕を切り落としたぐらいでは大したダメージにもなっていないようだった。今まで人と同じぐらいのサイズにしか霽月八刃を使ったことがなかったので見えてこなかった弱点だ。いくら最強とはいっても、あくまで人に対しては、ということだったのだろうか?化け物と戦うことは想定していなかったのかもしれない。


「ロアよ、今こそ“虚心坦懐”の精神で挑むのだ!更なる高みを目指せ!我が流派の奥義に不可能はない!」


 狐面はとんでもないことを言ってきた。確かに今の俺は行き詰まっている。奥義の限界を感じていた。でも……なんか心を読まれてないか?なんでわかったんだ?


「不可能はないだと?私を差し置いてそんな戯言を抜かすのかあ!」


 八つ当たりをするかのように、サヨちゃんの体を吹き飛ばした。腕を片方切り落としたのに信じられない力だった。パワーも圧倒的なようだ。


「俺が出来なくても、アンタは出来るんじゃないのか?だって……槍覇なんだろ?」


 俺以上の使い手のはずなのに、何故、俺をというのはある。完全な奥義を使えるはずでは?


「我々五覇であっても、せいぜい、表面的な技の集合体としての奥義を使えるだけなのだ。勝利至上主義に偏向した流派内では、三皇の精神は忘れ去られたに等しい。私でも光風霽月までがせいぜいだ。」


 俺に出来るのか?光風霽月のときは、エルちゃんを救いたいという一心で、倒すべき物を見定める力を得ることが出来た。今度のは到底、検討がつかない。どこを目指せばいいんだ?

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