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第2部 第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】
第33話 なるほど!二番出汁っスね!!
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「さあ行こう。君はいつまでもここにいてはいけない。」
ラヴァンが幼いエルの手を引いて立ち去ろうとしている。引き留めるために俺は牢屋の鉄格子を剣で破壊して中に入った。
「君か。遅かったな。結局、エレオノーラを救えたのは私だったようだ。」
「もりえんと! もれっくす!」
(また囮に使いやがったな! やりかたが火事場泥棒じゃないか!)
どれだけ必死に言おうとも、俺の言葉は封じられている。伝えたくても伝えられない。また、為す術もなくエルを連れ去られてしまうのか?
「抗議したいのだろうな? 言葉はわからずともそれぐらいはわかる。わかりやすい男だな、君は。これで彼女に根付くトラウマの記憶、計二つを私は手に入れることになった。これがどういう意味かわかるかな?」
「もるげなす?」
(どいうことだ?)
「彼女の記憶を書き換える条件は十分に整ったということだよ。」
彼女の悲しい記憶はここで4カ所目といえる。エル本人が見当たらなかったり、コイツが現れなかったりはしたパターンもあるが、幼いエルに新たな記憶をすり込むには二つでも十分に大きいということか。
「ここにいる二人のエレオノーラは彼女の記憶の断片だ。ナドラ様が本人の記憶を抜き取り、断片を元に記憶の世界を作り上げたのだ。これは我が一門の最大の秘術だ。通常の人間ならば一つ作るだけでも精一杯のはず。おそらく彼女が魔王と組んだのは魔力の問題を解決するためだったのだろう。」
魔王と組んでいるのはそのためなのか? そんなことをしてまで、エルの母親の遺産に手を出したいのだろうか? まさしく悪魔に魂を売るようなマネをしている。オバサンはエルの事を忌み子と罵っていたが、彼女も結局は悪魔の力を借りている。オバサンの方がよっぽどヒドいことをしている。エルは自分の意志で闇に染まったわけじゃないのに。
「気になるんじゃないか? ナドラ様が手に入れたい物が。エレオノーラの母上、エルフリーデ様の遺産。アレはおそらく魔術の奥義書だ。それが入った器はナドラ様が現在厳重に保管している。だが封印が解けずに難儀している。だからこそ手掛かりに繋がるエレオノーラの記憶を展開して探り当てようとしているのだ。」
おばさんが欲しがっている物の正体はそれか。魔術の奥義書……そんなことのためにエルの記憶をいじくり回しているのか。許せんな! 他人に触られたくない記憶もあるだろうに! どこまで、あのオバサンは自分勝手なのだろうか。
「未だに手掛かりを見つけられていない可能性が高い。少しでも早く記憶の断片を本体に戻して、最悪の事態は避けなければならない。だからこそ、私は先に行かねばならない。」
「ももれんじゃ?」
(最悪ってなんだよ?)
なんだよ急に……最悪の事態って! 早くしないとエルに危険が及ぶって事なのか?
「彼女がどうなるのか知りたいのだろう? それは……このままエレオノーラの記憶を引き出し続ければ、最悪、彼女は廃人になってしまうということだ。」
「もっげす!?」
(なんだって!?)
ラヴァンは二人のエルを伴って、別の空間に行ってしまった。二人のエル……記憶の断片は何の疑いもなく、ラヴァンに従っていた。嬉しそうにも見えた。その一方で俺の方には目もくれていない。目を合わせてくれもしない。今の彼女とは大違いだ。そうなるのも仕方ないのかもしれない。どちらも俺に会う前の彼女だからな。
「もぎゃーっ、れっ! ひごもっこす!」
(何を考えているんだ、俺! しっかりしろ!)
駄目だ、ダメだ! こんな弱気になっていたら、救える者も救えない。多分、彼女本人は今どこかで俺に助けを求めているはず。ここへやってきたときに聞こえた声は彼女の心の声だった可能性はある。
「師匠、後はどうするんスか?」
エルとラヴァンに気を取られていたので、ゲイリーのことを忘れていた。ヤツをふと見ると……血まみれだった。返り血で真っ赤に染まっている。近くには元はオバサンだった肉片が転がっている。……いくら何でも、やりすぎだ。
「もんげろんぐ! もげきあんもげきろおすっく!」
(やりすぎだろ! 仮にも勇者の弟子を名乗るヤツがすることじゃないぞ!)
「そうスか? 悪なら徹底的に叩くのが正義の役目じゃないんスか?」
……? なんだ? さっきと同じで、妙に意味が通じている。それはさておき、悪なら徹底的に叩くとか、妙に危険な思想を持ってやがるな。普段から思想もクソもないような言動とか行動してる癖に。コイツは何から何まで不可解だ。
「もげけらき、もげきろん! もげっけろーく!」
(俺の弟子になったんなら、考えを改めろ! 敵に対しても思いやりを持てないヤツは勇者失格だ!)
