【第1部完結】勇者参上!!~東方一の武芸の名門から破門された俺は西方で勇者になって究極奥義無双する!~

Bonzaebon

文字の大きさ
375 / 401
第2部  第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】

第33話 なるほど!二番出汁っスね!!

しおりを挟む
「さあ行こう。君はいつまでもここにいてはいけない。」


 ラヴァンが幼いエルの手を引いて立ち去ろうとしている。引き留めるために俺は牢屋の鉄格子を剣で破壊して中に入った。


「君か。遅かったな。結局、エレオノーラを救えたのは私だったようだ。」

「もりえんと! もれっくす!」
(また囮に使いやがったな! やりかたが火事場泥棒じゃないか!)


 どれだけ必死に言おうとも、俺の言葉は封じられている。伝えたくても伝えられない。また、為す術もなくエルを連れ去られてしまうのか?


「抗議したいのだろうな? 言葉はわからずともそれぐらいはわかる。わかりやすい男だな、君は。これで彼女に根付くトラウマの記憶、計二つを私は手に入れることになった。これがどういう意味かわかるかな?」


「もるげなす?」
(どいうことだ?)

「彼女の記憶を書き換える条件は十分に整ったということだよ。」


 彼女の悲しい記憶はここで4カ所目といえる。エル本人が見当たらなかったり、コイツが現れなかったりはしたパターンもあるが、幼いエルに新たな記憶をすり込むには二つでも十分に大きいということか。


「ここにいる二人のエレオノーラは彼女の記憶の断片だ。ナドラ様が本人の記憶を抜き取り、断片を元に記憶の世界を作り上げたのだ。これは我が一門の最大の秘術だ。通常の人間ならば一つ作るだけでも精一杯のはず。おそらく彼女が魔王と組んだのは魔力の問題を解決するためだったのだろう。」


 魔王と組んでいるのはそのためなのか? そんなことをしてまで、エルの母親の遺産に手を出したいのだろうか? まさしく悪魔に魂を売るようなマネをしている。オバサンはエルの事を忌み子と罵っていたが、彼女も結局は悪魔の力を借りている。オバサンの方がよっぽどヒドいことをしている。エルは自分の意志で闇に染まったわけじゃないのに。


「気になるんじゃないか? ナドラ様が手に入れたい物が。エレオノーラの母上、エルフリーデ様の遺産。アレはおそらく魔術の奥義書だ。それが入った器はナドラ様が現在厳重に保管している。だが封印が解けずに難儀している。だからこそ手掛かりに繋がるエレオノーラの記憶を展開して探り当てようとしているのだ。」


 おばさんが欲しがっている物の正体はそれか。魔術の奥義書……そんなことのためにエルの記憶をいじくり回しているのか。許せんな! 他人に触られたくない記憶もあるだろうに! どこまで、あのオバサンは自分勝手なのだろうか。


「未だに手掛かりを見つけられていない可能性が高い。少しでも早く記憶の断片を本体に戻して、最悪の事態は避けなければならない。だからこそ、私は先に行かねばならない。」

「ももれんじゃ?」
(最悪ってなんだよ?)


 なんだよ急に……最悪の事態って! 早くしないとエルに危険が及ぶって事なのか?


「彼女がどうなるのか知りたいのだろう? それは……このままエレオノーラの記憶を引き出し続ければ、最悪、彼女は廃人になってしまうということだ。」

「もっげす!?」
(なんだって!?)


 ラヴァンは二人のエルを伴って、別の空間に行ってしまった。二人のエル……記憶の断片は何の疑いもなく、ラヴァンに従っていた。嬉しそうにも見えた。その一方で俺の方には目もくれていない。目を合わせてくれもしない。今の彼女とは大違いだ。そうなるのも仕方ないのかもしれない。どちらも俺に会う前の彼女だからな。


「もぎゃーっ、れっ! ひごもっこす!」
(何を考えているんだ、俺! しっかりしろ!)


 駄目だ、ダメだ! こんな弱気になっていたら、救える者も救えない。多分、彼女本人は今どこかで俺に助けを求めているはず。ここへやってきたときに聞こえた声は彼女の心の声だった可能性はある。


「師匠、後はどうするんスか?」


 エルとラヴァンに気を取られていたので、ゲイリーのことを忘れていた。ヤツをふと見ると……血まみれだった。返り血で真っ赤に染まっている。近くには元はオバサンだった肉片が転がっている。……いくら何でも、やりすぎだ。

「もんげろんぐ! もげきあんもげきろおすっく!」
(やりすぎだろ! 仮にも勇者の弟子を名乗るヤツがすることじゃないぞ!)

「そうスか? 悪なら徹底的に叩くのが正義の役目じゃないんスか?」


 ……? なんだ? さっきと同じで、妙に意味が通じている。それはさておき、悪なら徹底的に叩くとか、妙に危険な思想を持ってやがるな。普段から思想もクソもないような言動とか行動してる癖に。コイツは何から何まで不可解だ。


「もげけらき、もげきろん! もげっけろーく!」
(俺の弟子になったんなら、考えを改めろ! 敵に対しても思いやりを持てないヤツは勇者失格だ!)


 まさか、俺みたいな奴が他人に勇者の心得を説く立場になるとはな。でも弟子になるっていうんなら、これぐらいは心得ておいて欲しいものだ。


「なるほど! そういう考え方もあるっスね!勉強になりまスわー!」


 ホントにわかってんのかコイツ? またしても微妙に受け答えの反応がおかしい。世話の焼けるヤツだ。先が思いやられるわ、ホント……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

処理中です...