【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

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第5章 完成!究極の超次元殺法!!

第328話 例え、這いつくばってでも

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「……こ、ここは……?」


 目が覚めた。随分と長い間悪い夢を見ていたような気がする。彼が殺される所を、自分は動けずに見ているだけ。その繰り返しだった。……誰に? そういえば、そうだった。誰に殺されているのか、曖昧にしか憶えていない。


「……すう……すう……、」


 ベッドの傍らを見るとメイちゃんが寝息を立てていた。椅子に座ったまま……多分、私の体の治療をしてくれていたんだと思う。私の体は闇の力が強くなってきているから、治療の魔法が効きにくい。だから、付きっ切りで看病して疲れてしまったんだろう。自分が無茶をしたせいで、彼女にも迷惑がかかってしまった。


「ううっ……!?」


 体を動かしてみた。その結果、激痛が走る。やっぱり動かせない。動かそうとしても痛みがあるだけで、力が入らなかった。やっぱり、体中の筋肉がズタズタになってしまったんだろう。まともに動かせるのは、首回りだけ。視線を動かせるくらいの事しか出来ない。


「あれから何日たったの?」


 答えてくれる人はこの場にいない。メイちゃんがいるけど、それだけのために起こすわけにはいかない。何か……手掛かりは?


(…… !!!!!! ……)


 耳を澄ますと、何か大勢の人の声が聞こえる。歓声? というと違和感があった。何かそれ以外の声……何かに恐れる、何かに戸惑うかのような感じにも聞こえる。外で異常な出来事が起きているのかもしれない。


「……彼が……戦っている!?」


 そうだ。あり得るとしたら、そうに違いなかった。今行われているのは決勝戦。多分そう。だとしたら……だとしたら……?


「……行かなきゃ!」


 どこへ? どうやって? 考えている暇はなかった。体は動かせないけれど、自分に出来ることは何を使ってでも行かなきゃいけない!


「……リザレクション!」


 この前、サヨさんに教えてもらったことがある。闇の力で自己再生を行うことが出来ると。まだ試したことはないけれど、魔力が万全な今、試してみる価値はある。それが再生能力リザレクション。わずかでも、少しだけでも体を動かすことが出来れば、彼の元へ行くことが出来る。


「……でも、急がないと……。」


 彼が待っている。彼は戦っている。早く行かないと……負けてしまうかもしれない。私は恐怖を感じた。体がまともに動かせなくても、速く駆けつけないといけない。


「……は、早く……。」


 わずかに動かせるようになった。寝返りをうつくらいのことは出来そう。このままベッドから出ないと……、


「……痛ぁっ!?」


 ベッドから滑り落ち、体に激痛が走る。でもそんなことにはかまってられない。立って歩けなくても……這ってでも行くんだ!


「……く、ううっ、ああっ!?」


 どうにかして、ドアの所まで這っていき、よろよろとドアにもたれかかるようにして、ドアノブをどうにかして開けた。外側に開いた勢いで、また転倒してしまう。


「……い、痛い……。」


 痛みと自分の無力さのせいで涙が止まらなかった。それでも這って進む。視界がぼやけていても、気配で闘技場の方向がわかる。それだけで十分だった。
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