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第5章 完成!究極の超次元殺法!!
第327話 見えてきた違和感
しおりを挟む「……ぜえ……ぜえ……。」
その後も重く苦しい戦いが続いた。当然俺は一本も取れず、とうとう五十本目を取られてしまった。体の感覚はほとんど無くなってきていた。紛れもなく、危機的な状況だったが、俺自身は驚くほど落ち着いていた。むしろ、精神的には研ぎ澄まされてきている実感がある。
「これで…半分だ。まだまだ、貴様にとっての地獄は続くのだ。手は緩めぬ。」
何度も負け続ける内にいくつか気付いたことがある。宗家の技に関してだ。この試合では間違いなく、本気で俺を攻め立てている。だが、技のキレが落ちている様な気がする。
「フン!」
宗家が突きを繰り出してきた。これもそうだ。速くはあるが、芯をとらえていないというか……。エドやジェイ、レンファさんと対峙していたときのような、鬼気迫る凄みが薄れているように思える。疲労しているのか?
「攻撃はせんのか? 戦う意志がないのなら、さっさと負けを認めるがよい!」
俺の方はロクに攻撃していない。下手に攻撃するより、宗家の動きを分析する方がいいと思ったからだ。頭は普段より冴えている。自分でも信じられないくらいに。だからこそ色々見えてきたものがある。宗家の動きの違和感……わざと…いや、無意識的に動きを制限している?
「その割には、ちょこまかと避けるようになった。勝ち目など無いというのに。」
もう少しで何かに気付けそうだ。宗家は俺が避けるようになったと思っているようだが、実際には避けられる様になってきただけだ。動きに鈍さが感じられる様になったし、俺の方も目がだんだん慣れてきているというのもある。その違和感のおかげで避けられる。
「杜門縺扞!」
連撃で執拗に俺の体を滅多打ちにする。さすがに俺は耐えきれず、地面に倒れた。
「これで五十一本目だ。」
意識が飛ぶことは少なくなってきたが、ダウンして起き上がるまでが長くなってきている。そのため便宜上、ダウンした場合でも“負け”となってしまった。大会運営側もやむえず途中からルールを変更した。俺を死なせないための措置かもしれない。
「……く……ぐ、うっ……。」
ゆっくりと時間をかけて立ち上がる。体が中々言うことを聞いてくれないからだ。痛みがとかじゃなくて、体が自然にそういう行動を取らせている。……自然に鈍くなる? 何でだろう? そんな些細な部分が引っかかった。
「では、続けるぞ。この後も死に続けるが良い。」
宗家は左手を前に突き出し、攻撃開始の意志を見せつけた。……その左手、その小指がおかしい事に気が付いた。ごくわずかだが痙攣していた。……普通に戦っていたら、気付かないような事に、今気付いてしまった。
(……あれは……ああなっているのは……、)
その原因を作った人物の事を思い浮かべる。俺はそのために戦っている。俺が勝つための糸口を残していってくれたんだ。その思い、命がけの行為を無駄にしないためにも、この戦いは勝たないといけない。
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