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第1章 はぐれ梁山泊極端派【私の思い出に決着を……。】
第37話 獣の魔王
しおりを挟む「あんたなんか殺してやる!」
獣の魔王と化したエルの攻撃は激しかった。見てくれは同じだが、動きが以前と違う。前は直線的でデタラメな攻撃だったので、対処しやすかったが、今は明らかに武術を感じさせる動きだ。
「もっ!?」
「この裏切り者! 絶対に許すもんかぁ!」
エルは怒りに身をまかせて攻撃してはいるが、時折フェイントを混ぜてきたり、避けにくい状況を作ってから、本命の攻撃を入れてくる。
「ホホホ。お気に召したかしら。あの時とは違うでしょう? この意味がわかれば、あなたの絶望が更に深いものになるでしょうね。」
明らかに武術を学び始めてからの記憶がフィードバックされている。これは過去の記憶を再現しただけではなさそうだ。蛇の魔王は多分そういう事を言っている。意地の悪いヤツだ。
「この娘には才能があるのよ。私のような上位の魔王には及ばないけれども、下位の魔王達を凌駕する実力があるわ。」
エルの攻撃が激しくなる一方で、蛇の余計な小言も留まることを知らない。聞き流せればいいのだが、微妙にこちらが気になるような情報を小出しにしてくるので質が悪い。俺の集中力を削ぐのが目的なのだろう。
「どうしたの? さっきから逃げてばっかり。自分から攻めないと死んじゃうよ?」
正直、避けるだけでも精一杯だ。ハッキリ言って強い。この前の虎の魔王より強いと感じる。俺自身も強くなったが、それはあくまで精神的な部分のみだ。筋力とかそういうのは何も強くなっていない。
「何も出来ないよね。あなたって本当は大して強くないから! 技のタネがわかっちゃえば、倒すのなんて簡単!」
さっきよりもさらに攻撃が激しくなる。長い爪が生えた両手を縦横無尽になぎ払い、オマケに蹴りも時折追加してくる。当然足にも爪が生えている。手足全てに刃物がついているようなものだ。複数の敵を同時に相手にしているような気分だ。
「ほらほら、もっと強くなるよ! ……アクセレイション!!」
アクセレイションだと! 筋肉は更に盛り上がり、更に動きが速くなった。ヤバイこれ以上、強くなられたらしのぎきれるかどうか……。
「死ね! 死んじゃえ! 何も出来ない無能はゴミ屑のようになって死ね!」
無能か。キツいこと言うな。辛いはずだし、攻撃も激しいが、以外と攻撃を避けることが出来ている。何故だろう? 自分でもよくわからない。
「何故? 何故、攻撃が当たらない! 私の方が強いのに! 速いのに!」
実際、最低限の動きでかわせている。相手がどう動いて、どういう強さで、どういう速さで攻撃してくるのか手に取るようにわかる。もしかしたら、最近、最上で最高の技の数々を無数に受けたからかもしれない。あの攻撃に比べれば、わかりやすい、読みやすい。その前提で動けているから、猛攻もなんとかしのげているのだろう。わかってきたところで、こちらもそろそろ手を出してみよう。
「もぎゃあああっ!」
「馬鹿なの! 自分から死にに来るなんて!」
自ら彼女の懐に飛び込む。当然迎え撃とうと攻撃が来る。それを掻い潜り、懐、彼女の眼前、手が届く範囲にまで潜り込んだ。ここで俺はあることを実行に移す。それは……、
(むにょっ!)
「な、なにを……!?」
胸を触った。化け物の姿にはなっているが、ここの柔らかさだけはあまり変化していないようだ。ここだけはまだ女の子らしさが残っていると感じたのでここを攻めてみた。傷を付けない方法で。要するにセクハラというヤツだ。俺自身はあまり経験がないが、タニシの事を思い出してやってみた。割とアイツ日常的にやってるし、ミヤコからお仕置きを喰らっているのをよく見ている。マネをしてみた。
「このどスケベ!」
急いで彼女の攻撃の勢力圏から離れる。これでいい。この行為も彼女のトラウマ担っていることをミヤコから聞いたから間違いない。十分彼女の心に揺さぶりをかけれたはずだ。あとはか本来の彼女が目を覚ますのを待つだけだ。
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