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第1章 勇者マストダイ!!【勇者なのに……〇〇されました。】
第30話 略してタ・ワ・シ!!
しおりを挟む『はいはい、そーれ、タワシが回るぅ~♪ クルクル♪』
俺の友達に何となく似ている茶髪の少年は茶色の掃除用ブラシの様なものを人差し指の先端に乗せてクルクル回している。タライ回しならぬタワシ回しだとでも言うんだろうか? なんだかよくわからないが大道芸を披露してくれるらしい。とはいえ皿とかを回すのが定番のはずだが、なんでお掃除用具を回そうと思ったのだろう? 司会の着物少女も竹のホウキを持ってたから、それ繋がり? どんな判断なんだろう?
「何やってんだよ! つまんねーぞ!!」
「ここが”洗濯場”だからってお掃除でもしにきたのかい!!」
「どうせ回すんなら、そっちの姉ちゃんを回して見せろよ!!」
『お客さん、滅相な事を言うもんでないでヤンス! ご不満ならもう一個増やすでヤンス!!』
「数の問題じゃねーよ!!」
さすがに芸が地味すぎたのか、方々から不満の声が飛び出てきた。タワシにちなんでお掃除だとか、着物少女を回せとか言い始めた。女の子を回すとか言っちゃダメだろ! 観客のクレームに対処するため、茶髪の兄ヤンは回しているタワシの数を一個増やして対応した。これで回す以外にお手玉の要素が加わった。でも、そんなんで非難の声が収まるはずもなかった。
『じゃー、もういいでヤンしゅ!! お客さんが満足できそうなモノを出してあげるでヤンス!!』
「裸の姉ちゃんでも持ってこい!!」
『無理難題を押し付けないで欲しいでヤンしゅう!! そんなモノより……あっ、と驚くイイモノを出して見せるでヤンス!!』
茶髪の兄ヤンはタワシ回しをやめて足早で舞台袖に捌けていった。イイモノを取りに行ったのだろう。イイモノとは言ったが、芸が止まってしまったので舞台に沈黙が訪れてしまった。着物少女は困り果ててあたふたとし始める始末。しかも中々戻ってこないときた。どうするつもりなのか?
「おせーぞ!!」
「何やってんだよ!!」
『皆さん、落ち着いてお待ちください!!』
「なにやってんだ、アイツら! 手間取りやがって……。」
一向に戻ってこないので観客がイラつき始めた。このまま放っておくと暴動でも起きそうな勢いだ。こうなると最初の時みたいに”お花畑”の魔法が再発しそうな雰囲気でもある。なんかこの事態をみてイツキまでもが不満を漏らし始めた。いや、でも、怒っていると言うよりは何か見てられないといった様子でもある。共感性羞恥というヤツかな?
『は~い、お待ち~!! タワシのご登場でヤンすよ!!』
「なんだそれは!」
「そんな板切れがどうしたってんだよ!」
「なんか俺らの怒りから身を守るための盾とか言い出すんじゃないだろうな?」
『ぎ、ギクーッ!? 守るためじゃないでヤンしゅ! でもお察しのように盾でヤンす! しかも、全身を覆い隠すほどの塔のようにそびえ立った大きな盾! その名もタワーシールド! 略してタ・ワ・シ!!』
『…………。』
うわっ! さぶい! あまりのさっぶいギャグに会場が完全に凍りついた……。タワシって言うから何を持ち出してくるのかと思いきや……体を覆い隠す程の盾、重装歩兵が持ってそうなタワーシールドを持ってきたのだ! 確かに略せばタワシ、かもしれないが、待たせた上にそんなしょうもないダジャレを披露されても困るんだが……。
「なにやってんだ、コラー!!」
「なにがタワシだコンチクショウ!!」
「観客の不評を買って、”楯突く”とか言い出すんじゃなかろうな?」
『ぎ、ぎ、ぎ、ギクーッ!? タテツクんじゃありませんよ! 大盾といえば、盾チク戦法が定番でヤンす! 盾に隠れてチクチクと……、』
「何が盾チクだ! 糞戦法多用するなら運営に通報するぞ!!」
『ああっ! 盾を回して見せますんで、どうかご勘弁を! たらい回しでフルボッコなんて考えずに、タワシ回しでご勘弁を!!』
観客の怒りは頂点に達してしまった! 寒いギャグに続いて意味不明な”盾チク”論法が始まり、さらに不評を買ってしまう事態に! すかさず盾を回し始めるがそんなしょうもない芸は通じず、ブーイングは収まる気配を見せなかった。しかも、たらい回しならぬタワシ回しって……やっぱり寒いギャグのオンパレードじゃないか……。
『ああ! もう! だったらとっておきのとっておきな芸を見せるでヤンす! 芸って言うより必殺技を!!』
「何が必殺だ!!」
「むしろ俺らがお前を必殺してやろうか!」
荒れる観客席を抑えるために、茶髪の兄ヤンは次の芸を見せると宣言した。タワシことタワーシールドをさっさとすみに追いやり、何か棒状のモノを取り出した。何か短めの棒と瓶型の何か……アレってまさか、俺のよく知るアイツの得物じゃないか……?
『見ませい! これが必殺……タワシヤン・タイフーン!!!』
(ギュルルルルルル!!!!!)
茶髪の兄ヤンは何を思ったのか、瓶型の分銅の付いたフレイル……を一心不乱に振り回し始めた。なんかコレ、見たことがあるような……? まるで嵐の如く勢いよく回転する必殺技……。それどころか、この後の展開も垣間見えたような……、
『ひっさーつ! かくさーつ! グルグル回転……、』
(ギュルル……ドフッ!!)
『こ、コキーン!!?? 自らの急所にくりてぃかる・ひっと!! タワシは倒れた。キュウ……、』
激しい回転の末、少し勢いが弱まった途端に足元がふらついた結果、フレイルの分銅があらぬところへ痛恨の一撃を与えてしまったようだ。ああ、やっぱり完全にアイツと同じだ。似たような宿命の元に生まれついた人間がいたのだな……。
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