まさか、俺みたいな奴が他人に勇者の心得を説く立場になるとはな。でも弟子になるっていうんなら、これぐらいは心得ておいて欲しいものだ。
「なるほど! そういう考え方もあるっスね!勉強になりまスわー!」
ホントにわかってんのかコイツ? またしても微妙に受け答えの反応がおかしい。世話の焼けるヤツだ。先が思いやられるわ、ホント……。
ラヴァンが幼いエルの手を引いて立ち去ろうとしている。引き留めるために俺は牢屋の鉄格子を剣で破壊して中に入った。
「君か。遅かったな。結局、エレオノーラを救えたのは私だったようだ。」
「もりえんと! もれっくす!」
(また囮に使いやがったな! やりかたが火事場泥棒じゃないか!)
どれだけ必死に言おうとも、俺の言葉は封じられている。伝えたくても伝えられない。また、為す術もなくエルを連れ去られてしまうのか?
「抗議したいのだろうな? 言葉はわからずともそれぐらいはわかる。わかりやすい男だな、君は。これで彼女に根付くトラウマの記憶、計二つを私は手に入れることになった。これがどういう意味かわかるかな?」
「もるげなす?」
(どいうことだ?)
「彼女の記憶を書き換える条件は十分に整ったということだよ。」
彼女の悲しい記憶はここで4カ所目といえる。エル本人が見当たらなかったり、コイツが現れなかったりはしたパターンもあるが、幼いエルに新たな記憶をすり込むには二つでも十分に大きいということか。
「ここにいる二人のエレオノーラは彼女の記憶の断片だ。ナドラ様が本人の記憶を抜き取り、断片を元に記憶の世界を作り上げたのだ。これは我が一門の最大の秘術だ。通常の人間ならば一つ作るだけでも精一杯のはず。おそらく彼女が魔王と組んだのは魔力の問題を解決するためだったのだろう。」
魔王と組んでいるのはそのためなのか? そんなことをしてまで、エルの母親の遺産に手を出したいのだろうか? まさしく悪魔に魂を売るようなマネをしている。オバサンはエルの事を忌み子と罵っていたが、彼女も結局は悪魔の力を借りている。オバサンの方がよっぽどヒドいことをしている。エルは自分の意志で闇に染まったわけじゃないのに。
「気になるんじゃないか? ナドラ様が手に入れたい物が。エレオノーラの母上、エルフリーデ様の遺産。アレはおそらく魔術の奥義書だ。それが入った器はナドラ様が現在厳重に保管している。だが封印が解けずに難儀している。だからこそ手掛かりに繋がるエレオノーラの記憶を展開して探り当てようとしているのだ。」
おばさんが欲しがっている物の正体はそれか。魔術の奥義書……そんなことのためにエルの記憶をいじくり回しているのか。許せんな! 他人に触られたくない記憶もあるだろうに! どこまで、あのオバサンは自分勝手なのだろうか。
「未だに手掛かりを見つけられていない可能性が高い。少しでも早く記憶の断片を本体に戻して、最悪の事態は避けなければならない。だからこそ、私は先に行かねばならない。」
「ももれんじゃ?」
(最悪ってなんだよ?)
なんだよ急に……最悪の事態って! 早くしないとエルに危険が及ぶって事なのか?
「彼女がどうなるのか知りたいのだろう? それは……このままエレオノーラの記憶を引き出し続ければ、最悪、彼女は廃人になってしまうということだ。」
「もっげす!?」
(なんだって!?)
ラヴァンは二人のエルを伴って、別の空間に行ってしまった。二人のエル……記憶の断片は何の疑いもなく、ラヴァンに従っていた。嬉しそうにも見えた。その一方で俺の方には目もくれていない。目を合わせてくれもしない。今の彼女とは大違いだ。そうなるのも仕方ないのかもしれない。どちらも俺に会う前の彼女だからな。
「もぎゃーっ、れっ! ひごもっこす!」
(何を考えているんだ、俺! しっかりしろ!)
駄目だ、ダメだ! こんな弱気になっていたら、救える者も救えない。多分、彼女本人は今どこかで俺に助けを求めているはず。ここへやってきたときに聞こえた声は彼女の心の声だった可能性はある。
「師匠、後はどうするんスか?」
エルとラヴァンに気を取られていたので、ゲイリーのことを忘れていた。ヤツをふと見ると……血まみれだった。返り血で真っ赤に染まっている。近くには元はオバサンだった肉片が転がっている。……いくら何でも、やりすぎだ。
「もんげろんぐ! もげきあんもげきろおすっく!」
(やりすぎだろ! 仮にも勇者の弟子を名乗るヤツがすることじゃないぞ!)
「そうスか? 悪なら徹底的に叩くのが正義の役目じゃないんスか?」
……? なんだ? さっきと同じで、妙に意味が通じている。それはさておき、悪なら徹底的に叩くとか、妙に危険な思想を持ってやがるな。普段から思想もクソもないような言動とか行動してる癖に。コイツは何から何まで不可解だ。
「もげけらき、もげきろん! もげっけろーく!」
(俺の弟子になったんなら、考えを改めろ! 敵に対しても思いやりを持てないヤツは勇者失格だ!)
まさか、俺みたいな奴が他人に勇者の心得を説く立場になるとはな。でも弟子になるっていうんなら、これぐらいは心得ておいて欲しいものだ。
「なるほど! そういう考え方もあるっスね!勉強になりまスわー!」
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