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第4章 勇者の剣と剣の巫女
第236話 今こそ止めを!
しおりを挟む「待ってろよ二人とも!俺が今から加勢するからな!」
剣を受け取り全力で走った。手にした感触だけでも、凄い物だというのがわかる。なにか、まるで自分の体の一部かとも思えるくらい、重さも感じなかったし、持っている感じもしない。それくらい自然な感じがした。
「ぐおおおっ!!勇者ぁ!テメエだけは絶対にブッ殺してやる!」
俺の決死の攻撃で体中にダメージを与えたはずが、もう既に大半は治っていた。恐るべき再生能力だ。でも、ムーザの一撃と俺がコアを斬ったときの傷は残っている。体の真ん中に丁度バツの字を作るような形になっている。
「クソおっ!テメエらはどけぇ!邪魔者は引っ込んでろ!」
魔王はありったけの力で暴れ、ジェイと狐面を撥ね飛ばした。まだそんな力が残っていたとは。
「殺す!殺す!殺すぅ!!」
魔王は嵐のように攻撃を仕掛けてきた。その攻撃一つ一つが、一撃で俺を殺せそうなほどの威力がある。怒濤の殺意だ。
「虎穴獲虎衝!!」
俺はあえて魔王の元に飛び込み、全体重を込めた全力の突きを喰らわせた。
(ドウッ!!)
「ゴヘァッ!?」
攻撃してきた腕ごと体を貫いた。偶然とはいえ腕を封じる結果となった。
「まだ終わりじゃないぜ!だりゃあっ……破竹撃だぁ!!!」
剣を突き刺したまま、破竹撃で魔王の体を下方向へ切り裂いた。
「ぐわぁああっ!!」
魔王は絶叫を上げる。その隙に俺は間合いを取り、技の準備体勢を取った。止めの技、八刃だ!
「ぐおぉ、俺様がここまでやられるとは!でも、まだ終わらないぜ。魔王には奥の手があるんだぜ?」
「奥の手だと?」
「へへっ!コレを使えば俺もタダでは済まねえ。100年くらいは復活出来ないかもしれねえ。でも、負けるよりはマシだ。負けるよりは!」
そう言って無事な方の腕を自分の胸に突き刺した。
「早く止めを刺すんだ、ロア!」
狐面が叫ぶ。そうだ、奥の手とやらを使われる前に止めをさしてしまえば問題ないんだ!
「もう遅いぜ!俺がこのまま自分のコアを握りつぶしちまえば、この辺り一帯全部吹き飛ぶぜ!そうなっちまったら、今後ずっとペンペン草すら生えねえ不毛の大地になっちまうぞ!」
「自爆ってことか!」
「そういうこった!テメエら丸ごと吹っ飛ばしてやる!」
マズい。判断を誤った。両腕ともに切り落としておくべきだったんだ!止めを刺すのをはやまったのは間違いだった!
「これでおわ……?」
突然魔王の頭上に人影が現れた。ローブを着た長い髪の人影……そう、エルちゃんだ!
「戦技一0八計が一つ!」
彼女の口から思いがけない言葉が出てきた!まさか!
「鳳翼旋!!」
彼女は落下しつつ大鎌を振り下ろした。魔王の胸の部分、腕を突き刺していた部分を切り裂いた。この技は戟術の技、剣術でいうところの破竹撃に当たる技だ!
「勇者様!今です!再生する前にあの技を!」
「わかった!ありがとう!」
技のセットアップは完了している後は技を決めるだけだ!
「虚心坦懐……絶空八刃!!!」
斬った。驚くほどあっさりと。これが新しい剣の力か!
「へっ!なんてことはないぜ。勇者の剣ってのは大したことねえな。さっきの刀の方が痛かったぜ!」
魔王は平然としている。俺達の猛攻でボロボロになった体で。
「まあいいや!テメエらの負けは確定だ。丸ごとみんな吹っ飛んじまいな!」
コアを握りつぶすつもりらしい。でもそれは出来なかった。腕が崩れ落ちたのだ。
「へ?何でだよ。腕が取れちまった!これぐらいすぐ再生……へあっ!?」
今度は膝から下が崩れ去った。そのまま膝だけで立つ形になる。
「体が崩れる!バカな!俺はまだ死なねえ!そうだ!腕がなけりゃ、口でかみ砕いてやる!」
普通の生き物ならあり得ないような形で首を曲げ自らの胸部に噛み付いた。それもむなしく、今度は体が崩れた。とうとう頭だけになって地面に転がった。
「あれぇ?おっかしいなあ?コアがないぃ!おかしいぞおぉ!」
想定できない事態に魔王は混乱しておかしな事を言い始めた。なんと憐れな姿なのか。
「コアは残念ながら、もうない。お前はもう死んでいるんだ。」
「ば、ば、バカ言えぇ!俺が死ぬもんか。俺が死……、」
魔王の頭は崩れ去り完全に消滅した。終わった。俺達は勝ったんだ。
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